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自民、想定外! 10・31総選挙「289全選挙区予測」【当落予測一覧表付き】

▶︎「甘利幹事長」起用で自民党への追い風が消えた ▶︎「岸田首相」の補佐官も「ポスターは進次郎」 ▶︎「山本太郎」乱入で野党大モメ 裏に「蓮舫」の野望

久保田 正志

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 支持率低迷に喘いだ菅首相から岸田新首相にトップの「顔」が代わった自民党。10月31日投開票の衆院選はどういう結末を迎えるのか。全289選挙区を網羅し、注目候補の内情に迫ったどこよりも詳しい「最強予測」。

仏滅選挙に挑む岸田首相

「いの一番に国民に岸田にお任せいただけるのかどうか、ご判断頂きたい」

 10月4日夜、就任会見に臨んだ岸田文雄首相。10月19日公示、31日投開票で衆院選を行うと表明した。当初は11月7日以降の投開票が有力だったが、

「“ご祝儀相場”に期待したのでしょう。首相は1人で解散日程を練っていました」(官邸関係者)

 しかし、朝日新聞の世論調査(10月4日、5日)では内閣支持率は45%に留まり、菅内閣の発足時(65%)を大きく下回った。厳しい数字は首相側近の選挙戦略にも影響している。

 村井英樹首相補佐官の地元事務所。壁中に幾枚もの2連ポスターが貼られていたが、村井氏の横に並ぶのは岸田氏ではない。小泉進次郎前環境相だった。

――2連ポスターの相手が岸田氏ではないが。

「小泉さんはこの国のリーダーになり得る人。色々おっしゃる方もいますが、私は堂々と貼っている。(岸田氏に)変えることはありません」(村井補佐官)

 さらに、岸田政権への逆風となったのが、“あの人物”の登用だ。小誌の取材に自民党幹部が嘆く。

「せっかく首相が代わったのに、賄賂疑惑を抱える甘利明氏の幹事長起用はマズかった。幹事長は党の“顔”。選挙戦には逆風だ」

甘利幹事長

単独過半数割れも

 そこで小誌は前回(8月5日発売号)に続き、政治広報システム研究所代表の久保田正志氏と全選挙区の情勢分析を実施。まずは党派別獲得議席を見ていこう。

 自民党は現有の276議席から32議席減の244議席。単独過半数(233議席)は辛うじて上回る結果となった。

「菅政権末期で選挙を行った場合、最大で70議席減もあり得ましたから、その時よりは上積みされています。ただ、過去3回の衆院選に圧勝した安倍晋三首相には遠く及ばない結果。岸田氏の地味さや、甘利氏の起用に対する反発がマイナスに働いていると言えるでしょう。しかも4年前の選挙では激戦区が70程度でしたが、今回は120と一気に増えました。復党問題への対応や閣僚の失言など一歩間違えば、激戦区はひっくり返る。そうなると、単独過半数割れも現実味を帯びてきます」(久保田氏)

 公明党は33議席。与党で計277議席だ。

「首相は任期中の憲法改正を目指していますが、改正発議に必要な3分の2、310議席には全く届かない。むしろ公明の声に押される政権運営を余儀なくされそうです」(同前)

連立を組む公明・山口代表

 一方、野党第1党の立憲民主党は現有から5議席増の115議席に留まった。

「共産党と70選挙区で候補者の一本化を目指していますが、調整は難航中。一本化は最大で20選挙区程度と見られ、伸び悩む結果になりました」(同前)

3人の“上げ底大臣”

 では、個別の予測を見ていこう。目を引くのは、前回予測ではC-だった候補者が入閣を果たし、評価がC+に上昇しているケースだ。そんな“上げ底大臣”の一人が、公明の斉藤鉄夫国交相(広島3区)である。

「公明の人事は2年に1回で、本来なら来年です。赤羽一嘉前国交相の留任が既定路線でしたが、広島3区は公選法違反で実刑判決を受けた河井克行元法相の選挙区。与党への風当りは厳しい。比例区から鞍替えした斉藤氏にゲタを履かせた形です」(政治部記者)

 岸田氏は総裁選出馬前の7月30日、小誌に、

「公明は比例票がどんどん減る中で、小選挙区で取れないか、と。それで、自民党が出せない河井の広島3区に。強引な面もあるけれど、そういう発想だろう」

 と語っていたが、

「お膝元の広島ですから、首相自ら陣頭指揮を取るでしょう」(久保田氏)

 若宮健嗣万博相(東京5区)、西銘恒三郎復興相(沖縄4区)も“上げ底大臣”。いずれも竹下派だ。

「総裁選で竹下派は岸田派以外では唯一、岸田氏支持でまとまった派閥です。ただ、首相は、竹下派の茂木敏充会長代行が求めた小渕優子元経産相の選対委員長起用は突っぱねた。その代わりに、閣僚人事では茂木氏の意向を全面的に受け入れました。選挙に弱い西銘氏と若宮氏を入閣させたのです」(政治部デスク)

 若宮氏に聞いた。

――茂木氏の後押しが。

「岸田外務大臣の時、私は防衛副大臣で一緒にお仕事をした関係がありますので」

――入閣は選挙に有利?

「いやあ、そればかりはね。投票箱の蓋が閉まるまでは全く分かりません」

――甘利幹事長は逆風?

「有権者の皆様がどうお考えか、までは分かりませんが、甘利先生ご自身は非常に能力の高い方です」

 一方の西銘氏は就任直後、新橋のガールズスナックに対し、約11万円を政治資金から支出していた問題が発覚。改めて収支報告書を確認すると、地元・沖縄でも19年12月に女性が接客するラウンジに2万8000円、18年3月にキャバクラに1万5400円など、“夜のお店”への支出を重ね、3年間で9万円を超えていた。西銘事務所は次のように回答する。

「代議士は参加していません。支援者に呼ばれ、秘書が自分達の分を支払いました。女性が接客につくとはいえ、皆さんがお考えのようなお店ではありません」

 3人の“上げ底大臣”たちとは対照的に、閣僚を退き、苦戦を強いられているのが、平井卓也前デジタル相(香川1区)。立憲候補にリードを許している。

 10月10日、高松市の演説会には公明党の市議や県議も姿を見せていた。「デジタルの日Tシャツ」を着用し、「私は色んなところから攻撃される!」と訴えた平井氏。本人を直撃した。

――地元で理解される?

「理解されるように、僕が何と戦っているかを世の中に知ってもらわなきゃいけないし。税金の無駄遣いを許さないというスタンスは変えないつもりです」

平井前デジタル相の印は?

自民党支部の名義で

 選挙に弱いこともあり、復党を望んできたのが、“銀座三兄弟”だ。緊急事態宣言中の今年1月、銀座のクラブを訪れ、離党した松本純氏(神奈川1区)、大塚高司氏(大阪8区)、田野瀬太道氏(奈良3区)の3人である。このうち田野瀬氏はA評価だが、松本氏と大塚氏はC-だった。復党できずに無所属の出馬となると、比例復活がない。小選挙区で負けたら落選なのだ。

銀座3兄弟

「中でも松本氏は麻生太郎副総裁の最側近です。岸田首相との間で、財務相続投に意欲を見せていた麻生氏が副総裁ポストを受け入れる代わりに、松本氏を復党させるという“密約”が交わされたと取り沙汰されました」(前出・デスク)

 かたや大塚氏には“ある疑惑”が浮上していた。

〈自由民主党大阪府第8選挙区支部/衆議院議員 大塚高司〉

 これは、大塚氏が支援企業に送った「寄附納入依頼書」だ。自民党支部の名義で、〈私の政治活動ならびに自由民主党のさらなる党勢拡大展開を図るため、下記の通りご支援賜りますよう〉と寄付を求めている。

“偽装離党”文書

 支援企業の関係者が語る。

「今年7月に『依頼書』が届き、会社として入金したそうです。偽装離党では、と騒ぎになりました」

 大阪府選管によれば、第8選挙区支部は6月9日に解散していた。政治資金に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が指摘する。

「政治資金規正法は政党及び政治資金団体以外の者が企業献金を受けることだけでなく、募集することも禁じています。大塚氏は解散した政党支部名義で企業献金を募り、受け取っていた。政治資金規正法違反(違法寄附)の疑いがあります」

 大塚氏は10月9日、書面で以下のように回答した。

「2社において、個人献金での依頼に切り替えるべきところ、昨年と同様の体裁で依頼文を作成したミスが発覚しました。直ちに、返却手続きを指示し、担当者を厳重注意致しました。偽装離党ではございません」

 府連関係者が明かす。

「大塚氏は10日以降、選対の会合や支援者への挨拶回りを中止しましたが、秘書は『文春だよ』と理由を説明していた。特に、自らもカネの問題を抱える甘利氏が、大塚氏の疑惑に厳しい態度を取っていました」

 結局、3人の復党は実現せず、大塚氏は出馬見送りを表明したのだった。

「7人は吹っ飛ぶ」

北の大地で吼えているのは、維新の会の鈴木宗男参院議員。長女の鈴木貴子氏(北海道7区)が今回、外務副大臣に就任した。

鈴木貴子副大臣

「貴子氏が民主党時代に初出馬したのが北海道7区ですが、自民党では道連会長の伊東良孝氏が議席を維持してきた。宗男氏は『安倍首相(当時)は、伊東氏と貴子が交互に出馬するコスタリカ方式を約束した。次は貴子の番だ』と訴えています。そこで、官邸は副大臣に就任させたのでしょう」(道連関係者)

 宗男氏に話を聞いた。

「16年2月23日ですね、当時の茂木選対委員長、北海道支部連合会長の伊達忠一、私、あとは鈴木貴子と伊東良孝代議士で署名しているわけですよ、選挙協力で。今度は鈴木貴子が小選挙区の番。当然約束は守られる。いま、北海道中が自民と立憲とで大変拮抗している。私とケンカしても得策ではないんです」

――副大臣に就任したが。

「貴子は防衛政務官もやっていますから」

――約束が守られなければ宗男氏を敵に回す?

「そりゃそうですねえ。私が反対に回れば、自民党の議員がだいたい7人は吹っ飛ぶと思いますから」

 まさに“吹っ飛ぶ”危機に直面しているのが、北海道11区の中川郁子氏だろう。対抗馬は立憲の石川香織氏で、全国唯一の“女の一騎打ち”だ。中川氏は中川昭一元財務相の妻で、石川氏は小沢一郎氏の陸山会事件で逮捕された元衆院議員・石川知裕氏の妻。4年前の選挙は同僚議員との“路チュー”事件も響き、石川氏に敗れた中川氏だが、今回もC-と劣勢だ。

「昭一氏の父・一郎氏の秘書だった宗男氏は一郎氏の死後、昭一氏と骨肉の争いを演じました。以降、犬猿の仲でしたが、宗男氏は今回、中川氏支援を公言。両家の“歴史的和解”は間近です」(前出・道連関係者)

 が、宗男氏に「約束が守られない場合、中川氏を応援しない?」と尋ねると、

「そりゃ私は(これまで中川氏支援を)善意でやってるわけですからね、えぇ」

 宗男氏に生殺与奪の権を握られている中川氏は、ピリピリムードだという。

「記者が事務所に挨拶に行ったところ、中川氏が不在だったため名刺を置いてきた。すると、中川氏はその名刺をビリビリに破り捨てたそうです。2紙の記者が“被害”に遭ったとされています」(地元記者)

 中川氏に確認を求めたが、期日までに回答は無かった。

北海道11区は女の戦い

母の借金、暴行罪…

 新潟1区は物議を醸した候補者が揃う選挙区だ。自民の塚田一郎元国交副大臣、維新の石崎徹氏、立憲の西村智奈美氏らが出馬する。

「塚田氏は19年に下関市と北九州市を結ぶ道路建設を巡り、『総理(安倍氏)とか副総理(麻生氏)が言えないので、私が忖度した』と発言。副大臣を“更迭”されました」(前出・デスク)

 そんな塚田氏に対し、

「国会議員になるべきではないと思います」

 と憤るのが、長岡市在住の会社役員、大川恵美子氏だ。19年12月に死去した塚田氏の母親と40年来の付き合いで、1000万円以上を貸してきたという。塚田氏の母親を巡っては、億単位の借金などが新潟日報で報じられてきた。

「お母さんは『一郎が返すから』と一筆書いて借金するのですが、一切返ってきませんでした。息子から遠ざけられ、私の家に逃げ込んできた時期もありましたが、最後は老人ホームで亡くなった。訃報を耳にした直後、遺品を返そうと事務所に連絡しましたが、『葬儀は済ませた。遺品はそちらで処分して下さい』と。葬儀にも参列できず、余りに冷たい対応でした。今更、お金を返してほしいわけではない。国政を目指す者として、せめて母親への情を持ってほしいのです」(同前)

 塚田氏はこう答える。

「生前、ご迷惑をおかけしたことは申し訳なく思っています。ただ、債権・債務を含めて相続を一切放棄しましたから、私が勝手に遺品を処分することもできません。『ご処分頂けないですか』と申し上げて、ご了解されたとの認識です」

 一方、4年前は小選挙区を勝ち抜いた西村氏。「50代が14歳と性交」発言が問題視され、議員辞職した本多平直氏を夫に持つ。

「西村氏は当時、立憲幹部に本多氏の処分撤回を求める嘆願書を提出。選挙への影響については『選挙区の皆さんにはきちんと説明をしていきたい』と語っていました」(立憲関係者)

 西村氏に嘆願書などについて尋ねたところ、

「意見書を同僚議員と共に作成し、何名かの議員にお渡ししたことは事実です」

 元秘書への暴行罪で略式起訴され、昨年、自民を離党した石崎氏。10月に維新の公認を得たばかりだ。

 石崎氏に聞いた。

――選挙戦は劣勢だが。

「フフ、そうですよね(笑)。塚田さんは“忖度”の件、西村さんは旦那さんの問題があった。脛に傷のある3人と言われています」

 新潟1区はB評価の西村氏を、C-の塚田氏と石崎氏が追いかける展開だ。

三男、次女、娘婿

 自民では今回、ベテランの引退を受け、地盤を継ぐ世襲候補が目立つ。岸田政権で中枢から外れた前幹事長はどうなったのか。二階俊博氏(和歌山3区)だ。側近には「こうなったら外国にでも行きたい」と漏らしているが、

二階前幹事長

「二階氏もすでに82歳。三男・伸康氏に禅譲したいはずですが、地盤が重なる世耕弘成参院幹事長の衆院鞍替えを警戒している。そこで公示日直前に、禅譲を断行する可能性も囁かれています」(県連関係者)

 当の伸康氏に聞くと、

――公示直前に出馬する?

「全くそんなこと(笑)。根も葉もないですよ。いま挨拶回りをしているので」

 二階氏本人が出馬する場合はA評価だが、

「世耕氏は明日衆院の公示を迎えても戦えるほど、準備万端です。二階氏の息子が相手なら、圧勝するでしょう」(久保田氏)

 一方、比例・東京ブロックからは元官房副長官の次女で、16年の「ミス日本グランプリ」に輝いた女性が自民党から出馬する。

ミス日本と安倍首相(当時)

「鳩山政権で官房副長官を務めた松野頼久氏の娘・未佳氏です。頼久氏の父・頼三氏と縁が深い小泉純一郎元首相の仲立ちで昨年、二階幹事長(当時)と面会し、出馬の相談もしていました。以降は自民党都連で選挙の手伝いなどをしていましたが、比例順位は下位の見込みで当選は難しい。話題作りのための擁立でしょう」(自民党関係者)

 父・頼久氏もこう語る。

「自民党の政治塾に応募するなど幼い頃から政治に興味は持っていましたが、今回の出馬には反対です。社会人経験はほぼないですし、若い女性でミス日本を受賞しただけ。まずは、ともかく勉強しろと言いたい」

 政界だけではない。ソフトバンク・孫正義社長の娘婿も出馬を狙っていたのだ。

「元総務官僚の渡辺泰之氏です。叔母は、前滋賀県知事の嘉田由紀子氏。通信行政には関わっていなかったものの、那須塩原副市長時代に那須の乗馬クラブで出会った孫氏の次女と16年に結婚しました。孫氏には8月後半に出馬の挨拶に行き、9月に退官した。上田清司参院議員が主導する“上田新党”から、埼玉15区での出馬を準備してきました」(総務省関係者)

 渡辺氏を直撃した。

――孫氏からの援助は?

「ビタ一文ありません。義理の父は『納得できない』と大反対でしたから」

 ただ、埼玉15区は田中良生氏がB評価。直撃3日後、渡辺氏から連絡が入り、「勝てる見込みが無く、出馬を取り止めた」という。

石原家が消える

 他方、野党は足並みが全く揃わない。その象徴が、東京8区を巡る大モメだ。8区は、石原伸晃元幹事長が長く議席を守ってきた選挙区。立憲は前回も出馬した吉田晴美氏を擁立予定だったが、れいわ新選組の山本太郎代表が突如、“乱入”したのだ。枝野幸男代表が「困惑している」と語り、混乱に拍車をかけたが、

立憲の枝野代表

「実は立憲とれいわの間で話はついていて、吉田氏は来夏の参院選で東京選挙区に回ることになっていました。裏にあるのは、参院東京選挙区選出の蓮舫氏が抱く“野望”。参院の全国比例に回り“フリーハンド”になることで、衆院鞍替えや都知事選出馬を窺っているのです」(立憲担当記者)

蓮舫氏

 ところが、6年間地元活動を続けてきた吉田氏の支援者らが猛反発する。10月11日、横浜市内で演説に臨んだ山本氏は一転、8区での出馬断念を表明。だが、その場で立憲側とのやり取りを録音していたことを明かし、次のように語った。

「19年から立憲と候補者調整がされていた。反論してもいいけど、その時は泥沼だ」

れいわの山本代表

 石原氏の秘書は野党の大モメについて「状況がよく分からない」と答える。

「枝野氏らは調整能力の無さを露呈しましたが、8区は吉田氏が相手でも、石原氏はC-で落選危機。東京3区の石原宏高氏もC-。惜敗率次第では、石原家が国政の場から姿を消す恐れもあります」(久保田氏)

 想定外の自民党。迷走する野党――。仏滅の10月31日。4年ぶりとなる「国民の審判」が下される。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

source : 週刊文春 2021年10月21日号

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