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第592回 佐々木朗希(千葉ロッテマリーンズ 投手)「コントロールはあまり良くなかったが、どうにか球威で抑えることができた」

野球の言葉学

鷲田 康
エンタメ 社会 スポーツ

 セ、パ両リーグともに優勝争いが佳境を迎えている。

 セ・リーグはヤクルトが一歩抜け出し、この号が発売される頃にはすでに6年振りのリーグ制覇が決定しているかもしれない。一方のパ・リーグは最後の最後まで優勝の行方から目が離せない展開となりそうだ。

 その中で注目したいのがロッテの剛腕・佐々木朗希投手(19)の投球である。

 10月14日には直接対決のオリックス戦に先発。6回を投げて5安打無失点で8つの三振を奪う力投で、チームにマジック9を点灯させる勝利をもたらした。

「コントロールはあまり良くなかったが、どうにか球威で抑えることができた」

 佐々木がこんな言葉学で振り返ったのが、この日のオリックス戦の投球だった。

登場曲はあいみょんの「今夜このまま」

「圧巻でした」

 こう語るのはその試合を取材した放送関係者だ。

「同学年のオリックスの左腕・宮城大弥投手(20)との投げ合いでしたが、宮城は大一番の重圧で思うような投球ができずに3回までに5失点してしまいました。一方の佐々木も立ち上がりは制球が不安定で2人の走者を出すなど、実は決してベストのパフォーマンスではなかった。それでも2回以降は真っ直ぐとフォークを軸に、相手を力でねじ伏せていった。大事な試合をああいうパワーピッチで抑え込めるのは、日本ハム時代の大谷翔平投手(現ロサンゼルス・エンゼルス)と同じスケールの大きさの証明ですね」

 この日の最速はプロ自己最速タイとなる158㎞。そこに140㎞台後半で落差のあるフォークがある。奪った8つの三振のうち、6個がこのフォークだった。

 プロ1年目の昨年は、身体がまだまだきちっと出来上がっておらず、育成を一任されている吉井理人投手コーチの目が届く1軍に帯同。1軍はもちろん、2軍の試合にも登板することなく1年間を終えている。

「しかし1軍に帯同している間は、ずっと試合中もスコアをつけてロッテの先輩投手だけでなく、他チームの1軍の一流投手のピッチングを観察し、研究していました。その中で『自分なりにバッターを抑えるイメージを作ってきた』と言います。そういう研究の成果もあって、この日も同じフォークでも空振りをとるフォークとカウントを稼ぐフォークを巧みに使い分けていた。力で抑え込むだけでなく、ボールの“出し入れ”ができる。2年目でそういう投球ができることも、非凡さの証明だと思います」(スポーツ紙デスク)

井口監督の決断

 混沌とするV争い。実はロッテにマジックは点灯したものの、その時点でも数字的に優位なのはまだオリックスだった。そうした状況を踏まえ、追いかける立場のロッテ・井口資仁監督(46)が、最後のキーマンに指名したのが佐々木だったのである。

「あと2回いきます」

 10月17日のソフトバンク戦が雨天中止となって、井口監督はローテーションを再編。5月の1軍デビュー以来、体調管理を最優先して大事に使ってきた佐々木をフル回転。10月23日の日本ハム戦の先発から、中5日で29日にも先発させる可能性を匂わせた。

 ロッテの優勝となれば2005年以来16年振り。ポストシーズンを勝ち抜いて日本一となれば、シーズン3位から「史上最大の下克上」となった10年以来、11年振りとなる。

 いずれにしてもロッテにとっては“歴史的勝利”となるが、その成否は“エース”佐々木の右肩に託されることになりそうだ。

興南高で甲子園に2度出場している宮城
 

source : 週刊文春 2021年10月28日号

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