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介護を楽にする「アンダーヘア脱毛」って何だ?

《介護の手間が「半分に」、中高年女性10年で75倍》《値段 痛み 生殖器への影響は、決断のタイミングは白髪》

「週刊文春」編集部
ライフ 医療 ヘルス

 男女問わず芸能界で俄かに増えている“介護のための脱毛”、中高年の6人に1人がなる“男の更年期”、70歳以上の女性の6割が悩む“膝痛”。全部まとめて解決し、“最高の老後”を過ごすコツ、あなただけに教えます。

「父の介護で排泄ケアの大変さを思い知りました。下痢のときに、1時間おきに排泄ケアをしなければならなかった。キレイに拭いているつもりでも、毛が邪魔をして……皮膚が赤くなってしまったこともありました。自分が介護される側になった時、これは周りの人が大変だなと思った。それで、私もアンダーヘアを無くすことにしたんです」

 そう語るのは、父の介護経験から、50代後半でアンダーヘア脱毛に踏み切った中村英里さん(63)だ。

 いきなりの「アンダーヘアを無くす」発言に驚いた読者もいるかもしれない。だが今、将来の介護を見据え、「アンダーヘア脱毛」に踏み切る中高年が増えているのだ。

 先日、タレントの大久保佳代子もテレビ番組で「やってます」と告白。自身も脱毛をしているおぎやはぎの小木博明に、「今後、結婚しなかったら介護が必要になった時に家族がいない。他人の手を煩わすことになるから綺麗な方がいい」と勧められ、始めたという。ロンドンブーツ1号2号の田村淳も実践者の一人だ。

介護脱毛を告白した大久保

 医療脱毛専門院「リゼクリニック」によれば、アンダーヘア脱毛をした40代以上の中高年女性は、2010年から20年にかけて75倍に急増。40代以上の男性で見ても、15年から20年の5年間で約125倍と激増している。

リゼクリニックの施術部屋

 介護アドバイザーで、総合情報サイト「All About」解説員の横井孝治氏が言う。

「介護をする側・される側に、何が一番しんどいかと聞くと、皆『下の世話』と答えます。おむつの中で便が乾燥して陰毛に絡まってしまうと、拭き取るのが非常に難しい。だからといって、ごしごしと拭き取ると皮膚がかぶれる危険性もある。もし毛が無ければ作業がしやすくなり、手間も半分になるでしょう」

「銀座ケイスキンクリニック」院長・慶田朋子医師もこう続ける。

「高齢者の間で、バリア機能(皮膚表面を覆う油分)が低下した肌細胞の隙間に尿や便の成分が沁みて、ただれや痛みを引き起こすIAD(失禁関連皮膚炎)が深刻な問題となっています。ですが、アンダーヘアを脱毛しておけば、リスクの軽減が見込めます。特に女性は男性と比べて尿道が短いため、寝たままの状態で排便すると、おむつ内で便が広がって菌が入り込み、尿路感染症を患う可能性も高い。だからこそ、拭き取りやすい状態にしておくことが重要なのです」

 ただ、どこで毛を処理すればいいのだろうか。

「医療機関しか取り扱えない高出力の脱毛器を利用する『医療レーザー脱毛』がお勧めです。医療脱毛なら、処理した場所の約95%の毛は生えてこなくなる。『永久脱毛(80%以上の減毛が続く状態を指す)』が実現できます」(同前)

慶田医師

 冒頭の中村さんが行ったのも、医療レーザー脱毛だったが、注意点が1つ。医療脱毛には「タイムリミット」があるのだ。リゼクリニック新宿院院長・大地まさ代医師が言う。

「医療脱毛は、黒色や茶色に吸収される波長のレーザーを照射し、毛根や周囲組織を破壊します。そのため、レーザーは白い毛には反応しません。つまり、白髪には脱毛効果はないのです」

 となると、何歳までに施術する決断を?

「白髪の増え方には個人差があるので、適齢期はありません。白い毛が増える前、40、50代での施術をお勧めしていますが、60代でも遅くはない。少し白い毛が混じった状態でも、白髪部分は残りますが、気にしなければ問題ありません。実際、当院での最高齢は78歳でした」(同前)

 では実際の手順はどのようなものか。価格や通院頻度、具体的な施術方法などを順番に見ていこう。

「施術は毛の生えるサイクルに合わせ、約8週間の間隔を空け、5回ほど通って頂きます。1回の照射にかかる時間は、約30分間。当院(女性専門のリゼクリニック)での金額は5回コースで9万9800円になります」(同前)

大地医師

輪ゴムで弾かれるような痛み

 1回目のレーザー脱毛の前には“ある準備”が求められる。自らアンダーヘアを剃る処理だ。だが、中高年の男性では経験がない人も多いだろう。男性専門の総合美容「ゴリラクリニック」総院長の稲見文彦医師にコツを聞くと、

「初心者の場合、切れやすい剃刀ではなく、電動シェーバーを使って下さい。その際、除毛クリームを使うと、毛根まで取り除かれてしまうため、レーザーの効果が得られない可能性があります。なので、除毛クリームの使用はNG。まず毛を短くカットし、しわが多い箇所でもあるので、片手で皮膚を引っ張りながら平らな状態にする。そして、少しずつシェーバーを当てていくといいでしょう」

 気になるのが、施術を受ける際の体勢。下半身を人目に晒すのは、恥ずかしい気もするが……。

「施術は完全個室で行います。施術をするのは同性の医療従事者なので、回数を重ねるうちに慣れる人も多い。照射時には露出を少しでも減らすべく、照射する箇所に合わせて、体を覆うタオルをずらしながら施術を行います」(同前)

 男女ともに「Ⅴライン(腰骨から太もも付け根まで)」は仰向けで、「Oライン(肛門周辺)」はうつ伏せで施術を受ける。「Ⅰライン(女性器周辺)」や男性器周辺は、仰向けで片足ずつ膝を立てて外側に開いていくという。

「照射時には、脱毛レーザーの光が目に入らないよう、目隠しのゴーグルをします。施術中の医師が視界に入ることはありません」(同前)

 では、アンダーヘアを取り除く際の「痛み」はどれぐらいなのか。

「喩えるなら、輪ゴムで弾かれるような痛み。特に男性は女性に比べて、脳から痛みを緩和する物質が出にくいので痛みに弱い。ですが、今は麻酔も使えますのでご安心下さい」(同前)

 

 直接、男性器にレーザーを当てるため、生殖機能への影響はないのか、と不安になる男性もいるだろうが、

「脱毛レーザーのエネルギーは、睾丸や精巣など人体内部まで到達しないので影響はありません」(同前)

稲見医師

 医療脱毛で無くした毛はほぼ生えてこない。銭湯で見られるのは恥ずかしいから、やっぱり二の足を踏む、という人もいるだろう。実際に40代以上で脱毛をする人は、どの程度「つるつる」にしているのか。女性専門の銀座ケイスキンクリニックでは、

「全て無くす人と、Ⅴ部分のみ残す人の割合が半々です。躊躇される人は、まずコンパクトな三角形や小判型に残してはいかがでしょうか。その後、追加で全部無くすという人もいらっしゃいます」(慶田医師)

 かたや男性専門のゴリラクリニックでは、

「40代以上の7割が全部きれいにされることを希望されます。最初は抵抗があって、少し残したいと言われるのですが、回数を重ねるうちに意識が変わってくるようです。少し残すくらいなら、さっぱり無くしちゃおう、と」(稲見医師)

 肝心の施術を受けるクリニックは、何を基準に選べばいいのだろう。慶田医師が解説する。

「皮膚科専門医が常駐していて、毎回医師の診察があるクリニックを選びましょう。医療脱毛を掲げていても、安さを売りにしているところは、リタイアした高齢の内科医が名前だけ貸しているなど、専門性の低いクリニックもあります。しかし、デリケートゾーンは皮膚の色が黒いため、火傷のリスクもゼロではない。毛穴が赤く炎症を起こすこともある。そんな時、専門の皮膚科医がいれば、ステロイド剤の処方など適切な対処ができます。また、外性器周りの皮膚がんチェックを受ける意味も大きいでしょう」

VIOライン(「リゼクリニック」公式Webサイトより)

「無資格者の施術は違法」

 一方、電車の広告などで目立つのが、エステサロンの「光脱毛」だ。安価で店舗数も多いが、医療脱毛とは何が違うのか。

「エステサロンなどの光脱毛は、IPL(カメラのストロボのような光)をメラニン色素に反応させ、毛根を弱らせていく方法です。ただ、エステ用のIPLは出力が弱く、一時的な減毛にしかなりません。永久脱毛を目指す介護脱毛には不向きでしょう」(同前)

 何より、安全面でのリスクも少なくない。国民生活センターの調査によれば、12年以降の5年間で、脱毛の施術で危害が発生した数は964件。そのうち680件が、エステでの脱毛によるものだ。肛門周りの光脱毛で火傷を負い、完治までに1年以上かかると言われた例もある。

「脱毛はあくまで『医療行為』。エステで無資格者が施術するのは違法です。皮膚科で受けて頂くのが安心です」(同前)

 近年、若い世代を中心に流行っているのが「ブラジリアンワックス」。ワックスを直接肌に塗り、一気に剥がす脱毛法だが……。

「ワックスを使って抜くだけなので、毛を作る器官が残っている以上、一定期間が過ぎたら生えてきてしまう。しかもアンダーヘアは毛根が太いので出血してしまうこともある。埋没毛(毛が皮膚に埋もれる症状)や毛嚢炎(毛根を包む毛嚢に細菌が感染する症状)、湿疹などのトラブルも起きやすいので、皮膚科医としては推奨できません」(同前)

 新商品が続々発売される家庭用脱毛器はどうか。パナソニックによれば、客層は、約70%が40代以上の中高年で、男女比では意外にも男性が6割を占めるという。デリケートゾーンを他人に見せることに抵抗があるという人は、自分でお手入れできるのならばそれに越したことはないが、

「家庭用の機器は、エステの光脱毛器よりもさらに出力が弱いものが多い。永久脱毛が叶わないので、介護脱毛には向かないといえます」(稲見医師)

 すなわち、介護のために永久脱毛を目指すなら、現状は「医療脱毛」しかないということだ。しかもそのメリットは、介護だけではない。冒頭の中村さんは、「今の生活もすごく快適になった」と語る。

「ムレが消え、デリケートゾーンのお手入れも随分楽になった。若い頃は生理が重くて辛かったので、もっと早くやっておけばよかったと後悔したほどです」

 さらに――。

 稲見医師が言う。

「汗は毛にまとわりつくもの。つまり、毛が無ければ、匂いが生じるリスクが減り、清潔感も高まる。それは性生活にもプラスかもしれません。実際、男女問わず、脱毛は結果的に、パートナーを満足させられるケースが多いように感じます」

「つるつる」が珍しくない世界が来るかもしれない。

source : 週刊文春 2021年10月28日号

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