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「オレ、首なの!?」 辻監督“退任誤報”を生んだ「弱音」

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「週刊文春」編集部
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「どんな魔法を使ったんだ? シーズン終了前に退任報道が出た監督は、辞めるのが相場なんだけど」

 西武OBがそう驚いたように、「退任へ」と打たれた後に一転、来季続投が決まった西武の辻発彦監督。一体、何が起きていたのか。

 就任1年目の2017年には3年連続Bクラスのチームを2位に導き、18年、19年とリーグ連覇。だが、今季は7月から5位に低迷し、42年ぶりの最下位まで見えてきている。

 そして10月5日のロッテ戦に敗れ、優勝の可能性が消滅した翌日の6日。複数のスポーツ紙が「辞任する意向を固めた」「後任は松井稼頭央二軍監督が最有力」などと報じ、7日には読売新聞など一般紙も「今季で退任へ」と打ったのだ。

 辻監督の「(退任は)覚悟している。プロの世界だから」という談話も載ったため、「退任を信じたある選手は『すぐに二軍に落とさず、チャンスを長く与えてくれる監督だったのに』と嘆いていました」(番記者)

就任から4年連続Aクラスは立派 ©共同通信社

 ところが――。

「オレ、首なの!?」

 記事を読んだ辻監督は、そう仰天したという。事の真相を球団関係者が明かす。

「山川穂高などの主力が調子も上がらぬまま、休養を求めてくる。加えて負けが込む苦境に、周囲に『もう辞めたいよ~』と冗談交じりに弱音を吐いたんです」

 この「辞めたい」という言葉だけが番記者に漏れ、記事化されてしまったというのだ。渡辺久信GMにも“辞意”は全く伝わっておらず、球団内は大混乱に。

「広報は『辻監督は辞めるという意思を球団に伝えていません!』と番記者に説明するなど、火消しに躍起でした」(スポーツ紙記者)

 結局、14日に各紙は「球団が続投を要請し、辻監督が受諾した」と“訂正記事”を出すことになった。

 だがなぜ、辻監督が弱音を吐くほど低迷したのか。前出の球団関係者は「山川や栗山巧ら主力が軒並み負傷離脱したのも痛かったが、昨年メジャー移籍した秋山翔吾の抜けた穴が埋まっていないのが大きい」と語る。

 秋山は野手陣のリーダーとして、必要な場面で敢えて内野ゴロを打つ自己犠牲の精神や、制球が定まらない投手に対しては2ストライクまで待ちを貫け、といった基本的な姿勢を口酸っぱく助言していたという。

「まるで小姑だと若手からは嫌われていたが、秋山の野球観は辻監督と共鳴し、グラウンド内の“右腕”だった。渡米の前に『ウチの選手は最近、野球が下手になった。これからもっと弱くなりますよ』と予言していて、実際に3位、5位と落ちる一方です」(同前)

 求心力のある監督の下、“嫌われる兄貴”の誕生が辻政権6年目の鍵となる。

source : 週刊文春 2021年10月28日号

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