週刊文春 電子版

「半沢」ロスに“読むクスリ”

「週刊文春」編集部
エンタメ 芸能 テレビ・ラジオ
香川照之(左)と堺雅人(右)
香川照之(左)と堺雅人(右)

NHK・民放の全ドラマの中で、前シリーズの最終回以来、7年ぶりに視聴率30%を超えた「半沢直樹」。「おねしゃす」「3人まとめて1000倍返しだ」など名台詞も毎回登場した。クセのある俳優たちとの別れが寂しい人も、この記事を読めばロスが解消されるはずデス。

◆ ◆ ◆

 9月24日夜、東京・神田の学士会館。「半沢直樹」(TBS系)の最後の出演シーンを撮り終えて、花束をもらった主演の堺雅人(46)は破顔して、スタッフをこうねぎらった。

「いやー、もう感謝しかないです。感謝と尊敬。皆さん、本当に暑い中、最初は寒かったし……。毎日毎日が大変な中、よくやってくださったと思います。おかげでとっても楽しい7カ月でした。なんか終わるの嫌だなぁって感じです」

 2月に撮影を開始したが、コロナ禍の影響で2カ月中断し、クランクアップは最終回オンエアの3日前。まさに綱渡りの進行で、堺は夜中まで撮影して、また早朝から次のシーンを撮る日々が続いた。

 前シリーズの悪役から一転、今回は半沢の窮地をタブレットで救った東京中央銀行の福山啓次郎役の山田純大(47)が振り返る。

半沢VS.大和田(TBSより)
全ての画像を見る(11枚)

「撮影中は待機場所で次のシーンに対する創意と工夫、そんな会話が聞こえてくるアツい現場でした」

 さらに検査部のトミさんこと富岡義則を演じた浅野和之(66)がこう続ける。

「堺君のすごいところは平常心と集中力! あれだけ膨大なセリフを数日で入れて(暗記して)くる。9話で富岡の正体が半沢にバレる地下書庫のシーンは、重要なシーンだったので演者の集中力が大事でしたが、彼はNGを出さない。そういった大変なシーンの前でも、我々の前ではいつもリラックスしている姿は大物ですね。平常心だからこそ、あの演技の安定感がある」

 アクの強いキャラクターたちとの別れに、「半沢ロス」となっている向きも多いだろう。演じた俳優たちの秘話を紹介していく――。

 大役を終えた堺だが、次はガラッと“役どころ”を替えるという。妻の菅野美穂(43)が来年1月開始の連ドラに主演するため、12月から撮影に入るからだ。

 スタッフから子育てのことを尋ねられた堺は、

「彼女も女優ですからね。僕が面倒見ますよ、専業主夫です」

「堺さんは子供を連れて平気で山手線に」

半沢の妻・上戸彩(左)、実際の妻の菅野美穂(右)

 と笑って宣言したという。

 5歳と1歳の2児がいる堺家。一方が仕事のときはもう一人が仕事を休んで家庭を守る“二毛作”スタイルを採っている。

「堺さんは今でも子供を連れて平気で山手線に乗るそうです。菅野さんも独身時代は一人でフラッと海外へ旅行するなど、2人とも一般人の感覚を持った夫婦なんでしょう。今年頭には、堺さんは家族と菅野さんの両親をハワイに連れて行って家族サービスしていました」(芸能プロ関係者)

 最終回前日、菅野の母に堺の“人事考課”を訊いた。

「家庭には協力的な方ですよね、優しくてね」

――子煩悩ですか?

「そうなんですよ、感心するほどです」

 とA評価。

「(ドラマは)毎週、ハラハラドキドキしながら見てますよ。コロナで撮影が中断してしまったりして、大変だったみたいだと聞きました。でも頑張ってね、視聴率もよく、みなさん楽しみにしてくださっているみたいで、ありがたいですね」

 半沢を明るく見守る妻・花を演じた上戸彩(35)。「花は明朗快活じゃないと」と周囲に話し、役作りのためにある方法を選んだ。

「魑魅魍魎の世界であがく半沢のシーンの台本は読まず、自分のシーンだけを読んだ。のほほんと何も知らないまま夫を支える役になるためです」(TBS社員)

 その上戸も私生活では、EXILEらの所属事務所LDH会長であるHIROの夫人で2児の母。

上戸より16歳上のHIRO

「家庭での食事シーンではサラリーマンの体調を気遣った高タンパク低カロリーの料理を出していた」(同前)

 それを食べた上戸は、

「おいしい。主婦として役立つね。勉強になる」

半沢家の団欒シーン(TBSのHPより)

 と感心。半沢とのシーンでは花がほとんど喋っているが、普段の家庭について、周囲にこう明かしていた。

「こんなに話さないですよ。HIROさんの方が話すし」

 半沢を裏切ったと思いきや、最終回で再びタッグを見せた大和田暁取締役の香川照之(54)。舞台裏でも2人はバディだったようで、メイク室で堺が「歌舞伎だとどういう表情になるんですか」と質問すると、香川が実演してみせたという。

「香川さんは気合が入っていて、自分が出ていないシーンでもモニターをチェックする。その際、ドラマのテーマ曲を流して、完成版のように見える仕掛けをしていた」(TBS関係者)

新聞奨学生として朝日新聞販売店で働く

香川照之

 香川は何度も同じシーンを撮る中でアドリブを足していく。堺も半ば呆れつつ、「演技がどんどんオーバーになりますね」と笑うほど。

 大和田との共闘以上に驚きだったのが、江口のりこ(40)演じる白井亜希子国交大臣の翻意。江口が長年所属する「劇団東京乾電池」座長の柄本明(71)が演じる箕部啓治・進政党幹事長を断罪する活躍を見せた。

 19歳で役者になるため兵庫から上京した江口。劇団の研究生の傍ら、新聞奨学生として飯田橋の朝日新聞販売店で働いていた。

白井大臣役の江口のりこ(番組公式HPより)
柄本明演じる幹事長

 当時の上司が明かす。

「口数が少なくて感情の起伏が少ない子でした。あるとき劇団での飲み会で、同期3人の女の子のうち、誰がタイプかと男性の間で話題になったそうで、『私だけ言われなかったから、頭にきて帰ってきました』と話していた。でも淡々と喋るから、笑っていい話なのかわからず困りましたね」

 そんな江口だが、珍しく感情を露わにしたことがあった。販売店の経営が傾き、日本経済新聞の販売店に替わるときだった。朝日新聞の配達も引き継いだため、配達員たちの間で、仕事量の激増を心配する声が上がっていた。

 説明しに来た日経の所長に対して、激怒した江口は、

「信じられん!」

 と咆哮したのである。

「結局、仕事の量はうまく調整できて、彼女は契約期間の最後まで働いて、60万円の奨学金を受け取って辞めました」(同前)

 幹事長にも所長にも、筋を曲げない女だったのだ。

補欠合格だったアンジャッシュ児嶋

児嶋(左)は小学生時代、八王子のサッカークラブのキャプテン。相方の渡部(右)は謹慎中

 その白井大臣を慕い、最終回で半沢に協力するのが、箕部幹事長秘書の笠松茂樹役のアンジャッシュ・児嶋一哉(48)。相方・渡部建(48)が不倫スキャンダルで謹慎する中、コンビの“じゃないほう”だった児嶋は役者として評価を上げた。児嶋の過去を、先輩芸人「ブッチャーブラザーズ」のリッキー(62)が証言する。

「児嶋は(所属する)人力舎の養成所の1期生です。6名合格したなかで、彼だけは実質補欠合格です。まともに目も合わせられない暗い子で『彼は無理だろう……』となったのですが、大竹まことさんが『こういうのは余程おかしい奴じゃなきゃ入れるべき。経営もあるんだから』と(笑)」

 昼過ぎに起きてパチンコへ行く生活だった児嶋だが、養成所に入ると、母親のつくった弁当を持って一生懸命通うようになった。

 そんな姿を見た母親は、八王子からわざわざ事務所を訪ねて、「息子が更生した」と礼を言ったという。

 児嶋が半年後に連れてきたのが、渡部だった。

「児嶋は相方になってくれた渡部に感謝していたし、渡部も最初は児嶋を頼っていましたよ」(同前)

 今や遠い昔の話……。

 半沢が出向した東京セントラル証券で、仕事のやりがいを叩き込んだ部下・森山雅弘役の賀来賢人(かくけんと・31)。俳優業は絶好調で、妻の榮倉奈々(32)の第2子妊娠も明らかになった順風満帆の俳優の素顔は?

榮倉奈々(左)と賀来賢人(右)

「ドラマ『今日から俺は!!』などコメディーでの弾けた演技の印象が強いが、実際はけっこう暗めの性格」(前出・芸能プロ関係者)

 榮倉は結婚当初、

「家でもボソボソとしか喋んなくて、何言ってるか、わかんないんだよね」

 と愚痴るくらいだった。

北大路が「俺もやってみた」

北大路欣也

 その賀来の暁星学園バスケットボール部の大先輩にあたるのが、中野渡謙頭取役の北大路欣也(77)だ。

 普段は口数の少ない北大路。目の前で堺と香川が長いセリフの応酬をする場面が多いが、芝居が終わると、

「いい芝居だったよ」

 と声をかけていたという。

 そんな北大路が「俺も(アドリブを)やってみたよ」と香川に話したことも。

「目力の演技が中心で、セリフも動きも多くないので、どこがアドリブかわからない(笑)」(スポーツ紙記者)

 その中野渡のかつての部下で、今は小料理屋の女将・智美を演じた井川遥(44)。

「堺、上戸と同じ2児の親です。11月からNHK朝ドラ『おちょやん』に出演し、自身のアパレルブランドのディレクションも行うなど大忙し。それでも子供が出かける時は自家製レモネードを持たせているそうです」(前出・TBS関係者)

 帝国航空再生タスクフォースの狡猾な弁護士・乃原正太役を演じたのは、純朴なイメージが強かった筒井道隆(49)。父はキックボクシングの元東洋ミドル級チャンピオンで役者経験もある風間健氏で、筒井が高校を卒業するとき、優しくて大人しい性格の息子に、「役者か自衛隊か、選べ」と迫った。風間氏が話す。

悪役に挑戦した筒井道隆(番組公式HPより)

「芸能界は恥をかくことも多い。その中で鍛えられて、何かが爆発することがあるのではと思いました。自衛隊は強制的にしつけられる。柔と剛ですが、どちらも鍛えられる。本人は、自衛隊は嫌だと、消極的選択で役者を選んだんです。周りに可愛がられてうまくいった。今回の悪役も芸を広げる覚悟で臨んだのでしょう」

 出演者も「半沢ロス」のようだ。前出の浅野が語る。

「周りからの反響がすごかった。良いドラマは『物語』が観ている人の心に宿ると思うんです。すると終わるときに寂しさが生まれる。ロスですね。自分もそういう気持ちを感じます。この『物語』に参加できて良かったなと思います」

 久々にお茶の間を夢中にさせた国民的ドラマだった。

source : 週刊文春 2020年10月8日号

この記事の写真(11枚)

文春リークス
閉じる