ワクチン33%、偽証明書が売買 ロシア人の政府とメディア不信

THIS WEEK「国際」

栗田 智
ニュース 社会 政治 国際

 ロシアの新型コロナ感染拡大が止まらない。一日の陽性者数は約3万7000人、死者数は1000人を超え、過去最悪の状況だ。デルタ株より感染力が強い変異株・デルタプラスも確認された。

 事態を受けて10月20日、プーチン大統領は全土に大統領令を出し、10月30日から11月7日までを非労働日と定めた。事実上のロックダウンで、エッセンシャルワーカー以外は出勤停止、食料品や薬など生活必需品以外の店は休業に。飲食店の営業は、持ち帰りかデリバリーだけが許可されることになった。地下鉄など公共交通機関ではマスクをしないと5000ルーブル(約8000円)の罰金だが、その監視も強化された。

 感染拡大の最大の要因はワクチン接種率の低さだ。昨年8月、世界に先がけて承認されたスプートニクVをはじめ、4種類の自国産ワクチンがあるにもかかわらず、2回接種完了者は人口の33%と一向に進む気配がない。背景にあるのは国民の政府に対する強い不信感で、直近の民間の世論調査によれば「ロシアのワクチンを接種したくない」と回答した人は52%にも上る。だがファイザー製などの海外ワクチンは、いまだ認められていない。

9月の与党支持率は約30%と低迷

 有名人を起用したテレビCMや町中に貼られるポスター広告も効果なし。手を焼くモスクワ当局は今夏、8月15日を期限に従業員の60%以上が接種するよう義務付ける法令を作った。未接種者に対しては給与の支払い停止、解雇の可能性もある厳しい措置だ。しかし結果は、闇市場で偽の接種証明書の売買が大々的に横行するという、あり得ない事態を招いた。

 政府の発表とメディアに対する不信感もある。下院選で与党が3分の2以上の議席確保で圧勝すると9月20日、それまで2カ月にわたり800人前後ときれいに横ばい状態だった死者数が、堰を切ったかのように急増。現在は1000人を超えた。不自然な数字の発表を見せられると、何を信じたらよいのか分からなくなる。

「ワクチンは重症化から私たちを守ってくれる。接種のペースを加速させる必要がある」と再三にわたって呼びかけるプーチン大統領に対し、国民の態度は冷めたものだ。ロックダウンをよそに休暇を利用し旅行に出かける者も多く、航空券やホテルの予約サイトにアクセスが集中している。人気のソチではホテルは軒並み満室だという。

 国民が全く耳を貸してくれなくなったプーチン大統領。頼みの国産ワクチン・スプートニクⅤのWHO承認もデータ不備で年内は困難との見通しで、その表情に焦りの色が滲んできた。

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source : 週刊文春 2021年11月4日号

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