ブロックチェーン技術の「破壊力」|三木谷浩史

三木谷浩史「未来」 第18回 

三木谷 浩史
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 先週号では、アフリカのケニアで電子マネーが普及している様子を紹介し、現金信仰が強い日本でも「通貨」はいずれ、電子マネーに置き換わるということを書いた。そうしたフィンテックの進展に欠かせないのが、ブロックチェーン技術だ。ブロックチェーンとは、一般的に「『分散台帳』を可能にする技術」と説明される。これは、どういうことか。

 インターネット上における取引履歴の全てを、ブロックチェーンによって現在から過去にわたって正確に記録する――。言い換えれば、あるデータが〈AからBに渡り、さらにCからD、Eへと渡され、現在はFが所有している〉といった「取引履歴=ブロック」が、まるでチェーンのように繋がる形で記録される、ということだ。この技術によってデータは改竄や偽造から守られ、インターネット上で共有されることでその信用が担保される。

 このブロックチェーン技術の「破壊力」は、これまでの「認証」や「承認」という概念を覆してしまうところにある。

 僕らの生きるこれまでの社会では、取引のデータの信用性は、多くの場合、特定の機関によって認証されていた。お金にせよ、様々な証書にせよ、「1対1」の取引が成立したかどうかは、誰かによって承認される必要があったからだ。例えば、公証役場なんかはそのためにあり、こうした機関が「これは正しい書類である」と認定して初めて、正しい取引として認められる仕組みだ。

 でも、ブロックチェーンの技術を使うことで、そうした承認の「胴元」のような機関は必要なくなる。ブロックチェーンが僕らにもたらすのは、先に触れたように、ネットワークのコミュニティがデータの「正しさ」を保証する「自律分散型」の世界であるからだ。

国家権力の一部を奪い取る

 ビットコインが通貨として成り立つのも、その「価値」と「現在の所有者」がネット上のコミュニティ全体によって承認されるからにほかならない。これは暗号資産のみならず、あらゆるネット上のドキュメント(記録)においても同様だ。

ネット上での取引が可能な暗号資産

 例えば、ここに固有の番号の振られた1枚のベースボールカードがあるとする。所有者は僕だ。カードはデジカメで撮影することもできるし、コピー機で印刷することもできる。それでもカードが僕のモノであるという権利を証明してくれるのは、記されている番号ということになる。その権利をAさんに譲るときは、僕は対価を受け取って番号の付いたカードを渡せばよい。

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source : 週刊文春 2021年11月4日号

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