『美智子さまという奇跡』、『雅子さまの笑顔』(ともに幻冬舎新書)を上梓し、働く女性の目で皇室を見つめてきたコラムニスト・矢部万紀子氏が、結婚から浮かび上がった眞子さんの苦悩を紐解く。

眞子さんのご結婚から見えたのは、皇室が女性皇族を幸せにしない装置であるということ、その一点に尽きると思います。
私は皇室を、皇族の方々にとっての家であると同時に、働く職場だと捉えています。仮に「株式会社皇室」と例えるならば、眞子さんはこれまで大変熱心な“働き手”でした。いわば、若きエースです。2015年、エルサルバドルとホンジュラスへの単独公式訪問から始まり、中南米を6カ国も回られるなど、公務に邁進して来られました。
ところが、皇室典範には「皇位は男系男子が継承する」と明記されています。「皇族女子は」という書き出しで記載されているのは、天皇や皇族以外の者と婚姻したときは皇族の身分を離れるということだけ。会社で例えるなら「女性は社長になれません。でも、一生懸命働いてくださいね。ただし、寿退職は決まっています」という世界。女性の目からは「ブラック企業」という言葉さえ浮かびます。
私が就職した1983年当時、希望したマスコミでも「受験資格は男子のみ」という会社が複数ありました。男女の別なく受験できる新聞社を受け、幸い入社できましたが、「女性である以上、私は主流ではない」と思っていました。でも1986年施行の男女雇用機会均等法以降、女性の意識も変わりました。会社も女性に「主流でない」と思わせてはアウトなのです。
ところが「株式会社皇室」は、今でも女性は責任ある立場につけないことを前提に働くか、結婚して出ていくかの二択しかない。「人手不足」対策として女性宮家創設の議論もされていますが、結婚後も働けというだけで、主流になれないことは変わりません。そんな会社に帰属意識がもてるでしょうか。
かつて美智子さまは失声症を患い、雅子さまは適応障害、眞子さんは複雑性PTSDという病を得ています。それでも美智子さまや雅子さまは民間から皇室に入り、皇后という唯一無二の存在へと至る道筋を、困難ながらも切り拓いてきました。しかし眞子さんは生まれた時からそこにいて、何をすべき存在なのかは曖昧です。そこで働き続ける状況を幸せと感じられなくても無理からぬことと思います。
これまで皇室の結婚というのは、ある種、家と家が適した人を探してくるという“御膳立てワールド”でした。学習院は、その世界を補強する存在だったとも言えます。しかし大学進学時、眞子さんはそうではない道を選びました。
選んだ世界で出会った小室さんは、海外への興味も共通し、自分への好意を示してくれる。眞子さんがこの人と新しい人生を築きたいと思うのは不思議なことではありません。皇室という会社から出るドアは、結婚しかないのですから。
眞子さんは、本音を隠さない佳子さまと比べ、自分を出すことを抑えてきた方だと思います。婚約内定発表の会見でも、お互いを月と太陽に例えるなど、ありのままというよりは、きれいに包装した形で語っていましたよね。
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source : 週刊文春 2021年11月4日号