週刊文春 電子版

無料公開中

日大のドン 田中理事長の自宅から1億円が見つかった

西﨑 伸彦
ニュース 社会

 9月8日の家宅捜索で幕を開けた、日本大学附属板橋病院の建て替え工事を巡る背任事件。約2カ月が経過したが、日大のドンこと田中英寿理事長(74)は、駿河台にある日本大学病院の特別室に籠り、いまも強気の姿勢を崩していない。

田中氏

 司法担当記者が語る。

「板橋病院の件では、日大から、設計担当の佐藤総合計画に払った着手金約7億3000万円のうち、2億2000万円が不当に流出。そのスキームを主導し、約2500万円を受け取った疑いで、日大の元理事で、田中氏の最側近だった井ノ口忠男氏が逮捕されました。さらに1億円を受け取ったとして大阪市の医療法人『錦秀会』の前理事長、籔本雅巳氏も共犯として逮捕。捜査の行方は、日大の最高権力者である田中氏の関与と金銭の授受が焦点になっている」

 

 検察側は“頂上作戦”と称して、田中氏立件に意欲をみせ、複数回にわたって任意の事情聴取を行なった。

「田中氏は『日大に泥を塗るようなことには加担しない』『何も知らないし、金も受け取っていない』と繰り返し否定。大学は損失を被っていないとの理由で被害届の提出も拒んだ」(同前)

 しかし、謝礼名目で不可解な金が飛び交う様は、国から90億円(昨年度)の補助金を受ける教育機関のあるべき姿とは程遠い。

 実は、田中氏の蓄財を巡り、知られざる事実がある。9月8日、東京地検特捜部が阿佐ヶ谷の田中氏宅に家宅捜索に踏み込んだ際、部屋から約1億円の現金が発見されていたというのだ。

 地検関係者が明かす。

「田中氏の自宅は4階建てで、1階と2階が彼の妻、優子氏が経営する『ちゃんこ たなか』で、上階が住まいになっています。現金が見つかったのは居住スペース内で、優子氏は激高して係官に『私とあの人が30年以上も働いて稼いだ金だ』と喚き散らしたそうです。ただ、この時は押収せず、お札を一枚一枚、記番号が分かるよう映像で録取しただけ。その後、10月7日に田中氏宅に二度目の家宅捜索を行なった際に、その現金を押収しました」

10月7日、田中氏宅に2度目のガサ入れ

 この田中氏宅は昨年、リフォーム工事が行なわれている。工事の窓口となったのは、日大の100パーセント出資の株式会社日本大学事業部営業課の社員。

 

「その社員は、田中氏が長く監督を務めた相撲部のОB。13年に日大の建設工事を受注した会社から田中氏がリベートを貰った疑惑が報じられた際にも、名前が取り沙汰された人物です。実際のリフォーム工事は、この相撲部OBが営業部長の肩書で在籍する石川県の建設業者が請け負っています。OB本人は否定していますが、高額なリフォーム費用は、日大事業部が負担したのでは、との疑念の声がある」(日大関係者)

 日大事業部は、役員だった井ノ口氏が事実上支配し、大学の納入業者の選定などを一手に取り仕切っていた会社だ。同社を起点にした公私混同ぶりが、疑惑の連鎖を招いている。

 

「逮捕された籔本氏は、田中氏に2回に分け計6000万円を渡したと供述していますが、あくまでも昨年9月の理事長再任の祝いや日大から仕事を貰っていることへの謝礼だと説明。現時点では田中邸から押収した1億円と背任事件を結びつける決定的証拠はなく、脱税での立件を模索している状況です」(前出・地検関係者)

 当初、特捜部は田中氏に、優子夫人の逮捕もチラつかせながら自供を迫ったが、家宅捜索後、優子夫人が自宅の階段から転落。怪我の状態が思わしくなく、田中氏と揃って入院しており、夫人逮捕の“禁じ手”も使いにくい状況だという。

 田中氏が通っていた都内の飲食店の経営者が語る。

「田中氏は『俺の身体は病気の塊だ』と自虐的に言いながら、肉なら500グラムをペロリと平らげる大食漢。金は札束を輪ゴムで留めて持ち歩き、『落としますよ』と声を掛けると『大したことねぇんだ。別に落としたって』と無頓着です。日大の金のことも、『俺は1桁の億には口は出さない。2桁からだ』と豪語していた」

 その言動は学生約7万人を擁する大学のトップとは思えない奔放さだ。日大の顧問弁護士の一人が語る。

「確かに田中氏の自宅から現金は見つかっていますが、それは優子夫人が長年貯めたものという認識です」

“ドン逮捕”に向けた検察の執念は実るのか。

 
 

source : 週刊文春 2021年11月11日号

文春リークス
閉じる