中国の著名な女子テニス選手、彭帥(ほうすい)(35)が2日夜、中国版SNS「微博(ウェイボー)」に、張高麗・前副首相(75)と十数年来、不倫関係にあった、と実名で暴露した。相手の張氏は党内序列第7位だった元最高幹部である。2人が著名人であることと、40歳もの年齢差に、強い衝撃が走った。
告発文は直ちに削除されたが、瞬く間に拡散した。
彼女によれば、2人は党・政府の要人が住む「中南海」にある張氏の自宅で不倫行為を繰り返していた。しかも夫人も承知という異様さだ。事実とすれば、党の規律違反は免れない。
さらに「あなたは私をとても愛していると言った。だが今の地位では離婚できないとも言った」、「今まであなたは一度もカネを使わなかった」、「私が録音機を所持して証拠を残すことをあなたはいつも恐れた」と綴る。張氏がケチで警戒心が強かったと明かし「蟷螂(とうろう)の斧でもあなたの事実を語って行く」と決意も記した。
彭は8歳でテニスを始め、15歳の時に国際大会に初出場。17歳でプロ入りし、13年の全英と14年の全仏の女子ダブルスで優勝した国民的選手だ。昨年、豪州での試合の1回戦で痙攣を起こして敗れ、体力の衰えを認めていた。
一方の張氏は、石油会社勤めを経て、02年に山東省党委書記に就任。山東時代に泰山に登った江沢民総書記を特製の神輿に乗せて運ぶ手配に、江氏はことのほか満足したと言われる。
以降、張氏は07年に天津市の党委書記に栄転しており、この時期に彭と知り合ったようだ。12年秋には政治局常務委員に抜擢され、翌年春に筆頭副首相に選出された。外見上は地味で感情を表さない典型的官僚タイプだが、江沢民派の“番頭格”の一人として、今も隠然たる影響力を行使していると言われる。
ただ今回のスキャンダルには裏もあるようだ。
“党内警察”である党規律検査委員会は彭の告発の翌日、天津市の過去の不正腐敗事件8件を突如公表した。この中には張氏が副首相だった時代の事件2件が含まれており、上層部に向けた責任追及が始まる可能性もある。
巨大IT企業の背後に控える江沢民派の利権構造の摘発に燃える習指導部だけに、対立の火は激しさを増すだろう。
北京では党の重要会議「6中全会」が11日まで開催中。彭の一件が、集まる党幹部の話題にならない筈はない。一方で、彼女が名誉棄損などで拘束されたとの情報はない。
来年秋の党大会で総書記3期目を目指す習近平氏は、反対派の勢力を少しでも削ごうと懸命だ。
source : 週刊文春 2021年11月18日号