国家が暗号資産を発行する時代に|三木谷浩史

三木谷浩史「未来」 第20回 

三木谷 浩史
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 今年初め、中国が「春節」での人の動きを抑制するために、帰郷ができない国民に様々な都市で「デジタル人民元」を配るというニュースが報じられた。例えば北京や深圳では、1人あたり200元(約3000円)のデジタル人民元を配ったのだ。

デジタル人民元を使えるアプリ

 中国ではすでに、アリペイやウィーチャットペイというスマートフォン決済を多くの国民が利用しているが、デジタル人民元はそれらとはまったく違う。これは、中国人民銀行が発行するクリプトカレンシー(暗号資産)だ。こうした国の中央銀行による暗号資産は、「CBDC(セントラル・バンク・デジタル・カレンシー)」と呼ばれる。

 来年2月の北京五輪に向け、中国はデジタル人民元の正式導入を進めているという。実際、9月末にビットコインのような民間の暗号資産の全面禁止を打ち出したばかり。もちろん、CBDCの発行には様々な意図があるだろう。もしかしたら、国内での取引データを掌握したいといった狙いもあるのかもしれない。デジタル人民元が国際社会に与える影響について考える必要もある。

 それでも僕がこのニュースを聞いた時、真っ先に感じたのは、日本と中国の差だった。

カンボジアでも運用開始

 日本でも昨年、定額給付金の支給方法が議論になっていたが、これを機に、例えば、政府が暗号資産を導入し、給付金を支給するような試みがなされてもよかったのではないだろうか。日本銀行がこのCBDCを発行できれば、(銀行口座との紐づけが進んでいないのが現実だが)マイナンバーカードを通じて「10万デジタル円」を送ることだって可能だったはずだ。当然ながら書類を書いたり、役所に行ったり、煩雑な手続きも必要なくなる。

 今後、ブロックチェーンベースの暗号資産は、必ず紙幣や硬貨に代わる僕らの生活のインフラとなっていく。今回、もし多くの国民への「デジタル給付金」支給を実行できていれば、ブロックチェーンを活用した金融システムの構築を目指す上でも大きな経験になっていたと思う。残念ながら、日本の政治や行政からはこうした発想はなかなか生まれなかったわけだが……。

 実は、CBDCを発行しようとしているのは中国だけではない。

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source : 週刊文春 2021年11月18日号

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