普段はあまりテレビドラマを見ないが、12月末で最終回を迎えるNHK大河ドラマ「青天を衝け」は興味を持って見てきた。自分が起業家として人生を歩んできたせいか、吉沢亮さん演じる主人公の渋沢栄一の生き方に勉強になる要素が多いように感じられたからだ。
NHKのドラマではあまり描かれなかったけれど、伝記や渋沢について書かれた本を読むと、彼は派手な芸者遊びをしたり、妾が何人もいたりして、たくさんの隠し子を持った好色な人物でもあったという。
もちろん、社会的な背景は今と全く異なるわけだが、そうした破天荒な人間臭さにも、何とも言えない面白さがある。
三菱財閥を築き上げた渋沢のライバル・岩崎弥太郎もそうだが、やはり明治という時代にあって、彼らが海外から受けた刺激はとてつもなく大きいものだったのだろう。
渋沢が初めて海を渡ったのは、1867年の第2回パリ万博の時。江戸幕府最後の将軍である徳川慶喜の弟・徳川昭武に付き添い、警護の水戸藩士たちのまとめ役として渡仏した。よく知られている話だが、そのパリでの1年半の滞在経験が、後に500以上の会社の設立にかかわり、「資本主義の父」と呼ばれる彼の原点となったわけだ。
パリでの滞在で渋沢が熱心に学んだのは、ヨーロッパの経済に関する法律、株式会社の意味や銀行の仕組みだった。もともと算術に長けて会計係として随行した彼の目に、西欧の近代的な金融システムや街の姿はどのように映ったのか。
『貞観政要』の逸話
今の埼玉県深谷市の豪農の生まれで、もともとは激しい尊王攘夷論者だった渋沢の中に生じたカルチャーショック――そんなことを自分なりに想像してみるのは楽しい。おそらく、1年半ぶりに戻ってきた日本は、文字通り300年、400年は遅れているように感じられたのではないだろうか。
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source : 週刊文春 2021年11月25日号