週刊文春 電子版

頭痛、誤嚥性 肺炎、顔のたるみ 「マスク病」はこんなに怖い

「週刊文春」編集部
ライフ ライフスタイル 医療 ヘルス

 コロナの新規感染者数が急減しているとはいえ、マスクを着用する日常に変わりはない。

 一方で、長期間に及ぶマスク生活により、不調を訴える人が後を絶たないという。いわば“マスク病”だが、これは決して侮るべきではない。必需品のマスクに潜むリスクとは――。

 

 最近増えていると指摘されるのが「マスク頭痛」だ。医療ジャーナリストの森田豊医師が解説する。

「マスクの長時間使用によって、緊張型の頭痛に悩む人が増えています」

 マスクは耳かけのゴムによって両方の耳に固定される。そんなに強い負担には感じられなくても、時間が経つにつれ徐々にこめかみの筋肉が圧迫され、あごなどの筋肉に負荷がかかっていくのだ。

「最終的には、首の左右にあり、頭から鎖骨にかけて縦に走る胸鎖乳突筋が疲労します。すると、頭のまわりや首の後ろ、背中にかけての筋肉が緊張するため、頭痛を引き起こすと考えられます」(同前)

 頭全体がじわりと締め付けられるような痛みが、ダラダラと続くのが症状の特徴だ。

 どう対処すべきなのか。

 まずは「外せるときは外す」こと。

人との距離を十分に保つことができ、感染の心配のない場所なら、1時間に数分でもよいのでマスクを外しましょう。外した際に深呼吸し、意識して緊張を和らげるのも手です」(同前)

口やのどの機能が衰えると…

 あるいは筋肉のコリをほぐすため、両肩を上にギュッと上げ、ストンと落とす“ストン体操”。また、首の後ろの胸鎖乳突筋を揉むのも頭痛を和らげる効果があるという。

 マスクによる弊害は頭痛だけではない。もっと大きなリスクも潜んでいる。「耳鼻咽喉科 山西クリニック」院長の山西敏朗医師が指摘する。

「当院の患者さんで、『人と話さなくなった』『どうも元気が出ない』と訴えるお年寄りがいます。マスクをしていると息苦しさも手伝い、おのずと人と会話することや、大きな声を出す機会が減ってしまう。すると、どうしても口やのどのまわりの筋肉の機能が衰える懸念が生じます」

 そもそも、加齢と共に咀嚼や嚥下に必要な筋肉は衰える。マスク生活が、それに拍車をかけている可能性があるのだ。

 都内のある有料老人ホームでは、入居者が施設内で過ごす際、できるだけマスクを外してもらっているという。

「第一波の頃は、施設内でもマスクを着けていました。でも『息苦しい』と嫌がったり、入居者同士で会話しなくなる。マスクをしていると表情の変化がわからないから、入居者の不調を見落としたこともあります。食事の際にうまく飲み込めなくなり、初めて嚥下能力の低下に気づいたのです」(施設長)

 口やのどのまわりの筋肉が落ち、嚥下能力が低下すると、それは命に関わるリスクにつながりかねない。

「口やのどの機能が衰えると誤嚥の危険が増し、誤嚥性肺炎をもたらします。これは、コロナと同じくらい怖い」(山西医師)

 誤嚥性肺炎は日本人の死因の第7位。マスクによって口のまわりの筋肉を動かさない傾向に陥るのは、高齢になればなるほど警戒する必要がある。

 呼吸にも留意が必要だ。

 もともと心肺機能が落ちている人がマスクをしていると、息苦しさを感じ、口で呼吸してしまう傾向にあるという。歯科医の照山裕子氏が指摘する。

「本来、呼吸は鼻ですることが望ましい。鼻の中には鼻毛や鼻水(粘液)といったフィルターがあり、埃や細菌、ウイルスなどの外敵をからめとることで体内への侵入を防いでくれる機能があるからです」

 つまり鼻自体が“天然のマスク”なのだ。

「一方、口で呼吸するというのは体にウイルスや細菌が入り込み、感染症をはじめとするあらゆる病気に対して無防備な状態です。高齢になれば体の防御反応や免疫機構は衰えますから、お年寄りほどこうしたリスクが上昇すると考えるべきでしょう」(同前)

 口呼吸だとより水分が蒸発してしまうというデメリットもある。加齢に伴ってのどの渇きに鈍感になり、脱水症状に陥りやすい。こまめな水分補給も心がける必要が出てくる。

 口呼吸が習慣になると、口を閉じる、すぼめるといった動作に使う筋肉が弱くなってしまう恐れもあると照山氏は指摘する。

マスクは顔の半分を覆うため、どうしても無表情になりがちで、表情筋を動かす機会が少なくなる。特に口のまわりをぐるりと囲む口腔周囲筋が弱まると口がポカンと開いた状態になりやすい。すると皮膚にたるみが生じ、ほうれい線なども目立ちます」

 ほうれい線がくっきりしてきてしまうのは、特に女性にとって気になる問題だ。照山氏は対策として、自身が考案した「毒出しうがい」を薦める。ここでいう“毒”とは口内の汚れや細菌などを指しており、うがいによって口を洗浄しながら口腔周囲筋の“筋トレ”効果を狙ったものだ。

「少量の水(おちょこ一杯=30㏄程度)を口に含み、グチュグチュと音を立てて強く速く10回ゆすぎます。これができるようになったら、上下左右の歯にぶつけるように方向を変え、それぞれ10回ずつ、計40回やってみましょう。速くゆすがないと口のまわりの筋肉を鍛えられません。口の隅々まで水を還流させる意識をもつのがポイントです」

照山氏

肌荒れ、耳切れ対策も

 他にも「あっぷっぷ」と言いながら頬を膨らますなどの体操も表情筋を鍛え、顔のたるみの予防になる。

 山西医師もアドバイスする。

「1回あたり1分くらい、笑顔を作って笑い声を実際に発声すると口まわりの筋肉を刺激します。また、お風呂に入りながら好きな曲を1曲歌ってください。浴室は湿度もあってのどにも優しい環境です」

 マスクによる肌荒れも気になる。山王病院皮膚科部長の佐藤佐由里医師が語る。

「マスクの下で化粧品などの脂分が蒸れ、毛穴がつまりやすくなると、あごの辺りに『マスクにきび』ができる。男性より女性に多いですね。対策としては、油性クリームや美容オイルなどは極力使わず、使っても少量にしておくこと」

 人によっては、耳が痛くなる「耳切れ」も生じる。

「女性が使うバレッタ(髪留め)のような器具が百円ショップなどで買えます。耳に引っ掛けず、これを使って頭の後ろで留めると良いでしょう」(同前)

佐藤氏

 最後にマスク選びだ。もちろん自分の顔のサイズに合っていて、ひもの部分が太くなっているなど負担を感じにくく、かつ顔に密着するものを選びたい。加えて機能面でのアドバイスを公立陶生病院感染症内科部長の武藤義和医師が語る。

「医療現場では米国の医療基準を満たしたマスクを使っています。コロナで有名になったN95など高度な性能のものです。日本でも今年6月、厚労省と経産省がJIS基準を整備しました。多くのメーカーが基準に対応したマスクをつくっていくと思いますので、今後はJISマークがあるマスクを選べばよいということです」

武藤氏

 まだまだ続くマスク生活。しっかり対策を打ち、上手に付き合っていきたい。

 

source : 週刊文春 2021年12月2日号

文春リークス
閉じる