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眞子さん、小室さん「無自覚の壁」|養老孟司

小室さん、眞子さん「私はこう考える」拡大版

養老 孟司
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 2003年に出版した『バカの壁』は今も売れ続け、先ごろ450万部を突破。12月に「壁」シリーズ最新作を刊行予定の解剖学者・養老孟司氏(84)。氏が“小室狂騒曲”から感じ取ったものは――。

 小室圭さんと眞子さんの結婚について、僕はこれまで、ほとんど関心を持ちませんでした。人さまの家の事情に他人が干渉するもんじゃないし、ましてや、一般庶民が皇室のことに口出しをすべきではない、という感覚です。僕が子供の頃、天皇陛下は神様でしたからね。

 2人のことが盛んに報道されていたのは知っていますが、「よくここまで続くものだなあ」と、呆れていたくらいです。そんな環境が嫌でアメリカに渡ったのでしょうけれども。

会見の19日後、2人は米国へ旅立った

 ひとつ素朴な心配事として思うのは、新生活のセキュリティ面です。皇籍を離れても、将来の天皇の姉である眞子さんは、決して一般の人ではありません。

 海外では何が起きてもおかしくない。誘拐されたり、犯罪に巻き込まれたりするリスクから、どうやって身を守るのか。警備をつけるなら、その費用は誰が負担するのか。

 自分たちの力で生きていくといっても、何かが起きた時、誰かが責を背負わなければいけない。ご当人たちにその自覚がどこまであるのか、気になりますね。無自覚だからこそ大胆な選択ができたのかもしれませんが……。

 これは2人の問題というより、現代に定着した「個人の尊重」という考え方が、皇室の実情と合わなくなってきたと考えるしかありません。

 今後の皇室の在り方については、思うところがあります。特に後継者問題。皇位の継承資格者が減っていますが、これは政治家や国民が、皇室の将来を真剣に考えてこなかった、これも一種の無自覚の結果だと思うんです。

 戦後、宮家が皇籍を離脱し、華族制度も廃止。皇室の存続を支える体制が縮小したのですから、いずれ後継者問題に行き当たるのは、分かっていたはずなんですよね。それでも、どうにかなるだろう、問題が起きればその時に考えればいいと、課題をずっと先送りにしてきたわけです。

 日本はおかしな国で、自国が今どういう状態かを考えるのが、あまり得意ではないようです。たとえば、皆、経済成長を望んでいるはずなのに、意図せず事実上の「脱成長」(格差や環境破壊を生む経済活動を見直そうとする概念)状態になっている不思議。コロナにしても、なぜ急激に感染者が減ったのか、誰も説明できない。なのに問題は意識化されず無自覚のまま、世の中が回っていく。

 皇室の問題についても同様です。しかし、今回の出来事を奇貨として、天皇制がどうあるべきか、しっかり向き合わなければいけない時期がきていると思います。

source : 週刊文春 2021年12月2日号

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