編集長になって楽になったことがあります。それは、プラン提出のノルマがないこと。「週刊文春」では、記者は毎週5本、デスクは10本のプランを出さなければいけません。記者は、毎週木曜日の11時から編集部で行われるプラン会議に出席して、デスク以下、班員の前で自分のプランを説明する。これがしんどいのです。

 記者の頃、木曜日が近づいてくると憂鬱でした。月曜日ぐらいから「手持ちのプランが何本あるかな」と不安がよぎり始めます。手持ちがない中、火曜日の夜、水曜日にアポが入っていないと焦りが……。プランをもらえるのでは、と期待して会った人から、何も引き出せないと、「何だよっ」と心の中で逆ギレする始末。

 水曜日のニュース、木曜日の朝刊を目を皿のようにしてネタを探します。この時点で、もう独自ネタではありませんので、ほぼ詰んでいます。私の一工夫としては、自宅で毎日新聞を購読していました。朝日新聞や読売新聞はデスクが読んでいる可能性が高いので「それ、朝日に書いてあったな」と突っ込まれかねないからです。

 そして、プラン会議で、何とか5本のプランをみんなの前で発表する。デスクのリアクションでだいたいわかります。デスクは、その後のデスク会議で発表するため、ノートに班員のプランを書きとめていますが、しょぼいプランは、途中でメモの手が止まっています。一方、「それは文書あるの?」などと突っ込みが入ってくると、プランが通る可能性がある。

「プラン会議あるある」としては、「苦し紛れの5本目が自分の首を絞める」。プランがないので、最後の5本目として、ちょっと聞きかじった話を少し盛って話してしまった結果、通ってしまう。取材を進めると速攻、ガセとわかって「すいませんでした」。あんまり、これをやっているとデスクからの信頼を失い、いいネタの時も通らなくなってしまいます。

 プラン会議は緊張感が漂います。勉強のためにと特派の先輩のプランをメモしていた新人が「メモとるな」と怒られる場面は何度か見ました。特派の記者にとっては、プラン会議はプレゼンの場でもあり、プランが通って記事を書ければ、原稿料が入ります。一方であまり詳しく話すとネタ元がわかってしまう危険性もある。「保秘」(秘密保持)は最初に叩き込まれますが、先輩から見れば若手の行動に不安を覚えてしまうのです。

 他にも、先輩のプランを聞いても、何を言っているかわからない。これは「新人あるある」。出てくる固有名詞、人の名前や団体・会社の名前が何のことかわからないので、話に全くついていけないのです。

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source : 週刊文春