「すごいすご〜い!」
3月19日の午後11時半、東京郊外の閑散としたジムに嬌声が響く。息を止め両手のダンベルを上げ下げする筋肉隆々の男。その躍動する広背筋を、ウェア姿の美女が優しくさする。男は人気お笑いコンビ・天竺鼠の瀬下(せした)豊(42)である。
天竺鼠は瀬下と川原克己(42)からなる、東京吉本に所属する漫才コンビだ。

二人は地元、鹿児島県でライバル高校の野球部員同士として出会った。卒業後に就職した大阪で再会しコンビを組み、2003年、大阪NSCに入学。天才肌の川原が繰り出す狂気に満ちたボケを武器に、主に劇場で躍進してきた。
「NSC時代は同居しながら早朝は市場でバイト、昼はネタ見せ、夜は打ち上げ。芸人仲間が入り浸る部屋は“天竺ハウス”と呼ばれ、芸人らしい青春時代を謳歌していた」(お笑いライター)
14年に関西の頂点であるABCお笑いグランプリを受賞後、16年に東京進出。キングオブコントでは3回決勝進出。M-1グランプリでは8回、準決勝まで進んだ。

ファッションブランドや絵の個展も手がけ、同期一の天才と評される川原に対し、東京のテレビスタッフからは「どんな人かわからない」と言われるほど注目されなかった瀬下。だが元々、地元では伝説になるほど喧嘩が強かったヤンキー気質だという。
「後輩の面倒見がよく、懐事情が厳しいときも後輩との飲み代は全部払っていた。先輩の顔もしっかり立て、特に千鳥の大悟のことは“兄貴”と慕う関係にある」(瀬下の知人)
転機は20年に訪れた。9月に「アメトーーク!」(テレ朝系)の「東京って難しい芸人」に出演したのだ。
同期のかまいたちが「瀬下は根性で乗り切るロケやらせたらめっちゃ面白い。瀬下にチャンスをあげて」とスタッフにお願い。瀬下は急遽用意された激辛ラーメンを頬張ると「パパ、パワー! 絶対チャーンス!」と悶絶絶叫しながら完食。涙と涎にまみれた顔で「ごちそうさませしたー! お仕事お待ちしております!」と深く一礼したのだった。
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source : 週刊文春 2022年3月31日号