「無駄なキャラクターは一人もいない。見事に伏線を回収し切っています」
吉右衛門を演じた堀部圭亮がそう語るのは、脚本家・藤本有紀氏(54)が描く怒濤の伏線回収劇だ。
藤本氏は兵庫県出身。コメディの台本や劇団の脚本を執筆後、99年に「鬼の棲家」(フジ系)で脚本家デビューした。以降、朝ドラ「ちりとてちん」(07年)、大河「平清盛」(12年)などNHKの作品を多く手掛け、「ちかえもん」(16年)で向田邦子賞を受賞している。
NHK関係者が明かす。
「朝ドラは、放送期間中に出演者やスタッフに加え、脚本家のインタビューがメディアに載ることも多い。ところが藤本さんは執筆に集中するため、NHKの取材ですら断ったそうです。ただ、今回のNHKラジオ英語講座は、彼女がかねてから温めてきた題材でした」

そんな藤本氏の脚本は何が凄いのか。吉右衛門の妻・初美役の宮嶋麻衣は、「ちりとてちん」に続く藤本朝ドラへの出演だ。宮嶋が言う。
「るい編の序盤は深津さんが心の声を出すシーンが多かったので、『心の声すごく面白いですね』と声をかけたんです。そしたら深津さんは、『ちりとてちん』をご覧になっていたようで『ちりとてちんでも多かったですよね』と。言われてみれば、そうかもしれません」
その宮嶋に脚本で印象に残るシーンを尋ねると、
「1つ挙げるのは難しいのですが、錠一郎さんと吉右衛門さんが『あかにし』の前でチャンバラして戦うシーン(61話)がありました。そこに、黍之丞シリーズの映画のシーンと、るいが回転焼きを初めて親友の一子に食べてもらうシーンが交差するんです。全く別の空間で起こっていることなのに、同じ時間が流れているように見せる。その描き方が凄いと思いました」

一方、「平清盛」に続く出演となった堀部。「一度だけ藤本さんとお会いしたことがある」という。
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source : 週刊文春 2022年4月14日号