アニー・ヒラカワを演じた森山良子(74)。実は父・森山久はトランぺッターで、“サッチモ”ことルイ・アームストロングとも親交を深めた日本ジャズ界の草分け的存在だ。長男・直太朗も主題歌「アルデバラン」の作詞作曲を担当している。
(もりやまりょうこ 1948年1月18日生まれ。代表曲に『禁じられた恋』『涙そうそう』『さとうきび畑』等がある)
「良子は父の目の中に入れられている」と言われるほど、私は父から可愛がられていました。毎日手を繋いであちこちで遊んで。音楽家の先輩方にお聞きすると、「譜面が汚い」と怒るなど少し厳しい面もあったようですが……(笑)。私には「愛してるよ」と温かく優しい面ばかりを与えてくれました。そんな父が大好きだったサッチモは、私にとっても特別な人です。
結果的に、私とこの作品とはさまざまな点が結びついていますが、どれも最初から誰かが意図したことではありませんでした。これこそがご縁なのでしょう。
演技のことはあまりよく分かりません。今回も本当にずっと緊張しながら、アクセントのこと、イントネーションのこと……頭の中はずっとセリフが駆け巡っていました。ただ、言葉を私なりに解釈して、自分自身の思いを表現するというのは、歌を歌うことと同じような感覚でもありました。
アニーはつらい過去を持ちながら生き抜いてきた人物。どのように演じたらいいかという指示はあまりなかったような気がしますが、とても素晴らしいストーリーに私の思いがこみ上げてきて、「もうちょっと感情を抑えましょう」と言われたことがありました。
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source : 週刊文春 2022年4月14日号