〈テレビという灯りを消す時、それが「テレビ消灯時間」。暗くなった部屋でつくため息の理由、それがこのコーナーの主旨なのです〉(93/10/21)。名作が蘇る。
この年末年始のSMAPはすごいな。異常なほどの特番ぶりである。ここ数年、SMAPは人気者であり続けているわけだけれど、テレビ出演ということに関しては質量ともに(質、というのは番組のクオリティということではなくて、扱いみたいな意味)今年は飛び抜けている。何で今年(2000年〜2001年の年末年始)なのかな。この年末年始がグラフの曲線の頂点とは思えないが。ま、見せる側と見せられる側にはいつだってズレがあるものだけど。これだけ出れば、結局「こんなにSMAPが出た年末年始」という状況しか表さないような気がする。個々の番組がどうだったかという部分には意味がないのかもしれない。
しかしなあ、ヤバいんじゃないのか。そのヤバさは12月24日の特番「SMAPシークレットX’masパーティー」に端的に表れていたと思う。「SMAPならどんなことをやってももつ」という自負(本人達というよりも、企画制作側としての自負)の極みによってこの「シークレットパーティー」という番組は作られた。生放送で、見た限りは詳細な進行なども「敢えて」なし。「SMAPさえいれば」というところに確信がなければできない番組だ。さて「SMAPがいればもつ」という「SMAPの万能」は、はたして現実に存在するのか。この問題を、ちゃんと考えなければいけない時がきているのである。番組の中で宅配のピザを頼むことになった時の木村拓哉。「この木村拓哉が、SMAPがピザを頼むんだゼ」ということが面白くて仕方ないのである。配達の人の意外に薄い反応にも不満顔だった。これは「無自覚な本人」と「過剰に驚く一般人」というコントラストでこそ成立するのに。
ある時期木村拓哉は「権力」であった。ひれ伏すのが一番楽である、認めてうっとりするのが利口である、ってこれは権力でしょう。しかし、状況は変わるもんだね。今までひれ伏していた人たちがそそくさと立ち上がってどっか行っちゃう風景すら見える。まあ、前の方っていうか真ん中の方には、かたくなにひれ伏してる人たちがいるけどね。で、そのかたくなな人たちの中にテレビ作ってる人とかがたくさんいるような気もする。
木村拓哉には「かっこ悪いことをする木村拓哉がかっこいい」というタームが成立している時期が確かにあった。しかし今、かつては一滴の水も漏らさなかったその手から、木村拓哉はかっこ悪さをだらだらとこぼしている。何で液体か? もうびしょびしょ。もう何の問題もない「できちゃった婚」なのに、木村拓哉の場合何故あんなにかっこ悪かったんだろう。もう「無いこと」としようとなっていたできちゃった婚の「失敗」という側面が何故か露わになったせいである。工藤静香、最後のディナーショーで「らいおんハート」熱唱、って。木村拓哉に成り代わって赤面する。かつて「ごっつええ感じ」で松本・浜田がやっていた「おかんとマーくん」のマーくんになったような気持ち(泣きたいほどやめてくれや)、とも言っておこうか。やっぱり、この話は工藤静香の物語なのである。どこでも主役を張ってきた木村拓哉だが、ここではヒロインの相手役。工藤静香物語の登場人物になるための、書き換えが行われている。いや、その書き換えはSMAPにも及ぶのかもしれない。
あと「笑点」で座布団運びの山田隆夫(子だくさんが売り)が「木村拓哉さんがお父さんになるそうです。木村さんを日本子づくり協会の副会長に任命します。会長のヤマタカです」とあいさつし、会場のお年寄りから拍手喝采をうけていた。木村拓哉、消費のされ方も変わってきてるな。
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source : 週刊文春 2022年5月5・12日号