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菅首相長男 高級官僚を違法接待

「週刊文春」編集部
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手土産とタクシー券を渡す菅正剛氏(左)
手土産とタクシー券を渡す菅正剛氏(左)

菅首相が頭を痛める長男。バンドに熱を上げる息子を総務大臣秘書官に就けた後、後援者企業に入社させた。そこで長男は、父が強い影響力を持つ総務省との窓口に。放送事業の許認可権を持つ総務省の高級官僚4名は、それぞれ夜の呼び出しに応じ……。

 江戸の面影を色濃く残す日本橋人形町。冷たい秋雨が降りしきる昨年10月7日の夕方6時50分、数寄屋造りの料亭に黒塗りの高級車が横付けされた。後部座席から姿を現したスーツ姿の“主賓”は女将に案内され、玄関の敷石を跨ぐ。創業100年を優に超す格式を感じさせる店内を進むと、生花で彩られた個室で彼を出迎えたのは、4人の男たちだった。コロナ禍のさなか、彼らは約2時間40分にわたり、雨に霞む日本庭園を眺めながら旬の素材を惜しげもなく使った懐石料理に舌鼓を打った。

“主賓”の名は谷脇康彦氏。「次の事務次官」の呼び声高い総務省のナンバー2、総務審議官の要職にある。

総務省の谷脇氏
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「菅首相肝煎りの『携帯料金の4割減』の旗振り役でもあり、今夏の人事での次官昇格が確実視されています」(総務省関係者)

 谷脇氏は当日の様子をブログ「タニワキ日記」にこう記している。

〈夜、滅多に行かない人形町にて知人と会食〉

 だが、谷脇氏を接待したのは「知人」という軽い響きとは対極にある大物の子息。その3週間前に首相に就任したばかりの菅義偉氏(72)の長男で、衛星放送などを運営する東北新社社員の菅正剛氏だ。肩にかかる長髪に、おしゃれな髭と眼鏡はおよそサラリーマンらしくない。だが正剛氏は現在、メディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長という肩書を持つ。1人4万円は下らない高級料亭で谷脇氏を接待したのは正剛氏の他、同社の二宮清隆社長、子会社である株式会社ザ・シネマの三上義之社長らだった。

 夜9時30分頃、手土産を渡された谷脇氏は「迎車」のランプの灯るタクシーに乗り込み、千鳥足で帰路についた。

料亭を出る谷脇氏

 東北新社関係者が明かす。

「正剛氏は、社内では総務省担当として知られています。彼は表向き、動画配信やイベント、WEBメディアから物販まで、コミュニティのファンへのサービスを企画運営する部署の責任者です。でも実際は、総務省幹部らの接待要員として重宝されています。東北新社の衛星放送チャンネルは、総務省から認定を受けた上で事業運営しているため、総務省との関係は最重要視されるのです」

 グループ売上650億円のうち、衛星放送事業による売上は150億円。まさに中核を成す事業だ。

「東北新社は正剛氏を、総務省にアピールする切り札として活用してきました。総務大臣を務めた菅氏のブランド力は抜群で、『東北新社には菅ジュニアがいる』とアピールすることで、放送法や放送認定に関する情報収集がスムーズになるのです」(同前)

“首相の長男”はどのような人物なのか。

「キマグレン」とバンドを組んで

 横浜で生まれた正剛氏は、逗子開成高校を99年3月に卒業。明治学院大に進む傍ら、ミュージシャンを目指した。NHK紅白歌合戦にも出場(08年)した逗子出身の音楽ユニット「キマグレン」のメンバーとバンドを組んでいたこともある。転機が訪れたのは25歳の頃。06年9月に第一次安倍政権が発足すると、総務大臣として初入閣した菅氏が、正剛氏を大臣秘書官に抜擢したのだ。

2006年に総務大臣に

 しかし――。

 菅事務所関係者が正剛氏の仕事ぶりを回顧する。

「政務担当の大臣秘書官でしたが、政策的なことはわからず、書類はすべて、複数いた別の大臣秘書官らが捌いていました。国会事務所に顔を出すのは週2〜3回。菅さんは彼を依怙贔屓しており、毎週土曜朝8時の定例ミーティングの出席も免除していた」

 バンドマンからの突然の転身ゆえ当然だろうが、政治の素人を税金で雇っていたことになる。世襲政治を批判する菅氏らしからぬ縁故採用だが、その理由を本人は率直にこう語っている。

〈うちは第1秘書、第2秘書を選挙に出したんです。(だから)人がいなかったの〉〈バンドの人が体を壊して辞めて。(長男は)またプラプラしていたから〉(『週刊プレイボーイ』09年6月22日号)。

 一方で、菅氏が能力を高く買い、信頼していたのは、当時東大生だった次男だ。

「議員会館で大臣スピーチを読んで聞かせ、次男からコメントをもらったりしていた。元財務事務次官の故・香川俊介さんは、『ぜひご次男をうちに』とリクルートしていましたが、大学卒業後は大手総合商社に就職しました」(別の事務所関係者)

 菅氏の三男は法政大学の強豪アメフト部に入部し、卒業後は大手ゼネコンに就職。文武両道を絵に描いたような次男、三男と比較し、菅氏が頭を悩ませていたのが自由奔放な長男だった。

「08年、オヤジさんは当時20代後半になっていた正剛の将来を案じて実業家に鞄持ちとして預けたのです」(正剛氏の知人)

 その実業家こそ東北新社の創業者・植村伴次郎氏だ。

「菅氏と同じ秋田出身の縁で後援者となった植村氏は、正剛を孫のように可愛がっていました」(同前)

 正剛氏の入社後、菅氏への支援も行っている。植村伴次郎氏は2年前に、長男の徹氏は昨年に亡くなっているが、その前の8年間で菅氏が代表の自民党神奈川県第二選挙区支部に父子で計500万円の献金をしていることが確認できた。

「チケットの利用は慣れていた」

 正剛氏は植村家の鞄持ちの傍ら、入社時から映画専門「スターチャンネル」など衛星放送事業に関わる総務省の窓口を担当していたという。同チャンネルが総務省からBSデジタル放送の委託業務の認定を受けたのは、菅氏が総務副大臣だった05年12月のことだ。

 さらに12年2月、総務省は衛星基幹放送の業務に関し、東北新社が運営する「囲碁・将棋チャンネル」を認定。17年には、高精細の4Kの実用放送に関し、子会社である東北新社メディアサービスを衛星基幹放送事業者に認定している。まさに東北新社のビジネスは総務省の許認可で飛躍を遂げてきたのだ。

 正剛氏がメディア事業部趣味・エンタメコミュニティ統括部長に就任したのは、昨年5月。東北新社社員は正剛氏をこう評する。

「同期社員や若手社員からは“社内調整くん”と呼ばれています。とにかく社内の調整が大好きで“菅派”を形成。若手や新入社員を集め、飲み会や1泊合宿を企画したりしていますが、コロナ禍で開催されなくなり、社内では安堵感が広がっています。もっとも、上層部から期待されている彼の“特命任務”は、総務省幹部とのパイプ役。政府は今、私的な飲み会も自粛するよう求めていますが、そんな中、総務省幹部らを接待していることに社員は強い違和感を抱いています」

 前出の東北新社関係者が言葉を続ける。

「たしかに、総務省への接待は谷脇氏の1件だけではありません。上層部は正剛氏を総務省の中でも、衛星放送の許認可に直結する情報流通行政局の幹部らへのカードにしてきたのです」

 折しも昨年12月は、05年末に認定された「スターチャンネル」の、放送法で定められた5年に1度の更新の時期。また今後も東北新社が注力する4K放送に関する認定の更新などは随時控えている。小誌はその12月に、重要な意味を持つ接待現場を、幾度も目撃することになった。

 昨年12月8日夜、正剛氏らが予約した六本木の小料理屋に姿を現したのは、総務審議官の吉田眞人氏。カウンターで正剛氏らと酒席を共にした吉田氏は、約2時間後、正剛氏から高級生食パン「乃が美」の手土産と、黄色のタクシーチケット「東京四社タクシー乗車伝票」を手渡されると、そのままタクシーに乗り込み自宅に帰った。吉田氏が利用したタクシー運転手はこう証言する。

「たしかに、さっきのお客さん(吉田氏)はタクシーチケットを使用しました。高速代を含め、金額は5400円。チケットの利用は慣れている様子でした」

 大阪府出身の吉田氏は京大法学部を卒業後、85年に旧郵政省に入省。実は菅首相との縁が極めて深い。別の総務省関係者が明かす。

総務省の吉田氏

「07年2月、総務省に激震が走った。NHK改革などを盛り込んだ放送法改正案を担当する放送政策課の南俊行課長が突然更迭されたんです。菅氏は自著『政治家の覚悟』でも、NHK改革に後ろ向きの発言を新聞社との懇談の場でしたのが許せないから飛ばした、と自慢げに書いています。その後任に抜擢されたのが吉田氏でした。一番下の課長級から一気に一番重い課長ポストに昇格して省内で話題になりました」

 菅流人事の「飴とムチ」の飴代表が吉田氏なのだ。

 その後、吉田氏は情報流通行政局放送政策課長、同局総務課長などを歴任。放送部門の枢要ポストを歩み“放送のプロ”を自任。19年に情報流通行政局長に就任し20年から国際担当の総務審議官を務めている。

 幹部への接待はさらに続けざまに行われ、相手は東北新社の業務の核心に、より近づいていった。

 吉田氏への接待から2日後の12月10日、正剛氏と東北新社メディアサービスの木田由紀夫社長が前回と同じ六本木の小料理屋に招いたのは、衛星放送の許認可を一手に握る情報流通行政局のトップ、秋本芳徳局長だった。カウンターには「木田」と書かれたボトルキーパーがぶら下がった白州。追加で白ワインのボトルを注文した3人はカウンターに座り、顔を寄せ合った。

 正剛氏は菅首相の故郷である秋田の話題に触れ、秋本氏に「今度ササニシキ送ります。桐箱に入ったさくらんぼも、いつか送りますよ」などと話していた。

 夜8時過ぎ、木田氏は秋本氏にベルギー王室御用達の高級チョコ「レオニダス」を渡し、正剛氏は酩酊状態の秋本氏を店外に案内すると、平身低頭でタクシーチケットを握らせた。封筒を開け、黄色いチケットを確認すると笑みを浮かべる秋本氏。その後、新宿区の公務員宿舎までタクシーを走らせた。一方、店内に残った木田氏は支払いをゴールドカードで済ませ、「東北新社」で領収書を受け取った。

秋本局長を頭を下げて見送る正剛氏

“アゴ・アシ・手土産付き”接待を受けた3人目、秋本氏はどんな人物なのか。

「私大を卒業後、東大に入り直して88年に旧郵政省に入省した変わり種です。竹中平蔵総務大臣秘書官や、放送政策課長なども経験している」(総務官僚)

総務省の秋本氏

 竹中総務大臣といえば、右腕の副大臣に菅氏を据え「私は霞が関に来て日も浅いので、人事は菅さんに任せる」と公言してはばからなかった。そのチーム竹中&菅の一員が秋本氏なのだ。

 4人目の接待相手は、秋本氏の部下、情報流通行政局官房審議官の湯本博信氏だ。12月14日。湯本氏は、客単価1万円を超える南麻布の鮨店のカウンターで会食後、正剛氏から黄色いタクシーチケットを手渡された。だが、湯本氏はタクシーに乗らず、電車を乗り継いで帰宅。その手には、当日夕方に木田氏が天現寺カフェで購入した手土産の紙袋が握られていた。

総務省の湯本氏

 90年に旧郵政省に入省した湯本氏について前出の総務省関係者が語る。

「消費者団体への対応など面倒な仕事を捌いてきた実力派。ここ数年は、NHKの敬遠する経理透明化などを盛り込んだ放送法改正をリードしてきた。17年には情報流通行政局放送政策課長、19年には同局総務課長を歴任し、衛星放送にも明るい」

 昨年10月以降、小誌が確認できただけでも計4回にわたり催された、総務省幹部に対する豪華接待に問題はないのか。公務員倫理に詳しい国際基督教大学の西尾隆特任教授が解説する。

「公務員が利害関係者と会食し、奢ってもらった場合、国家公務員倫理法に基づく国家公務員倫理規程第3条6が定める禁止行為『供応接待を受けること』にあたり、違法行為に該当します。利害関係者については、同規程第2条で定められており、省庁から許認可を受けている業者であれば、これにあたります」

 タクシーチケットや手土産を受け取った場合、同規定第3条1が定める「利害関係者から金銭、物品又は不動産の贈与を受けること」に該当し、同じく違法行為とみなされるという。

「タクシーチケットは有価証券なので金銭、物品に該当し、規程上、懲戒を受ける可能性があります。仮に賄賂性があれば刑法上の問題になりますが、それとは別に公務員には厳しい規律が求められているという考え方で作られたのが国家公務員倫理法です。特定業者に対して規制、契約、許認可等をする際には『なぜそこを選んだか』というプロセスの透明性と公平性が担保されなければなりません。倫理法の1条には『国民の疑惑や不信を招くような行為の防止』が掲げられており、公正で中立的な判断が歪められるのを防ぐことが同法の趣旨です」(同前)

 最初は「情報交換を兼ねて軽く一杯」だった業者と高級官僚の接待が、徐々に金額が膨れ上がり、お願い事(請託)もついてきて刑事事件化する例は枚挙に暇がない。18年に発覚した文科省汚職事件では、局長級の幹部が次々に逮捕され、事務次官(当時)の戸谷一夫氏ら4人が処分された。

 総務省も例外ではない。05年、郵政行政局長が利害関係者であるNTTコミュニケーションズの幹部からタクシーチケットをもらったとして国家公務員倫理法違反で処分されている。

 競合するWOWOWの関係者が、東北新社の姿勢に疑問を呈する。

「新しいサービスを始めるときに総務省の認定が必要になるため、弊社にも総務省窓口の部署がありますが、官僚を接待することは絶対にない。あくまで申請のやり取りを交わすだけ。同じ社員がずっと総務省担当ということもなくズブズブになることはあり得ません」

 では、許認可先からの接待の危険性を知りながら、なぜ総務省の幹部らは正剛氏の呼び出しに応じ、夜ごと違法な接待を受けたのか。

「彼らが正剛氏の背後に父親の影を見るからですよ。総務副大臣、総務大臣を歴任した菅氏が、時の総務大臣以上に省の人事を掌握しているのは有名な話。東北新社の二宮社長以下経営陣は、それを分かった上で息子に違法接待を行わせているのだから、経営責任を問われても、正直仕方がないと思います」(前出・東北新社関係者)

 元総務官僚が吐き捨てるように言う。

「総務省の官僚人事は、菅氏が官房長官時代から、杉田和博官房副長官が菅氏に相談した上で、『こいつは駄目だ』と事務次官に告げるという流れで行われていた。そうやって菅氏は他省以上に強い影響力を総務省に行使している。菅氏の“天領”ですよ」

 意に沿わない官僚は切り捨てられる一方で、菅氏の寵愛を受ければ、確実に出世できる。その代表格が冒頭の谷脇氏だ。84年に旧郵政省に入省し、第一次安倍政権で菅氏が総務大臣を務めた際は、総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課長の任にあった。

「当時、谷脇氏は『モバイルビジネス研究会』を立ち上げ、数々の競争政策を立案。大手3社の増長に歯止めをかけたのです。谷脇氏はドコモなどの事業者としっかり議論をしていたし、審議会とは別に裏でも業者と侃々諤々の議論を重ねていた。その様子をじっと見ていたのが当時大臣だった菅氏です」(経済ジャーナリスト)

 首相になった菅氏が打ち出した看板政策「携帯値下げ」の最重要キーマンが谷脇氏だ。同氏は情報通信国際戦略局長などを経て、18年7月、総合通信基盤局長に栄転。菅氏は同年8月、携帯電話料金について「4割程度下げる余地はある。競争が働いていないと言わざるを得ない」と発言したが、菅首相と次期事務次官のタッグで目下事態は急速に進展している。

 さて、当事者たちは何と答えるのか。1月31日、谷脇氏を直撃した。

――昨年10月7日に菅正剛さんとお食事をされていた。

「覚えてないです」

――菅正剛さんはご存知?

「ええ。知ってます、知ってます。何度か会ったかもしれません」

――そのうちの1回が昨年10月7日か?

「まったく覚えてない」

 だが、次の質問の直後、谷脇氏は目つきを尖らせた。

――この時のお支払いは?

「すいません、もう」

――タクシー券をもらっていませんか?

「広報を通してください」

 そう短く言うと、自宅のドアを勢い良く閉めた。

 吉田氏は家人を通じて自宅での取材を拒否。

 秋本氏は困惑した様子でこう話した。

「(正剛氏は)たしか大臣秘書官の頃から知っていて、同窓会みたいな感じだと思っていたんです。毎回ご馳走になっているわけではない。むしろ割り勘が多い」

――タクシー券を使った?

「そうだったかもしれないですね。うーん、記憶にないですね」

 湯本氏は自宅で30分にわたって取材に対応した。

――昨年12月、東北新社の2人と会食をした?

「ちょっと話をしたという感じです。もともと(正剛氏は)大臣秘書官をやられていましたからね。私が(総合通信)基盤局の(電気通信事業部)事業政策課にいた頃、大臣室に何回も行っていたから」

――当日の支払いは?

「私のほうも払って。1時間もいなかったかな。5000円か、1万くらい払ったかな、ちょっと覚えてないですけども。ビール1杯ちょっと、鮨3〜4貫くらいしか食べてないと思う」

 小誌が確認した会食時間は2時間以上だったが、話題は「ほとんど世間話。芸能界とかそういう話をするくらいで。たぶん仕事の話はしていない」と強調する。

――利害関係者では?

「たしかにそうかもしれないですね」

 国家公務員倫理規程第8条には、利害関係者との会食は割り勘でも「自己の飲食に要する費用が1万円を超えるときは(略)倫理監督官に届け出なければならない」とある。

――倫理監督官に届出は提出した?

「してない。しておくべきだったかもしれないです」

――タクシー券は?

「もらっていなかったような、ちょっとわからないですけど。でも使ってないですよ、たぶん。返したと思うんですけど。そのあと電車で出たのは間違いない」

――お土産は?

「お土産も返したと思うんですよね。1回もらって、その場でなんか、時間差で返したような気がするんですけどね。追っかけて、手荷物になるからって……」

総務省の湯本氏にもタクシー券を手渡す正剛氏(右)

 最後に湯本氏は後悔の色を浮かべ、こう語った。

「言われてみると、確かに東北新社もうちの事業者であることは間違いないわけだし。日頃から、業務の許認可とかでうちに出入りしている方であれば、当然、業務上の利害関係者ってわかる。でも、たぶん(正剛氏は)そういう許認可の業務をやっていない。東北新社の懸案はないと思いますし。(利害関係者だと)思いが至らなかった」

 一方の、正剛氏はどうか。横浜みなとみらいに聳え立つ27階建ての億ションから休日にふらりと姿を現すと、目の前の浜辺に座り、タバコをくわえる。接待の前後も店外で頻繁に紫煙を燻らすヘビースモーカーだった。記者が声をかけると、目を見開いた。

「本日、届出を行った」

――去年10月以降、総務省の官僚4人を接待した?

「プライベートなんで」

――谷脇さんらと会食を?

「すみません、プライベートで……」

 そう話すと急に立ち上がり、自宅マンションのエントランスに歩みを早めた。

 二宮社長も直撃したが、無言を貫くのみ。子会社ザ・シネマの三上社長は次のように釈明した。

――昨年10月7日に谷脇さんを接待していた?

「そこは気を付けていますよね。費用をこちらが全部出すとかはないと思います。割り勘と記憶してますね」

――タクシー券を渡した?

「それはその場にはいなかったですね。(谷脇氏とは)凄い久しぶりだったんですよ。付き合いというか、われわれ東北新社は放送事業をやってますからね。そういうところの関係性はもちろんあります。谷脇さんって通信、5Gの方ですよね。そういうところは僕らが教えてもらうほう。情報交換ですかね」

――菅さんは総務省担当?

「彼も昔、総務省にいましたからね。昔からよく知っている人もいるんで。総理の息子だからどうこうとかないので」

――コネ入社で入った?

「うーん……。このへんにしておいてください」

 東北新社は、広報室を通じてこう答えた。

「(正剛氏の入社経緯は)個人情報については回答していない。(接待については)情報交換を目的として弊社社員が総務省の方と会食することはある。その際には公務員倫理規程に配慮しており、株式会社東北新社は利害関係者に当たらないと認識している」

 総務省の認定を受けているのは東北新社ではなく同グループの子会社だといいたいようだ。だが、そもそも正剛氏は総務省から認定を受けている株式会社囲碁将棋チャンネルの取締役も兼務しており、また他の接待同席者にも認定を受けている子会社社長が含まれている。詭弁というほかない。

 一方、総務省に接待について問うと、こう答えた。

「(4人は)先方からの求めに応じてご指摘の会食に至った。飲食代、手土産、タクシーチケットについては費用を負担することとするとともに、届出が必要な者については、本日(2月2日)、届出を行った。(接待の違法性については)事実関係を確認中のため、お答えは差し控えたい。便宜等は一切行っていない。(東北新社グループ以外の衛星基幹放送事業者からの接待については)そのような事実はない」

 つまり、東北新社が届出を要する利害関係者だと認めている。

 4人の幹部のうち複数が「(正剛氏が)総務大臣秘書官だった頃に知り合った」と証言したが、正剛氏を大臣秘書官に抜擢したのも菅氏なら、その後、総務省の許認可先である東北新社への就職を許したのも菅氏だ。そして40歳になるかならぬかの一社員が、次々に総務省幹部を呼び出せるのも、「父の威光」あってこそだ。菅事務所に尋ねた。

「(コネ入社は)事実ではありません。(正剛氏に官僚の紹介や許認可の助言などをしたか?)ご指摘の事実はありません。(接待については)承知していません」

菅首相はどう対応するのか?

 菅氏は、目指す社会像の筆頭に「自助」を掲げ、事あるごとに「既得権益の打破」を謳ってきた。だが自身は、長男を後援者のもとに預け、自分の“天領”が許認可権を持つ会社で政府との窓口役にさせている。それは「自助」とは程遠い、「既得権益者」そのものの振る舞いに他ならない。菅首相は、愛息から違法接待を受けた総務省幹部4人を厳正に処分できるのか。菅首相が常々口にする「国民の当たり前の感覚」が試される。

source : 週刊文春 2021年2月11日号

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