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めまい、不眠、腰痛…あなたの体調不良、原因はコロナです

「週刊文春」編集部
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「最近、不眠の症状を訴える患者が増えています。寝つきが悪い、あるいは夜中に目が覚めてしまうというのです」

 そう語るのは、久留米大学学長で、医学部神経精神医学講座名誉教授の内村直尚氏だ。

内村氏
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 労働者健康安全機構横浜労災病院・勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医師も、相談業務が増え続けていると話す。

山本氏

「当院では『勤労者こころのメール相談』を無料で行っていますが、昨年の5月頃からメール相談が月に1000件を超え、1年間で1万2000件にもなりました」

 特に昨年暮れから今年にかけ、自律神経失調症のような、体の不調を訴える人が増えてきたという。

 自律神経とは、内臓や血管などの働きを制御し、体内の環境を整える神経。昼間や活動時に活発になる交感神経と、夜や安静時に活発になる副交感神経があるが、精神的、身体的ストレスがかかることで、そのバランスが損なわれる。

 結果、「肩が凝りやすい」「食べ物が胃にもたれる」「手足が冷たくなる」「めまいや立ちくらみ」といった症状として現れるのだ。

 腰痛を訴える人も目立つという。都内で働くホームヘルパーの女性(53)は、昨年秋頃から腰痛に悩まされていると語る。

「今まではどんなに忙しくても腰痛なんてなかったのに、今はすごく痛い。整形外科に行っても特に異常はなく、途方に暮れています」

 これらは何なのだろうか。色濃く影を落としているのは、早一年以上経った“withコロナ”の生活だ。

 

コロナへの不安が症状に影響

 長引く外出自粛により、会食や旅行といった心身をリフレッシュする手段が制限され、ストレスが溜まりやすい環境になっている。ステイホームなど生活習慣の変化もあり、体の不調をもたらす。いわば“コロナ不調”である。

 厚労省の調査によると、第1回の緊急事態宣言が発出された昨年4月~5月の時点でも、すでに63.9%の人が「神経過敏に感じた」「落ち着かない」などと回答していた。

 山本医師は、当初は「自分はコロナに感染しないか」などの漠然とした不安が多かったのが、体の不調についての悩みが増えていったと指摘する。

「体調不良に関して、最初から『自律神経の不調』と決めつけないのは大前提。他の疾患の可能性だってあります。しかし、コロナ禍の中、不調を訴える人が増えているのは事実。めまいや立ちくらみはストレス症状として一般的ですが、コロナへの不安により、症状が強く出ている可能性はあります」(同前)

 不眠もその1つ。睡眠は心身を休める上で最も大切だが、十分にとれない人も増えている。内村学長が語る。

寝つきの悪さや、夜中に目が覚めるのは、不安によるところが大きい。『コロナに感染しないか』『自分が感染すると、家族にもうつしてしまうのでは』といったことや、コロナ禍がもたらしている経済状況の変動も原因のひとつでしょう」

 ステイホームといった生活環境の変化も影響する。

「男性はずっと家にいることに慣れていない場合が多い。だから、たとえば夕食で晩酌し、すぐに寝る。そうすると夜中に目が覚め、その後は眠れなくなってしまう。アルコールは寝つきをよくしますが、3~4時間でアルデヒドと呼ばれる覚醒物質に変化する。一旦起きるとなかなか寝付けなくなるのです」(同前)

 女性も不眠に悩まされるケースが多いという。

「特に主婦は、夫が早く帰ってきたり、テレワークでずっと家にいたりして、気の休まる時間がなかなかない。これまではランチなどで友達と愚痴を言い合って解消できていたが、今はままならない。そういったストレスが蓄積し、不眠に陥ると考えられます」(同前)

 不調のなかには一見、ストレスとは関係のなさそうな症状もある。先のホームヘルパーの女性のような腰痛だが、実は腰や背中の痛みもストレスによる症状の場合があるのだ。

「たとえば整形外科でのヘルニアや脊柱管狭窄症の治療が改善したのに、まだ腰が痛いのは、ストレスが原因の場合が多い。ストレスがたまると痛みを感じやすくなる、つまり痛みの閾値が下がるからです。外出自粛やテレワークといった働く環境の変化が、自律神経を乱す原因にもなっていると考えられます。

 一方で、もちろん外出自粛などによる身体的影響もあるでしょう。腰痛などは、体を動かさないと痛みが強くなりますから」(同前)

 緊張したりストレスを感じるとお腹が痛くなる、というのは誰しも経験のあることだが、夜間や休日の時間外救急往診を行う「ファストドクター」の上柳菜摘看護師は、「最近、下痢の症状を訴える方は増えています」と指摘する。

 無論、これらの症状はストレスだけが原因とは限らない。さいとう内科・循環器クリニックの齋藤幹院長は「運動不足がコロナ禍の一番の問題」と指摘する。

「最近は息切れを訴える患者さんも多く、在宅勤務のせいで1日数十歩しか歩いていない人もいます。運動不足による体重増加や、長く同じ姿勢でいるためにむくみが出ることもある」

 これら“コロナ不調”に、どう対処すればいいのだろう。山本医師が言う。

「日常生活に支障が出ている場合、早めにかかりつけ医や専門医に相談したほうがよい。ただ、ストレスがかかることでさまざまな症状が出るのは、むしろ当たり前だと思ってください。それは、いわば体からのサイン。まずは無理をしないで休むことが大切です」

 休むといえば睡眠。眠りが浅いと自律神経の乱れにつながり、様々な症状の原因になる。安眠を得るために心がけるべきは何か。

「プラス1000歩」歩こう

 

「ゲームやスマホなど、ブルーライトを浴びすぎると寝つきが悪くなり、眠りが浅くなる。就寝前の2~3時間、最低でも1時間はスマホは見ないほうがいい。

 あとは、コロナ関連のニュースを見るのは、番組を決め、1日2回までにすることをお勧めします。不安を煽られることが多いからです」(内村学長)

 運動も重要。体をある程度疲れさせれば、眠りにつきやすくもなる。高齢者にとって、体に負荷をかけない運動といえば散歩だが、人の少ない朝の時間帯に、マスクをして歩く分には問題はない。

 とはいえ“歩きすぎ”は足腰への負担を考えると禁物。健康効果は1日8000歩で頭打ちになる、という研究結果がある。目安は1日6000~8000歩程度だ。

「1時間歩くとだいたい5000~6000歩になります。1回の散歩で30分以上歩き、2000~3000歩を目指しましょう。陽の出ている時間帯に散歩し、陽の光を浴びることも大切」(同前)

 コロナ前から散歩の習慣があるなら、普段よりプラス1000歩」歩き、運動量を増やすことを目指すのもよいという。

 また、周囲とコミュニケーションを取ることもストレスを軽減するためには大切。山本医師が説く。

「悩みや不安を抱え込まず、相談、雑談をすることが非常に有益です。今は『こころの相談センター』など多くの相談窓口がありますし、家族や友人に電話したり、オンライン飲み会なども活用してください。

 あと物事をプラスにとらえることが重要。たしかにステイホームは辛いですが『入院したわけではなく、健康に家にいることができる』などと視点を転換し、明るい側面を見るべきです」

 コロナにかからずとも、不調になることはある。そう知れば、それだけで心は軽くなるというものだ。
 

source : 週刊文春 2021年2月25日号

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