「その瞬間からキャンセルの電話が鳴り止まなくて……」コロナ禍が直撃した有名山小屋の今

小堀 隆司
ライフ ライフスタイル

 シーズンが本格化し、いよいよ登山の季節がやってきた。澄んだ空、登り切った達成感――。あの感動を味わうために、さぁ、行こう!(撮影 杉山拓也)

目の前が真っ暗に。そして主は覚悟を決めた|赤岳鉱泉

 苔むす渓流沿いの山道が赤岳鉱泉へのプロムナードだ。八ヶ岳で人気の山小屋だが、四代目の柳沢太貴さん(34)は、不安で目の前が真っ暗になった日のことをよく憶えていた。

「2年前の3月23日、都知事が会見でロックダウンの可能性について触れたんですよ。その瞬間からキャンセルの電話が鳴り止まなくて……。ついに休業を覚悟しました」

赤岳鉱泉、四代目の柳沢太貴さん(34)

 山小屋は人が密集して換気が良くない。そんなイメージが敬遠され、60年の歴史の中で初めての休業に追い込まれた。若き山小屋の主はその日から営業再開に向けて奔走。定員数を減らし、換気扇やパーテーションを設置するなど工夫を重ねてきた。

 

「この2年間でわかったのは、登山は不要不急ではないってこと。世の中が閉鎖的で息苦しくなっているからこそ、開放的な山に来たい人はたくさんいる。昨年末、遭難者がたまたまうちの小屋に駆け込んで一命を取り留めたんですけど、ここはいざという時の避難小屋でもあるから絶対に潰れちゃいけないんです」

 かつてカーレースにのめり込んだ経験から生死の問題については敏感だ。昨年、八ヶ岳初の山岳診療所を小屋内に開設し営業を続けている。

 

赤岳鉱泉
長野県茅野市豊平
☎090-4824-9986

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source : 週刊文春 2022年7月14日号

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