まさかここの読者にまだ滝沢カレンを「おバカキャラ」だと思ってる人なんていませんよね?

 彼女は「生まれも育ちも日本なのに日本語が苦手」などと言われていたこともあります。確かに「全力!脱力タイムズ」では漢字をあまり読めないことがありますが、彼女は状況を擬人化し、物語化し、それを表現するためにセレクトする言葉のセンスがずば抜けてますよね。こんなこと、私が言うまでもなく皆様が指摘されていると思いますが。

 彼女の著書『カレンの台所』では、ロールキャベツのレシピで、「おっきな包容力がありそうなキャベツ男には率先して先に乙女な豚ひき肉と一緒になる権利を与えましょう」などと、キャベツを男、挽肉を女に見立てて終始男女の結婚物語に例えます。ケチャップを加える理由は「愛の赤が足りないよと神父様から怒られるので」。こういう表現法について、作家・高橋源一郎も「『こういうところ(レシピ)にも物語はあるよ』ということ」「カミュの『異邦人』を最初に読んだとき以来の衝撃かもしれない」と激賞しています。

 そんな彼女が結婚の報告文を書いたとなっては、こちらも全力で立ち向かい解釈せねばならない。全文は転載できないので原文はインスタグラムを見てほしいのですが、すばらしいのが出会いの描写。

「記憶をほとんどその日に置いてくる私ですが、(彼に)出会ったときの季節、景色を今でも思い出せます」。

 記憶をほとんどその日に置いてくる私!

 このフレーズでもう完全に射貫かれてしまう。この言葉はポジティブにも、ネガティブにも聞くことができます。嫌なことも忘れるけれど、楽しいことも刹那的なものとして捉えている、と。それが、現・夫と出会ったときについてはどうだったか。

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source : 週刊文春 2022年7月21日号