ペロシ・米下院議長の台湾訪問に激怒した中国は、8月4日から7日まで、台湾近海での軍事演習に踏み切った。台湾侵攻を思わせる予想を超えた大規模な演習となり、国際社会には「ウクライナ危機の再来か」との観測まで広がった。衝突こそ起きなかったものの、台湾侵攻のⅩデーはかく起きる、とのディストピア(暗黒未来)を思わせる4日間だった。

 筆者は演習開始と同時に台湾入りしたが、演習の激しさと比べ拍子抜けするほど、台湾社会は冷静だった。目と鼻の先で実弾が飛び交う可能性があるのに海遊びに出かける人が続出。中国の無人偵察機が見えたと大騒ぎする若者たちもいた。台北市内の人通りも平常で、株価への悪影響も見られない。

「終身総書記」を目指す習近平

 一つには、台湾人は危機慣れしている点がある。1949年に蒋介石が台湾へ逃げこんでから70年以上、中台間は常に緊張状態にあった。特に習近平政権になり、中国軍機による台湾への異常接近が日常化した。危機意識のハードルは習近平自身が引き下げたのだ。もう一つはペロシ議長が「米国は台湾を見捨てない」とのメッセージを訪台時に発したことも大きかった。米国きっての実力者がここまで言えば、中国も本気で手出しはできない安心感もあった。

 台湾社会に恐怖を与え、中国を怒らせたことを後悔させる心理戦ではあてが外れた形である。

バイデンはペロシを止められず

 しかし、演習の中身を仔細に見れば、普段の「威嚇」とはかけ離れた本気度満点の「最後通牒」だったことは明らかだ。台湾国防部によれば、4日間で動員された軍事力は中国軍機110機、艦艇30艘、無人機11機、弾道ミサイル11発という空前の規模だった。ここから浮び上がるのは「6つの侵攻計画」だ。

 九州ほどの大きさに約2300万人が暮らす台湾。設定された6つの演習区域は台湾を四方から取り囲み、一目瞭然、「台湾封鎖」に他ならない。

 台湾の西側の区域は、最も海峡の狭い場所で上陸作戦のため。北側の2カ所と南側の2カ所は、台北・基隆の北部の港と、高雄などの南部の港を封じる狙いだ。東側の区域は米軍の救援を阻止する「接近拒否」作戦のためである。

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source : 週刊文春 2022年8月18日・25日号