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「渡辺直美をブタに」五輪「開会式」責任者“女性蔑視”を告発する

「LINE」「内部文書」入手

「週刊文春」編集部

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米国に活動拠点を移す渡辺直美
米国に活動拠点を移す渡辺直美

 世界中が注目する「開会式」。昨年5月、恋ダンスなどを手掛けた女性演出家が責任者を突如交代させられた。後任は“天皇”と呼ばれる元電通マン。森喜朗氏と電通代表取締役を後ろ盾とする、この男の開会式プランはあまりに醜悪なものだった。

〈◎=渡辺直美/への変身部分。/どう可愛く見せるか。/オリンピッグ●/歴史を振り返るというより、過去大会ハイライトシーンを、どうワクワクする様に見せるか。(註・◎=ブタの絵文字、●=ブタ鼻の絵文字)〉

 これは昨年3月5日、ある人物から、東京五輪開会式の演出を担うメンバーに送られたLINEだ。

渡辺をブタに見立てたLINE
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 このLINEを目にしたメンバーの一人が明かす。

「開会式にはタレントの渡辺直美さんがキャスティングされていましたが、彼女を登場させる演出が固まっていなかった。それで佐々木さんは『オリンピッグ』というダジャレから、渡辺さんをブタに見立てた案を持ち出してきたのです。この世界では“クリエイターの天皇”と呼ばれるほどの人物ですが、彼の感覚を疑わざるを得ませんでした」

 この開会式プランを披露したのは、電通出身のCMクリエイター、佐々木宏氏(66)。東京五輪開会式の演出を指揮する「総合統括」である。

開会式を仕切る佐々木氏

 組織委員会会長だった森喜朗氏(83)の“女性蔑視”発言が国内外で批判を浴び、後任に橋本聖子氏(56)が就任したのは、2月18日のこと。橋本氏は信頼回復に向け、新たに女性理事12人を起用し、理事の女性比率も4割を超えた。

女性登用に取り組む橋本会長

 傷ついた東京五輪のイメージをどう回復させるのか。そのメッセージを打ち出す最大の舞台こそ、五輪の開会式にほかならない。

「まして森氏の“女性蔑視”発言を受けての開催ですから、世界中が注視しています。実際、ロンドン五輪では開会式の視聴者は世界全体で約9億人に上りました」(IOC関係者)

 それだけの舞台ゆえ、巨額の税金も投じられてきた。閉会式やパラリンピックの開閉会式も合わせ、招致段階で計91億円だった予算は延期を経て、165億円に膨らんでいる。ところが、

「この間、開会式の現場は混迷を極めていました。何より演出を仕切る責任者が佐々木氏になるまでに次々代わり、予算も浪費されていったのです」

 そう告発するのは、組織委の幹部。一体、開会式に何が起きているのか――。

 今から3年余り前の17年12月、東京大会の〈演出チーム〉として発表されたのは、映画監督の山崎貴氏(56)、能楽師の野村萬斎氏(54)、映画プロデューサーの川村元気氏(42)ら日本を代表するクリエイターたちだった。

野村萬斎氏らが降ろされて

野村萬斎氏(左)と佐々木氏

「このメンバーに注文を付けたのが、森氏です。リオ五輪の閉会式で、安倍晋三首相(当時)がマリオに扮して土管から飛び出す演出が話題になりましたが、セレモニーの成功に気を良くした森氏が、東京大会の演出陣にも『リオの演出陣を入れるべき』と主張。結果、佐々木氏や椎名林檎氏(42)らリオのメンバー4人も加わった。〈演出チーム〉は計8人で船出したわけですが、これが現在に至る大混乱の始まりだったのです」(組織委関係者)

 当初、〈演出チーム〉の中心を担っていたのは山崎氏だったのだが、

「『風船で作った実物大ゴジラが新国立競技場を覗く』などと非現実的なアイデアを提案しては、他メンバーにダメ出しされることの繰り返し。結局、18年夏から野村氏にチーフ・エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターという肩書きを与え、新たに責任者に据えたのです」(同前)

 ところが、“2人目の責任者”となった野村氏もまた、「茶室が空を飛ぶ」といった突拍子もないアイデアばかりを挙げてきた。

「野村氏は伝統芸能の人だからか、提案も観念的。森氏もプレゼンのたびに、野村氏に『意味が分からん』『具現化しろ』と批判し続けていた。最後は森氏主導で、野村氏は責任者を降ろされます」(同前)

 開幕まで残り1年に迫った段階で、企画案は白紙状態。組織委は19年6月3日、野村氏を肩書きはそのままに、管理側に“棚上げ”に踏み切る。〈演出チーム〉の一員だったMIKIKO氏(43)を“3人目の責任者”として、五輪開閉会式演出の「執行責任者」に起用するのだ。

Perfumeも手掛けるMIKIKO氏

「MIKIKO氏は、PerfumeやBABYMETALを手掛ける演出振付家です。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の“恋ダンス”も彼女の作品。リオ大会のセレモニーでも演出チームの一員でした」(音楽関係者)

 ただ、7月23日には、IOCのコーツ副会長への“開幕1年前プレゼン”が待ち受けていた。

「彼女はダンスのレッスン後、夜から内幸町にある演出チームの作業場に出向き、不眠不休で企画案作りに没頭した。計7時間に及ぶ開閉会式の構成や演出、キャスティングからキャストの衣装プランまで、通常2年かかる所を2カ月弱で完成させたのです」(同前)

 こうしてプレゼンに臨んだMIKIKO氏。東京のお国自慢ではなく、「アスリートの出迎え役、引き立て役」として東京を演出した企画案は、IOCから絶賛を受けた。だが、安堵したのも束の間。MIKIKO氏に障壁が立ちはだかる。

「彼女の“右腕”だったのが、8人の〈演出チーム〉の一人、電通社員の広告マン、菅野薫氏(43)。リオ閉会式チームの一員で、演出の中でストーリー性を膨らませる役割を担ったほか、各所へのプレゼンを引き受け、森氏らの信頼も厚かった人物です」(電通幹部)

 その菅野氏が部下へのパワハラで懲戒処分を受けたことを昨年1月7日、「デイリー新潮」が報じたのだ。

「記事に書かれていませんが、パワハラ騒動の発端は菅野氏が五輪を巡り主導権争いをしていた部下らを叱責したこと。そのため、菅野氏だけでなく、パワハラを訴えた側の電通社員の上司、さらには五輪に関わる役員にも懲戒処分や厳重注意があった。電通首脳陣は“喧嘩両成敗”の形を取るため、菅野氏と部下側の上司の両方を処分したのですが、菅野氏の名前だけが報じられました」(同前)

 報道があった昨年1月7日付で菅野氏が〈演出チーム〉を辞めると、五輪開閉会式のストーリー作りを菅野氏と共に担っていたメンバーもチームを去った。電通社内の“内輪モメ”で、強力なサポート役を失った形のMIKIKO氏。そこへ現れたのが“クリエイターの天皇”との異名を持つ男だった。佐々木氏である。

〈オリンピッグ=渡辺直美〉

 慶応大卒業後の77年に電通に入社した佐々木氏。03年に独立後は、缶コーヒーBOSSの「宇宙人ジョーンズ」シリーズや、ソフトバンクの「白戸家」シリーズなど多くのヒット作を生み出してきた業界の大物だ。

 だが、森氏の引きで〈演出チーム〉の一員となったものの、しばらくの間、花形とされる五輪の開会式から遠ざけられていた。なぜか。

「“1人目の責任者”だった山崎氏の怒りを買ったのです。五輪は関係先へのプレゼンが多いのですが、映画監督の山崎氏は不慣れ。そこで広告マンの佐々木氏がサポートを買って出たものの、プレゼン前日に内容を勝手に書き換え、山崎氏が激怒。18年春には佐々木氏は五輪ではなく、パラ開閉会式の担当になっていました」(別の組織委関係者)

 8人の〈演出チーム〉には、そのパラに不可欠な人物もいた。32歳の時に骨肉腫を発症し、右下肢機能を全廃した女性ディレクターの栗栖良依(くりすよしえ)氏(43)。障がい者パフォーマンスイベントの第一人者だが、

「プレゼン直前に佐々木氏から資料が送付され、彼女は同席するだけ。佐々木氏や電通が『障がい者も賛同した』と強調するためだけに、栗栖氏を利用しているようでした。彼女も自身の扱いについてたびたび異議を申し立てたのですが、聞く耳を持たない。『道具みたいに扱われ、責任ある仕事をさせてもらえない』と嘆いていました」(同前)

 五輪でもパラでも“天皇”のように振る舞い、問題を招いてきた佐々木氏。ただ、そんな佐々木氏は菅野氏と同じ広告マンで、人脈も豊富だ。MIKIKO氏は、彼に「ストーリー作りができる人材を紹介してほしい」と相談したという。

「すると、佐々木氏はここぞとばかりに『自分がやる』と言い出し、森氏にも話を通しました。それで強引に、五輪開閉会式の企画チームに参加するようになったのです」(演出チーム関係者)

 そして――。

 菅野氏の辞任から約2カ月後の昨年3月5日。再び冒頭の場面に戻ろう。

 渡辺直美をブタに見立てた開会式案。これは、佐々木氏が、ストーリー制作チームのメンバーが参加する複数のグループLINEに投稿したものだった。グループLINEには、こんな具体案も投稿されている。

〈ブヒー ブヒー/(宇宙人家族がふりかえると、宇宙人家族が飼っている、ブタ=オリンピッグが、オリの中で興奮している。)〉

〈空から降り立つ、オリンピッグ=渡辺直美さん〉

 グループで唯一の女性だったMIKIKO氏は、遠慮がちにこう投稿した。

〈容姿のことをその様に例えるのが気分よくないです/女性目線かもしれませんが、、理解できません〉

〈皆さん的には面白いですか?〉

“天皇”佐々木氏は、必死の訴えも意に介さない。

〈普通目線で、豚に例えるのは、良くないでしょう。(略)ただ、童話にもあり、可愛いイメージにもなり得るなと〉

 しかし、MIKIKO氏のメッセージを受け、別の男性メンバーからも〈眩暈がするほどヤバい〉などと反対意見が投稿された。

 元電通社員が嘆く。

「佐々木氏はソフトバンクのCMでも、女性芸人のゆりやんレトリィバァが倒れている所へ、堺雅人が『彼女は死んでいるのではない。太っている』と言い、人工呼吸目当ての死んだフリだと見抜く、というストーリーを作りました。ルッキズム(容姿による差別)への批判も世界的に高まっている中で、こんなコンテを作ってしまうのが、佐々木氏のセンスです」

女性たちが“排除”されていく

 今回も想定外の反発だったのだろう。周囲には「冗談だった」などと弁解しつつ、佐々木氏による“クーデター”が始まっていく。

 きっかけは昨年3月24日、五輪の1年延期が決まったことだった。前出の電通幹部が経緯を明かす。

「森氏と親密な電通代表取締役社長補佐・髙田佳夫氏が、開会式のコロナの緊急対策リーダーに電通同期の佐々木氏を指名したのです。組織委は当初、別のスタッフをコロナ対策の中心に据えようとしていたのですが、これに髙田氏が激怒し、自らと近い佐々木氏をリーダーにした。佐々木氏は条件として『自分一人で式典をイチから決めたい』と伝えたそうです。それでMIKIKO氏は突然、責任者から降ろされてしまったのです」

 電通で五輪に関わる複数のメンバーは、MIKIKO氏から、この頃の動きを克明に記したメールを受け取っていた。それによれば、彼女は昨年5月11日、髙田氏から佐々木体制への変更を一方的に告げられている。当然、この交代劇は開会式準備に大きな混乱をもたらすことになった。

 この頃、MIKIKOチームの案は渡辺直美の演出などを除いて、完成形に近付いていたからだ。キャストやスタッフなども決まり、約500名の大所帯となっていたMIKIKOチーム。漫画家の大友克洋氏や任天堂の宮本茂代表取締役らの参加も決まっていた。

 ここに昨年4月6日付の開会式案がある。IOCセレモニー担当者へのプレゼン資料だ。CGなど最先端技術を駆使し、東京の街や世界の大陸が会場に次々浮かび上がる。女性ダンサーにあわせ、光る球が動き出し、ともに舞い始める――。

MIKIKO氏がIOCにプレゼンした資料(昨年4月6日付)

「IOC側も『よくここまで準備してくれた』と大喜びでした。コロナに関するメッセージを盛り込む必要はあるが、現状の企画書に手を加えれば大丈夫。殆どの関係者がそう考えていました」(別の組織委幹部)

 しかし、“4人目の責任者”となった佐々木氏は「一人で式典をイチから決めたい」。そのため、彼はIOCに高く評価されたMIKIKOチームの企画案を白紙にしようと動き始めた。総勢500人のチームを率いるMIKIKO氏を“放置”したまま、佐々木氏はIOCにプレゼンを重ねていく。

「ところが、狙い通りにはいきませんでした。イチから作った案をプレゼンしても、IOCから『これまでの企画のほうがいい』と言われ続けたのです。ショックを受けた佐々木氏は、こともあろうに、MIKIKOチーム案を勝手に切り貼りして企画案を作ろうとしました」(同前)

 昨年8月18日、佐々木氏は延期が決まって初めてMIKIKO氏を呼び出し、現状の企画案を説明した。

「無断でアイデアを切り貼りするのは、クリエイターの世界では考えられない行為であり、MIKIKO氏も困惑しました。それでもMIKIKO氏は『従前の企画をCGで作り込む』という、延期前の制作物を活かしながらコロナ後に相応しいメッセージに昇華させる提案をしましたが、佐々木氏はロクに返事をしなかった」(電通関係者)

 以降、佐々木氏は電通などに「MIKIKOさんには話を通している」などと伝えることで、彼女を“排除”していった。結果的に、電通や組織委からMIKIKO氏への連絡もパタリと途絶えるのである。

「当時のMIKIKO氏はそれまで協力し合っていたのに、連絡がなくなった電通スタッフの掌(てのひら)返しにも不信感を募らせていた。MIKIKOチームの総勢約500人はプロジェクトに加わったまま放置され、次の仕事を入れられない。彼女は辞任を考えつつも、『今辞めたら、スタッフやキャストに申し訳が立たない』と苦悩を深めていきました。あまりのストレスから体調も崩し、突発性難聴と診断されてしまいます」(MIKIKO氏のスタッフ)

 昨年11月2日、2カ月半ぶりに佐々木氏に呼び出されたMIKIKO氏が見せられた企画案は、かつての案から一新されていた。佐々木氏は水面下で総合演出に演出家の小林賢太郎氏を起用し、再びイチから企画案を練り直していたのだ。

 完全に五輪開会式の演出チームから、“排除”されてしまった形のMIKIKO氏。ついに辞任を決意して、11月9日、組織委の武藤敏郎事務総長に〈辞任届〉を提出した。その文書にはこう記されている。

 

〈(佐々木氏から)現在の企画案も共有いただきましたが、その内容は、ライブ演出の実務からしても非合理的かつ非現実的で、時流にも合致しておらず、到底納得できるものではありませんでした〉

 その約2週間後の11月25日、晴海トリトンスクエアの組織委会長室で森氏との面談に臨んだMIKIKO氏。森氏の口から飛び出たのは、あの発言を彷彿とさせるものだった。

「あなたが女性だったから、佐々木さんは相談できなかったのでは。事を荒立てるんじゃないだろうな」

 その言葉に、MIKIKO氏は「荒立てません」と返すほかなかったという。

 12月に入り、組織委側から、彼女の辞任とは関係なく、コロナで演出チームが解散したことにすること、迅速に物事を進めるための決断と発表することが一方的に伝えられた。そしてMIKIKO氏らの了解を得ないまま、12月23日、佐々木体制への移行が公式発表されたのだった。完成目前だったMIKIKOチームの企画案は、MIKIKO氏が辞任した事実とともに、葬り去られた――。

「佐々木氏のMIKIKO氏への対応には、椎名林檎氏も激怒し、佐々木氏本人に『なぜ長い間、彼女に連絡しなかったのか』と抗議したほど。椎名氏はチーム解散にあたり、武藤氏らとの面談に臨んだ際も、MIKIKO氏の承諾なしに小林氏を演出担当に据えた佐々木氏を『あまりに不誠実』と批難していました」(前出・組織委関係者)

椎名林檎氏も佐々木氏に……

佐々木氏の携帯を鳴らすと……

 MIKIKO氏、栗栖氏、椎名氏。自らの考えを主張する女性たちを“排除”し、森氏や髙田氏を味方に五輪開会式の“乗っ取り”に成功した佐々木氏。彼は今、どんな式典を思い描いているのか。今年2月時点の案を見たスタッフが明かす。

「問題なのは、顔写真入りで紹介されている主要スタッフの殆どが男性ということ。ヘアメイクや衣装も軒並み男性。キャストもブッキング済みなのは主に男性で、申し訳程度に『アクトレス』の枠が設けられ、配役は未定。こうしたバランスが世界にどう映るか。不安を覚える人は少なくない。ただ、佐々木氏の後ろ盾である森氏や髙田氏らの意向に、誰も逆らえなかったのが現実です」

 国際PR論が専門の国枝智樹上智大学准教授が語る。

「人を動物に喩えるのは、差別に繋がるリスクを伴う表現です。最近では『スッキリ』がアイヌを犬と表現して炎上したほか、08年には携帯電話会社のイーモバイルが、猿がオバマ米大統領の真似をして演説するCMを放送し、批判が殺到して放送中止になった。さらに、海外では『プラスサイズモデル』のように多様な体型を尊重する考え方も広まっている。五輪のような場で太っている女性を豚に喩える演出は、『日本はやはり差別的だ』という世界の怒りを招きかねません」

 しかも、それだけではない。企画の一新は別の問題をも抱えている。予算の浪費だ。開閉会式の予算に精通する関係者が証言する。

「MIKIKOチームの企画案には、少なくとも既に数億円が投じられてきました。この企画案はリハーサル寸前まで進められており、キャストや関連スタッフも契約済み。機材や舞台装置、キャストの衣装、映像なども、大部分が発注されていたからです。佐々木氏を責任者にゼロベースで作り直せば、これらの費用も全て“ドブに捨てる”ことになる。延期で四式典の予算は約35億円増えましたが、佐々木氏の新規発注分が少なければもっとスリム化できたはずです」

 3度にわたる責任者の交代など混乱極まった上、“女性蔑視”や予算の無駄遣いという問題も抱えたまま、開催に突き進もうとする組織委や電通。当事者たちはどう受け止めているのか。

 3月5日、MIKIKO氏を直撃したところ、

「……守秘義務があるので、お答えできません」

 翌6日、パラの担当だった栗栖氏を直撃した。

――佐々木さんに、パラの企画にタッチさせてもらえなかった?

「……そうだったかもしれません。ただ、新体制で私もパラ開会式の演出に携わっている。今は障がい者の方々が輝ける式典作りに邁進しているので……」

 口が重い両者。一方、3月6日に佐々木氏の携帯を鳴らすと、饒舌に語った。

――栗栖氏を排除した?

「彼女はパラ担当ではなく四式典全体の演出チームの一人という意識を持っている、と聞いていました。あくまでパラの企画担当は私で、栗栖さんには折に触れて経過報告をしていた」

――MIKIKO氏の辞任について。

「私はMIKIKOさんと椎名林檎さんの女性お2人が中心となってやっていくといいのに、と心の中でずっと思っていました。コロナで色んなことが動きましたが、『私がどうこうした』というものではない」

――企画を切り貼りした?

「私が勝手に改ざんしたことはありえない。(延期で)誰も何もやっていない時期があり、MIKIKOさんのお手伝いをして、簡素化の形を提案したつもりだったんです。『当初の案を映像で流すのはどうか』とMIKIKOさんとやり取りしたこともあります」

「世界に誇れるセレモニーを」

 当初の企画を活かすアイデアを提案したのはMIKIKO氏だったはずだが、それを自身の案のように語る佐々木氏。一方で、渡辺直美の演出案については、

「僕はすぐにダジャレを言うので、口が滑ったように言ったこと。可愛いピンクの衣装で舌を出して『オリンピッグ』と。これで彼女がチャーミングに見えると思ったんですが、その場で男性スタッフにえらく叱られた。反省しています」

 組織委にMIKIKO氏辞任や予算について質すと、こう回答があった。

「演出企画チームについては、全員了解の下、20年12月23日にその任を終え、新たな体制に引き継がれた。(予算は)延期を受けて演出内容等を見直す必要が生じ、履行済の企画・製作費の一部が21年用の式典に転用できなくなった。制作物の保管経費など、延期がなければ支出する必要がなかった経費も生じることとなった。これらの経費を合わせると約50億円となる。内訳は公開していない」

 森氏は一連の発言を「事実ではない」と回答。

“女性蔑視”発言で辞任した森前会長

 佐々木氏の弁明や組織委の回答を受け、小誌は3月15日、再びMIKIKO氏のもとを訪ねた。「本番に向けて頑張っている方々がおられるので……」と語るMIKIKO氏だったが、開閉会式の企画書やLINEなどの内部資料を示すと、「そんなものまで……」と漏らし、立ち止まった。

――辞任届はMIKIKOさんが書いたものですね。

「……はい。そうです」

――スタッフに送ったLINEには〈最後まで成し遂げたい、愛と熱意があれば奇跡が見られるのではないか、と何とか踏ん張りましたが叶いませんでした〉と。

「それは本心です」

――体調も崩された。

「そうですね……日本が世界に誇るクリエイターや優秀なスタッフ、キャストを集めていました。私の辞任で、彼らの発表の場が無くなるのが一番苦しかった」

――佐々木氏が渡辺直美さんをブタに喩えたことは?

「それは……理解できませんでした」

――企画の切り貼りは?

「それも……混乱した、としか言えません」

――森氏から「事を荒立てないように」と。

「私が言えるのは、辞任届は本物だということです」

 言葉少なながら、小誌が把握した事実関係について認めたMIKIKO氏。最後にこう締めくくった。

「任務を全うできず残念ですが……もしオリパラが開催されるなら、世界に誇れる、子どもたちに誇れるようなセレモニーになってほしい。開催できたことへの感謝を、全ての人に届けてほしいと願っています」

 五輪開会式から女性たちを“排除”し、女性出演者を差別的に扱う開会式の責任者。森氏の“女性蔑視”発言を生んだ組織委員会は本当に変わったのか。これで世界から祝福されるセレモニーを実現できるのか。

source : 週刊文春 2021年3月25日号

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