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妻の会社に1千万 私物化発注した日本プロゴルフ協会副会長

「週刊文春」編集部
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井上PGA副会長(YouTubeより)
井上PGA副会長(YouTubeより)

「協会に損失を与えながら、いまだに会員らに対して納得できる説明がない」

 そう憤るのは、日本プロゴルフ協会(PGA)に所属するゴルファーの一人だ。

 東京駅近くのビルの7階で、PGAの会合が行われたのは4月2日のこと。貸会議室には倉本昌弘PGA会長(65)と、隣に座る井上建夫副会長(69)を中心に、20人以上の参会者が神妙な面持ちで着席していた。

 
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 PGAは全国約5600人のプロゴルファーが会員として所属する法人だ。主に会員の中から28人の理事が選ばれ、会長の他に4人の副会長がいる。会合で報告された内容とは――。

 ことの発端は2017年。PGAは、アマチュアゴルファーのレッスン予約や決済をウェブ上で行うシステム構築事業を進めていた。

 理事の一人が経緯を語る。

「当初、ある業者に開発を依頼し、17年の末にほぼ完成したのですが、正常に稼働するか確認が必要だということになった。そこで井上副会長の息子が『ITに精通している』というので、彼にシステムの検証を依頼したところ、『セキュリティーに重大な欠陥がある』と指摘してきたのです」

 あわてたPGAは、既に開発費を約2000万円支払っていた業者との契約を解除。井上氏の息子が勤務するIT会社『C』に、システム開発を引き継がせた。

「実はこのC社は、井上副会長の妻が社長を務めています。さらにPGAは、システムが完成していない段階で、別会社を経由してC社に約1000万円を支払っていました」(同前)

 PGAは、19年早々にシステムの完成を目指していたが、19年3月に井上氏の息子が体調不良を訴えて開発は頓挫。さらに20年4月になっても納品されず、結局、PGAはシステム開発を断念したのだった。

「今年1月、C社は廃業してしまい、未だに返金もされていません」(同前)

 小誌はPGAの内部資料を入手。それによると、システム構築の他、オフィシャルサイトの構築もC社が担っており、その開発費を含めると約1300万円が未回収のままだ。当初、発注した業者に支払った額を合わせると、約3300万円が焦げ付いたことになる。

「見積りも取らずに副会長の妻の会社に高額の仕事を発注していた。井上さんは協会を私物化しているも同然です」(PGA関係者)

PGA報告会の内部資料

道義的責任は免れない

 PGAトップの倉本氏は、82年全英オープンで日本人歴代最高の4位となったゴルフ界のレジェンド。14年からPGA会長に就任し、東京五輪のゴルフ強化委員長も務めている。

 その倉本氏が会長就任と同時に副会長に指名した一人が、井上氏だった。

「井上さんもティーチングプロで、PGAの収益の柱であるプロ認証事業の責任者です」(同前)

 PGAに取材を申し込むと倉本会長から「説明したい」と電話がかかってきた。

倉本昌弘PGA会長

――なぜ副会長の奥さんの会社に発注したのか。

「金額面で、他社に頼めば、5、6000万円のものが1000万円でできると言われたことや、副会長の息子さんだということを信用したという部分もあります」

――利益相反ではないのか。

「我々と弁護士の見解では利益相反ではないと考えています。結果的にお金が焦げ付いたってことは間違いないし、それに対する責任は当然我々はある。だけど、事業が成功したら当たり前で、失敗したら全部責任取れっていうんですかと。例えば副会長は給料5万円で、常勤でもない。そういう人が、そこまで責任取るんですかってことですね」

――透明性のある取引か。

「井上さんも、まさか自分の息子がこうなるとは思ってもいなかった。C社と井上さんは資本関係もなければ給与も貰っていないと言いながらも、道義的な責任は免れないということは私も井上さんも考えています」

――C社の社長は以前からIT関係の仕事をしていた?

「それもですね、井上さんの言われていることだけを我々鵜呑みにしているので。奥さんがどんな会社を経営されて、何をやっていたかというのはわからないです」

 井上氏にも電話がつながったが、「誰に取材したのか明かさないのであれば取材には応じません」と回答。

 PGAは13年から公益社団法人として内閣府の監督下にあり、税制面でも優遇されている。企業監査が専門の松本祥尚・関西大教授は問題点をこう指摘する。

「公益社団法人の認定等に関する法律では、『社員や理事など当該法人の関係者に対し特別の利益を与えない』とある。妻の会社が利益を得ていれば、これに違反する可能性があります」

 内閣府公益認定等委員会事務局の担当者は、「公益認定法の基準に違反していれば、勧告や取り消しを行うケースもある」と話す。

 PGAの幹部はこう嘆く。

「会長や副会長は当然ですが、親族間の不透明な取引を見過ごしてきた理事たちの責任も大きい」

 経営者としては“アマチュア”だった。

source : 週刊文春 2021年4月15日号

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