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小池百合子「病床確保」のまやかし コロナ専用病院がベッド数半減

「週刊文春」編集部
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小池都知事
小池都知事

「第三波を超える感染拡大が危惧される厳しい状況で、強い危機感を持っている」

 4月4日、小池百合子都知事(68)はこう語った。緊急事態宣言解除後も感染者数が増え続ける東京。だが都の医療体制は「危機感」という言葉とは真逆の方角に舵を切っていた――。

 都庁関係者が明かす。

「実はコロナ専用病院が病床縮小を始めたのです」

 舞台は都立府中療育センターを改修して作られた、軽症・中等症の患者を受け入れる“コロナ専用病院”。小池氏の“肝煎り”で開設された病院だ。

元は昭和43年開設の施設
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 第二波が襲来し、病床が逼迫していた昨年8月7日、小池氏はこうぶち上げた。

「新型コロナウイルス感染症の専用病院をスタートすることといたしました。規模は約100床でございます」

 折しも全国の新規感染者数1605人と、第二波のピークに達した当日。都の入院患者数は1475人に達し、入院調整に手間取るケースが増えていた。

「都は当初は消極的で、腰が重かった。ところが5月に大阪府、神奈川県が専門病院を開設。吉村洋文知事や黒岩祐治知事に先手を打たれ、遅れを取った小池知事が知事選の再選直後、慌ててトップダウンで決定した」(都政担当記者)

 開院予定は10月中。知事が突如掲げた目標に向け職員たちは動き出したが、準備は遅れに遅れた。

 建物を改修するため、交換が必要な空調設備や配管などが予想以上に多く、工事が期日までに終わらなかったのだ。加えて人員確保も難航した。都の職員が言う。

「10月に都から都立や公社病院にスタッフの派遣要請がありました。既に各病院では通常医療の一部をストップして患者を受け入れており、人手不足の中での派遣要請でした。院内会議で師長が声を荒げて抵抗したが、最終的にはトップの指示に従うしかなかった」

 予定から2カ月遅れた12月16日、開院にこぎつけたが、目標の100床に遠く及ばぬ32床での運用開始。それでも小池氏は、準備万端を強調した。

都は規模を「100床」としているが……

「目標100床で、その設計で行ってまいりました。当初32ということから着実に始めていくということ」

 だが専用病院の看護師は“着実”とは程遠い実情を明かす。

「開院から4カ月が経ちましたが、100床運用したことは一度もない」

 専用病院の病床は、5階建ての2階から4階の3フロアの東西に設置された。病床数は各階東西2病棟の計6病棟を合わせて100床となる計算。スタッフ数の目標は、医師6名・看護師98名だったが、12月時点で集まったのはわずか医師3名・看護師48名のみ。そこで現状の人員で回せる4階の2病棟・計32床を運用する体制でスタートせざるを得なかった。

「常駐の医師は1人。あとは随時、応援に来る。毎回『初めまして』の医師ばかりで、引継ぎが大変でした」(同前)

 緊急事態宣言が出るとスタッフも増員されたが、100床には到底届かなかった。

「2月1日までに3階の西病棟、2階の東病棟がオープン。計4病棟・66床を医師6名・看護師98名全員で運用するようになりました。ただ、拡充はそこまで。受け入れ拒否案件も多数ありましたが、結局、2階の西病棟と3階の東病棟は手付かずのまま。清掃員も『清潔で汚染されていないから掃除しなくて済む』と話していた(笑)。都はこれまで都立・公社病院の縮小を推進しており、新たに専用病院を運用するだけのマンパワーが残されていなかったのです」(同前)

 だがその頃、都は医療崩壊に近づきつつあった。1月7日には新規感染者数2520人を記録。感染者急増で収容できない患者が続出し、1月20日の都の入院率はわずか15%だった(厚労省調べ)。同日には、入院調整中の女性が1人亡くなる事態も起きた。

 そんな中、都は突如、都立・公社の3病院(広尾・荏原・豊島)をコロナ重点医療機関に指定。一般外来や入院を縮小、実質的なコロナ専用病院としての運用を開始し、通常医療は大幅に縮小した。

「広尾では出産を控えた約200人の妊婦が転院を迫られる事態に。十分な手当もなく、過酷な労働を強いられ、辞める看護師も続出した。たとえコロナが収束しても、一度崩壊した通常医療の再建は難しい」(都立病院看護師)

 フル稼働しない専用病院は何のためにあるのか。

「専用病院は知事のパフォーマンスに過ぎなかった。職員はそう口を揃えます。立ち上げのための当初工事予算だけで7億円。国からも多額の補助金が流れているのに……」(都職員)

 これまで小池氏は、幾度となく数字の“まやかし”を行ってきた。

「昨年3月、知事は『4000床を確保する』と掲げましたが、医療機関との調整が難航。第三波の年末時点でも3500床でした。達成できたのは1月の宣言発出決定当日です」(前出・記者)

 無症状者、軽症者向けに確保した宿泊療養施設の確保数でも、小池氏は「数字のマジック」を使っていた。

 東京都環境公社前理事長の澤章氏が解説する。

「昨年12月、知事は『4000室用意』と言っていましたが、厚労省の統計では2360室。なぜか。知事は借りたホテルの全部屋数を発表していますが、実際には職員・医療スタッフ用の部屋や感染防止に必要な部屋があり、感染者が使えるのは6割程度なのです」

 コロナ対策アピールのために数字を大きく見せ、無理が生じると場当たり的に対策を重ねてきたのだ。

病床確保の責任者が“更迭”

専用病院内の4人部屋。個室もある

 いま、その象徴である専用病院で、増え続ける感染者数と逆行する改革が次々と行われている。専用病院の別の看護師が言う。

「宣言期間中の3月中旬に突如、病床の縮小が始まったのです。まず2階の東病棟、そして24日には4階の東病棟がクローズし、4階と3階の2病棟・計33床になり、職員数も半減させた。まさにその日、入院要請を1件断っていた。本末転倒です」

 第四波に向け、目標とする100床へ病床・人員を拡充するどころか、減らす決断を小池氏はしていたのだ。公社職員は派遣元の病院に戻され、4月からは都立病院職員だけで運営している。

「一時的に患者数が減ったのは確か。ただ今後、感染者数が増えることは明白です。派遣元に戻された職員の多くは通常勤務にあたり、夜勤もしている。仮に患者が急増し、入院要請があってもすぐに専用病院に急行することはできません。開設から今まで、専用病院の本来の使命が果たされたとは思えない」(同前)

 専用病院が規模を縮小し、受け入れ拒否も起こっている状況を、都はどう説明するのか。同病院を管轄する病院経営本部は、

「入院調整本部、地域の保健所、ホテルと複数の相手先から要請がくるため、同じ時間帯の入院依頼となるなどにより、受けられない場合もあります。現在、医師5名、看護師48名の体制としていますが、常に100床の運用が可能となる体制を維持しています」

 と、強気だが実は、この病院経営本部で“懲罰人事”が行われていた。

「4月1日付で病院経営本部長が異動になった。病床確保の責任者として、知事のトップダウンに対応できず、『事実上の更迭』と囁かれている」(都庁幹部)

 まやかしでない“都民ファースト”の対策が求められている。

source : 週刊文春 2021年4月15日号

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