「1月15日の夕方、別の橋での新たな欠陥工事が発覚し、社内に衝撃が走りました。ところが、事実上のかん口令が敷かれ、3カ月弱の間、ひっそりと修繕工事を進めてきたのです」
そう話すのは中日本高速道路(以下ネクスコ)の幹部社員だ。
昨年10月の小誌報道がきっかけで明らかになった中央自動車道に架かる「緑橋」(東京都日野市)の“手抜き工事”。元請けとして同工事を受注したのは大島産業(福岡県宗像市)だった。ネクスコが「施工不良箇所の再施工完了について」と題するリリースを発表したのは4月9日のこと。前出の幹部社員が憤る。
「橋の再施工などを行う過程で、緑橋以外の別の橋もウォータージェットという機械を使って橋を支える橋台部分のコンクリートを剥がしたのです。1月15日に橋台の中を見た作業員は思わず、『えっ?』と絶句したそうです。“主筋”と呼ばれるコンクリート構造物の主要な鉄筋が、6本も切断されていたのです」
主筋が切断されていたのは、高速道路の上を跨ぐ絵堂橋(東京都調布市)だ。
「これではコンクリートが定着させられず、震度7クラスの地震が起きたら、橋が付け根から折れたり、コンクリートの塊がずり落ちる可能性もある。主筋の切断は重大事です。昨年、文春さんが報じた緑橋での配力筋(主筋にかかる力を分散させる鉄筋)が入っていなかったことと比べても、さらに安全性に大きな影響を及ぼします」(同前)
にもかかわらず、ネクスコの発表は主筋と書かず〈鉄筋12本の切断〉と曖昧な表現でごまかしている。
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source : 週刊文春 2021年4月22日号