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菅首相に“冷や水ぶっかけ男” 下村博文は「安倍利用のプロ」

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「週刊文春」編集部
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文科大臣や選対委員長を歴任
文科大臣や選対委員長を歴任

「65歳以上の方に限定しても(ワクチン接種は)場合によっては来年までかかる。すべての国民が接種できるのは来年春くらい」

 4月19日、菅義偉首相が「9月末までにワクチン供給の目途がたった」と表明した直後、こう冷や水をぶっかけたのは、自民党の下村博文政調会長(66)だ。

 下村氏は、4月14日の会見でも、東京五輪に参加する日本選手にワクチンの優先接種を検討すべきとの考えを表明し、波紋を呼んだ。前週に丸川珠代五輪担当相が会見で「今後も具体的な検討を行う予定はありません」と否定したばかりの話を下村氏がたった5日で「今後の党の検討課題だ」とひっくり返したことで、政府と与党の溝の深さを強く印象付けていた。

 16日にはテレビ出演し、「緊急事態宣言も視野に置く必要がある」と強調。だが、これもタイミングは最悪だ。菅首相がバイデン大統領との首脳会談のため米国に旅立った矢先の発言で、「こんな大変な状況なのに訪米かよ」との世論形成につながるのは自明だ。

「全部、菅首相への嫌がらせですよ。下村氏は以前も衆院解散に言及しましたが、首相の意を受けた発言でも何でもない。むしろ足を引っ張る発言を確信犯で繰り返す“倒閣運動”の節がある」(政治部記者)

 菅氏と下村氏は1996年初当選の同期(8回生)。無派閥の首相にとって、佐藤勉総務会長や山口泰明選挙対策委員長ら「96年組」は数少ない権力基盤だが、下村氏は違う。自民党関係者は「菅、下村両氏は犬猿の仲」と評する。菅氏は、安倍晋三前首相の側近然として振る舞う下村氏のことを「能力がないのに安倍さんを利用しているだけ」と批判していた。

 2人の仲を象徴する話がある。昨年9月、菅内閣発足時のこと。菅氏が安倍氏に「萩生田光一官房長官」を打診。安倍氏は自らが事実上率いる細田派幹部に相談したところ、下村氏が派の後輩にあたる萩生田氏の抜擢に反発し、この人事はお流れになった。次に菅氏は萩生田氏を政調会長にあてようとしたが、萩生田氏が難色を示し、結局下村氏がその座に納まったという。

 今、下村氏が狙うのは、宰相の座だ。秋の総裁選に照準を定め、4月23日に『GDW興国論』を上梓。惹句は「政治大改革案」「2021年政界激震!」で、国内総生産=GDPを重視する経済優先の国から、GDW=幸福度を重視する国に日本を転換するそうだが、最大の売りは安倍氏との対談。だが、派内にも当選同期にも仲間を作れず、いつまで安倍氏の人気に頼るのか。菅氏でなくとも「安倍さんを利用しているだけ」と言いたくなる。

source : 週刊文春 2021年4月29日号

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