これまでロスやアテネなど、数多くのオリンピックを取材してきた沢木耕太郎氏。ところが、今回の東京五輪だけは取材したいとの情熱が生まれてこなかったという。依然として、コロナとの厳しい戦いが続く中での開催。そこには「大義」も生じようがなく……。
(さわきこうたろう 1947年東京都生まれ。79年『テロルの決算』(文春文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。6月1日には、ベルリン五輪を描いた『オリンピア1936 ナチスの森で』、アトランタ五輪を描いた『オリンピア1996 冠〈廃墟の光〉』(いずれも新潮文庫)を刊行予定。)
2020年に二度目の東京オリンピックが開催されることになると、その前年くらいから、私にも雑誌や新聞から仕事の依頼が来るようになった。
私は、これまでいくつものオリンピックを取材してきた。そして、たとえそれがどの都市で開催されるどのような大会であろうと、オリンピックにおいてさまざまな競技を取材して書くということには常に心が躍るようなものがあった。
ところが、自国で、しかも自分が生まれ育った都市で開催される特別な大会であるにもかかわらず、取材者としてこのオリンピックに関わっている自分がイメージできなかった。単純に言ってしまえば、私の内部に取材したいという情熱が存在していないということに気がついたのだ。
私は、このオリンピックに限って、競技場に行き、取材をして書きたい、つまりその出来事に立ち会いたいという内から湧き上がる強い思いが生まれてこないことが不思議だった。
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source : 週刊文春 2021年5月20日号