9月30日、高層マンションの最上階から身を投げた女性は、現役タカラジェンヌだった。なにが彼女を追いつめたのか。「清く 正しく 美しく」をモットーとする宝塚の舞台裏に潜む「魔物」の正体とは――。
突然の訃報から一夜明けた10月1日。仲間を突如失った同期生の母は、言葉を選びながら悲痛な胸の内を吐露した。
「うちの子は、今年退団しました。本人が『やめたい』と。宝塚歌劇団は厳しい世界。人間関係だけでなく、劇団、(親会社の)阪急のやり方を含めて、理不尽なこともたくさんあります。でも、うちは無理をさせるつもりはなかった。彼女の自殺の理由は、きっと1つじゃないはず。誰しもに可能性があることなんじゃないかと思います」
兵庫県宝塚市。武庫川に臨む高層マンションの最上階から身を投じた女性は、トップ娘役になることを夢見たタカラジェンヌだった。
「9月30日、午前7時4分、マンション住民が敷地内の駐車場に女性がうつ伏せで倒れているのを発見し、110番通報。着衣に乱れや事件性をうかがわせる傷がなかったため、自殺と見られています。駆けつけた捜査員が18階を調べたところ、通路に彼女の所持品と思われるビニール製の手提げ鞄を発見し、身元が判明した」(社会部記者)
彼女の名前は、宝塚歌劇団の宙(そら)組に所属する有愛(ありあ)きい(25)。1998年4月、有愛は京都市で140年以上続く由緒ある漬物屋に、双子の姉妹の長女として生まれた。15年4月、宝塚音楽学校に入学。17年3月、40人いる103期生として劇団に入団する。
「彼女の妹は1期上の102期生として入団した、雪組の男役・一禾(いちか)あおです。有愛の入団が1年遅れた理由は怪我だったそう。姉妹仲は良く、普段からお互い悩み事を相談していた。最近はお父さんが所有するマンションに2人で暮らしていました」(演劇評論家)
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source : 週刊文春 2023年10月12日号