昭和天皇に仕えた初代の祖父、それを継いだ父、そして息子の大場氏。父子3代にわたり理髪師を務め、天皇の謦咳に接してきた忠臣が、譲位問題に違和感を持ち、初めて5時間以上のロングインタビューに答えた。皇室の行く末を案ずるアルチザンの“熱誠の忠言”。
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皇居の西にある半蔵門は、天皇皇后と皇太子ご一家が主に使用される「格」の高い門だ。宮内庁職員らを除けば、半蔵門を通行できるのはごく限られた御用の者だけ。この10年、天皇のご調髪を担当する「ご理髪掛」の大場隆吉(たかよし)氏(65)は、数少ないその一人だ。
昨年12月27日、年内最後の御用に伺うため、大場氏は半蔵門の小扉(しょうひ)をくぐった。午後8時からのご調髪に間に合うよう天皇の住まいである御所へ独り徒歩で向かったという。
「一歩、皇居の中に入ると漆黒の闇が広がります。ポツンポツンと灯りが瞬くだけ。この寂しい道の先に天皇陛下がいらっしゃると思うと、陛下の歩まれてきた道の険しさと孤独が伝わってくる気がするのです。
ご調髪はこの日も1時間ほどで滞りなく終わりました。午後9時頃、天皇陛下はお部屋を出られるときに『どうもありがとう』とおっしゃいました。普段は私が『御理髪室』のドアを開けて差し上げると、私室のほうへと続く廊下を、後ろを振り返られずに真っすぐと歩かれます。しかし、この日は曲がり角でわざわざこちらを振り返られ、笑みを浮かべて軽く会釈をされたのです。非常に丁寧にご挨拶をしてくださった。
このとき、陛下のご心中にはどんな思いが去来していたのでしょうか。今、政府では生前退位について議論が為されています。様々な報道を目にしますが、中には“平成流”を否定する言説まで出ているようです。しかし、私は長年お側でご様子を拝する者として、どうしてもそうした議論に違和感を覚えるのです」
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source : 週刊文春 2017年2月9日号