台風19号の猛威により、10月12日午後10時過ぎ、多摩川が氾濫を起こし、溢れた川の水で世田谷区玉川周辺の住宅地が冠水。被害にあった住民は肩を落とす。

「10年ぐらい前から堤防の工事が川下からスタートしていたのですが、ある日を境にピタリと工事が止まり、何年も土嚢が詰まれたままで放置されていました。あと100メートル堤防が伸びていれば、公園入り口もカバーできたのに」

浸水してしまった二子玉川地区の建物 ©文藝春秋

テレビでも取り上げられた「二子玉川の新堤防論争」

 東急線二子玉川駅に隣接する橋を区切りに下流側の堤防は整備されているが、上流側は土嚢を重ねたのみの仮堤防だ。今回の氾濫箇所とされている玉川3丁目「兵庫島公園」の入り口付近の対策は脆弱で台風前日に世田谷区が集めた土嚢が数段詰まれたのみの状態だった。工事はなぜ止まったのか。

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 この問題は、2009年8月に放送された情報番組「噂の東京マガジン」(TBS系)の人気コーナー「噂の現場」でも取り上げられた。当時の新聞ラテ欄には「集中豪雨・堤防建設で住民が反目」と書かれている。今回ネットで拡散されたブログには当時の番組内容がこう記されていた。

《二子玉川の新堤防で論争 2009/08/23放送
 東京・世田谷区の東急・二子玉川駅近くの南地区(約500世帯)で、国土交通省が建設を始めた新堤防をめぐって、住民同士が論争を繰り広げていることを放送。「住宅の中からの、すばらしいながめが高い堤防にさえぎられ、周辺の自然もなくなる。100年に一度の洪水に備えられるという説明納得できない」という建設反対派と、「水害から人命・財産を守るのには欠かせない」という賛成派の、それぞれの意見を紹介しました。》

今回の氾濫箇所だと思われる地点 ©文藝春秋