恋愛リアリティ番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが亡くなったことを契機に、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを介した個人への誹謗中傷を巡る議論が活発化している。投稿者の特定を容易にするための法改正に向けた動きや、実際に被害を受けた人が訴えを起こすケースなどもあるが、誹謗中傷する行為が完全になくなるわけではない。

 そこで問われるのが、個人攻撃のような書き込みを受けた時の「スルースキル」だ。実際に誹謗中傷を受けた経験があるジャーナリスト・安田純平さんの「乗り越え方」や、心理カウンセラーによるアプローチを参考に、SNSの誹謗中傷から心身を守ることができるのか、その方法を探ってみた。(取材・文=素鞠清志郎/清談社)

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 安田純平さんは、シリアで3年4カ月に渡って拘束され、2018年に解放されて日本に帰国した直後からメディアやネット上で数々の誹謗中傷を受け続けており、その「炎上」はいまだに止んでいないという。

安田純平さん ©︎AFLO

「私の行動について、いろいろなご意見があることは理解しています。しかし、私を非難する人たちの根拠が、専門家と称する方々の事実誤認の発言にあったり、それを検証もせずに報道したメディアによって作り出されたことだったりするんです。シリアから解放された直後に『身代金が払われた』と報道されましたが、その唯一の情報源であるNGOはこの件でいくつものデマを書いていて信憑性が疑わしい。他国の事例と比べても、解放翌日まで日本政府が解放の事実を確認できないなど、交渉などが行われていたらありえないことがいくつもあります。しかしメディアも専門家もそれらを何ら検証していません。

 また、私が『人質』になったのはシリアの時が初めてですが、あるジャーナリストを名乗る人が『3回目だ』と書くなど、何人もが実名でデマを書いてツイッターで著名人らに拡散されました。以前にイラクで一時拘束されたことは『人質』と誤報されたまま訂正もされていませんが、それ以外に人質と報じられたことはなく、どれのことなのか全く心当たりもない。このようなデマに対して違います、事実はこうです、と、ひとつひとつ反論していくしかないんですが、反論しても大量のデマの中に埋もれるだけ。やがて、デマが真実であるかのように定着してしまい、そこからさらにウソや人格攻撃などの誹謗中傷が続いていくという状況です」(安田さん)

「事実とは関係のない罵詈雑言が飛んできます」

 デマである証拠を突きつけても簡単に撤回はされない。撤回されたとしても、その謝罪や修正の声は小さく、誹謗中傷を続けている人には届かない。

「そこから、もはや事実とは関係のない罵詈雑言が飛んできます。『死ね』『金返せ』『貴様はゴキブリのような野郎だ』などと、まったく知らない方々から、ツイッターだけでなく、メール、フェイスブックのメッセンジャーなど、あらゆる方法で大量の誹謗中傷コメントが届くようになりました」

安田さんに届いたメール

 真実も伝わらず、反論もできない。四面楚歌の状況で、安田さんはどのようなメンタルで立ち向かったのか。