文春オンライン

「ゴキブリのような野郎だ」 自己責任論で炎上…安田純平さんが考える、SNSの誹謗中傷

2020/06/21

genre : 社会, メディア

note

「追い詰められたときには、誰かにそのことを話す、相談するということが有効だと思います。自分ひとりで抱え込んでしまうことがいちばん良くないです」(大塚さん)

 とはいえ、なんでも相談できる友人がいる、という人は稀だろう。家族にも弱みを見せたくないという人も多いし、ある程度の社会的地位にある人などは、誰かに頼ること自体、プライドが許さないかもしれない。

「家族や、友人に対して悩みを打ち明けられないというケースは多いです。その場合、私どものようなカウンセリングサービスを利用していただくのもいいと思います。気を使わずに話せるというだけで、考え方を切り替えるきっかけになりますから」

ADVERTISEMENT

※写真はイメージです ©︎iStock.com

「対応力を指摘するアドバイス」は要注意

 逆に自分が友人から相談を受けた場合、気をつけたいのが「対応力を指摘するアドバイス」だ。

「『SNSをやめたほうがいいよ』とか『いちいち怒っても意味ない』というアドバイスは、『本人の努力が足りない』と被害者をさらに責めてしまう可能性があります。もし近くに誹謗中傷の被害にあっている人がいたら、まずは話を聞き、その辛さに共感してあげる姿勢が大事です」

 この「共感」という姿勢こそ、追い込まれた時にも有効だという。

「誹謗中傷しているのは不特定多数の『誰か』ですが、その『誰か』も人間であるかぎり、書き込んでいる時はマイナスの感情になっているはず。彼らは他者に対して攻撃しているようで、同時に自分自身も傷つけている。例えばそういう風に考えると、得体のしれないアンチに対しても捉え方が変わってくるのではないでしょうか」

 誹謗中傷を書き込んでしまう人たちの心理を理解することで、はじめて「スルースキル」が身につくのかもしれない。

「人間は怒りに対して、反射的に怒りで返すもの。しかし、SNSではその怒りの持っていき方が難しい。自己嫌悪があると、怒りが自分自身に向かってしまいがちなんです。怒りや恐怖は自然な感情なので抑えることはできませんが、それに対する行動は自分で選べます。すべてはプロセスの途中だと考えてください。誹謗中傷を受けていることがゴールや結果ではなく、その先を考えれば、この経験をなにかに生かすことができるかもしれません」

※写真はイメージです ©︎iStock.com

 炎上も誹謗中傷も、誰にでも訪れる可能性のある「事故」のようなもの。そう考えれば、起きたことに対して粛々と対応していくしかない。SNSに期待しすぎず、適度な距離感を保つというのが、身を守るための基本姿勢といえそうだ。

「ゴキブリのような野郎だ」 自己責任論で炎上…安田純平さんが考える、SNSの誹謗中傷

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー