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「走れ!タカハシ」を読みながら“野手で登板”巨人・増田大輝に思いを馳せる

文春野球コラム ペナントレース2020

2020/08/12
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今の野球界で走塁が絵になる選手は誰だろうか

 ちなみに2001年にはこれを原作にしつつ、マクガフィンを当時のプロ野球界の新しいスター、イチローにした『走れ!イチロー』なる映画も公開。因果関係は不明だし、この映画を観て村上龍が何を想ったかはわからないが、色々と世知辛れぇな……とは思ったかも知れない。(監督は大森一樹、脚本は丸山昇一!!だのに、何故……)。

 しかし今考えてもとんでもねー企画だと思う。許したカープも凄いし、描かせた高橋慶彦も凄いし、本人とプロ野球選手全てに対して最大級のリスペクトを込め、下ネタも織り込みつつキッチリ自分の作品に書き上げた村上龍もマジで凄い。

 こないだの週刊ベースボールも盗塁・走塁特集でオッ!と思ったが(しかしイチイチ福本豊の言葉が豪気で流石だった!「今の選手50個くらい簡単に行けると思うで」「とにかくベース早く着いたらエエんやから」すげぇ!)、今の野球界で走塁が絵になる選手は誰だろうか。7月のハマスタの増田大輝は確かに凄かったが、アレはそもそもDe柴田の守備も超絶凄くなかったですか!?という見方も出来るシーンだったと思う。

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 そう、今の増田大輝はまだ走るだけでは、自分の人生しか変えられない。

 今はとにかく「還って」ナンボ。代走で出てホームまで回ってこないと明日がない。苦労人で元・鳶職、徳島インディゴソックス、育成1位、代走屋、ユーティリティープレイヤーという増田の認識に「野手で登板」というオマケが付いた。

 だが、まだ足りないだろう。

 村上龍は、高橋慶彦の事を「ファーストベースにヘッドスライディングしてもそれが様になる日本でも珍しいプロ野球選手」と評し、物語を書いたのだ。

 ならば俺たちも夢を見たい。

 いつの日か、走る姿だけで誰かの人生を変えるような、マスダだけの「走り」を。

増田大輝

◆ ◆ ◆

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