「今なら大変な騒動になってしまうところでしょうけど、私らの時代、民間の方との夜の会合はあたり前のように頻繁にありました。膝詰めで会い、真意を確かめ合う会合は役所と民間企業との潤滑油のような役割をしてきた。やはり会議室での話ではなかなか通じ合えない。こちらは費用をもつ余裕がないので、会合の設営はお任せになります」

 かつて霞が関で大物事務次官と称された官僚に総務省接待の話題を振ると、本音でそう語ってくれた。

「放送免許を取り消されかねない一大事だ」

 民間の方とはもとより利害関係企業も含まれ、むしろそのほうが多いとも告白する。官民接待は程度の問題といえ、東北新社による総務省接待の本質はそこではない。問題の本質はそこに現職総理大臣の長男が登場していること、そして放送法に基づく企業の許認可が見え隠れしている会合の議題である。

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 東北新社ならびにそこに勤める菅義偉首相の長男正剛は、放送法に定められた議決権のある株主の外資規制違反という局面で、総務官僚に接待を繰り返してきた。これが放送事業者にとっていかに重大事であるか。

フジテレビ本社 ©AFLO

 そこについて民放テレビ局の幹部に取材すると、「放送免許を取り消されかねない一大事だ」と指摘し、テレビ界の大物、フジ・メディア・ホールディングス(MH)の日枝久相談役も同じく憤ったので、「文藝春秋」5月号に寄稿した記事ではそのように書いた。

 ところが記事が印刷されたあとの今月に入り、そのフジMHが2012年から14年の1年半にわたって外資規制の20%を超えていたという。いったいどういうワケだろうか。改めて日枝に聞いてみるとこう答えた。