「アンタ何したのかわかってるのか?」

「夫の遺体に謝れ!」

「議員はどこにいる!」

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 5月12日、北海道の空の玄関口「新千歳空港」のある千歳市内の葬儀場で行われていた男性の通夜。本来は静かで厳かな空気が流れるはずのその場所で、喪主を務めるはずだった男性の妻に対して、参列した親族が次々に詰め寄った。豹変する家族の姿に子供たちが怯え声をあげるほどの騒動となり、地元警察のパトカーも駆け付けた。“やむを得ない理由”により、喪主は故人の母が務めた。

千歳市議の香月正氏(香月氏のインスタグラムより)

 亡くなった男性は、陸上自衛隊東千歳駐屯地に勤める防衛省職員で、技官の鈴木康平さん(仮名・享年49)。同市内の林道で1週間前の5月6日明け方、首を吊り、命を絶った。

 自殺現場となった林道は、康平さんが自ら調査を重ねて、自分の妻・A子さん(44)と、自衛隊OBで千歳市議会議長の経験もある香月(かつき)正市議(72)が度々逢瀬を重ねた“不倫現場”と分かった場所だった。

康平さんの通夜に駆け付けた警察官 ©文藝春秋

 3つの駐屯地・基地を抱え、人口約9万7000人のうち自衛隊関係者が3分の1以上を占めると言われるこの千歳市で、自衛隊OBのベテラン議員と、1人の技官の間でなにがあったのか。そして、なぜ悲劇の結末を迎えてしまったのか――。

「誰もが羨むとても仲のいい家族でした」

「兄の家は、もともとは誰もが羨むとても仲のいい家族でした」

 そう語るのは、生前に康平さんから相談を受けていた、関東地方で暮らす康平さんの7歳下の妹だ。康平さんは幼いころから歳が離れた妹を可愛がり、妹が成人になっても頻繁に電話やLINEで連絡をとる間柄だった。妹は肩を落としながら「文春オンライン」取材班に胸の内を告白した。

「兄が、当時居酒屋に勤めていたA子さんと結婚したのは約13年前。2010年には千歳市内に2階建てのマイホームを購入し、小学生の息子と娘に囲まれて、これまで幸せな家庭を築いていました」

康平さんとA子さんの結婚式の写真 ©文藝春秋/細田忠

 自宅の広いリビングからは子供たちの笑い声が響き、どの部屋も家族写真や子供たちの絵で溢れていた。寝室にはベッドを2台並べ、4人仲良く川の字で寝ていたという。