北海道の空の玄関口「新千歳空港」で知られる千歳市内の林道で、5月6日明け方、東千歳駐屯地に勤める防衛省技官の鈴木康平さん(仮名・享年49)が首を吊り、命を絶った。

 その自殺現場は、康平さん自らが調査で知った、12年連れ添った妻・A子さん(44)と、元千歳市議会議長で自衛隊OBのベテラン市議、香月(かつき)正氏(72)が逢瀬を重ねた現場だった。

康平さんが集めた証拠の数々 ©文藝春秋/宮崎慎之輔

 香月氏は陸上自衛隊時代、第1特科群第103大隊の大隊長、第1地対艦ミサイル連隊の副連隊長を歴任。人口約9万7000人のうち自衛隊関係者が3分の1以上を占めるとされる千歳市で影響力をもっていた香月氏に1人で立ち向かった康平さんは、調査会社とともに不貞行為の証拠を集め、子供の親権などを求めて離婚調停中だった(#1)。

ADVERTISEMENT

妹に託していた「膨大なファイル資料」「パソコン」

 そして、康平さんが自殺する直前、関東地方に住む自身の妹に発送していたのが、調査結果を記した膨大なファイル資料と、ノートパソコンだった。

 妹の元に宅配便が届いたのは、康平さんの訃報が届いた翌日の5月7日。〈A子に見られたくないからとりあえず送ったよ〉と書かれた1枚の便箋が添えられていたという。

康平さんが自殺した現場 ©文藝春秋/宮崎慎之輔

 康平さんの妹が語る。

「これは、兄が家族に託した戦いのための証拠資料です。ただ、パソコンにはロックがかかっていたので、開けることが出来ていません」

 康平さんが送った膨大な書類には、離婚調停で使用されたこれまでの書面とともに、康平さんが独自にまとめた直筆のノートが2冊あった。

 ノートには、昨年6月から9月まで日記形式で、康平さん家族の行動記録が書き残されていた。それによると、A子さんと香月氏との密会も複数回、記録されている。

ノートに残されていたメモ ©文藝春秋/宮崎慎之輔

 さらに離婚調停でも使用した、調査会社が調べた100ページを超えるA子さんの不倫に関する報告書の原本も含まれていた。報告書は香月氏とA子さんの密会の様子が写真付きで冊子の形式にまとめられていた。報告書やノートによると、香月氏とA子さんは7月27日から8月22日にかけて少なくとも6度は密会し、そのうち4度は、香月氏が別居しているA子さんのマンションを訪れ、2度宿泊したという記録があった。