熱戦が繰り広げられたWBCも閉幕し、選抜高校野球も佳境。そして、いよいよプロ野球が開幕間近である。野球ファンがその時をいまかいまかと待っているが、それは大の中日ドラゴンズファンであるスタジオジブリ・鈴木敏夫プロデューサーも一緒だ。今回、文春野球ウィンターリーグでは2年ぶり2度目となる鈴木敏夫プロデューサーインタビューを実施。今シーズンの活躍を期待する選手や、ドラゴンズの戦いぶりの見通し、さらにはジブリパークとドラゴンズを結ぶ縁について聞いた。

昨シーズンもっとも一生懸命見た髙橋宏斗のピッチング

 毎試合の録画を欠かさない鈴木さん。昨シーズンもっとも熱心に見ていたのが「髙橋宏斗。彼が投げるときは、一生懸命見たんですよ」と話してくれた。3月4日に行われた侍ジャパンvs.ドラゴンズの壮行試合で、侍ジャパンの一員としてチームメイトを相手に快投を見せ、3月22日(日本時間)に行われたアメリカとのWBC決勝戦ではマイク・トラウトから三振を奪った、ドラゴンズ希望の星・髙橋宏斗投手。多くのファンと同じように鈴木さんもまた、“うちの宏斗”に大きな期待を寄せている。

WBC1次ラウンド韓国戦で“即席クローザー“を務めた髙橋宏斗 ©佐貫直哉/文藝春秋

「僕は専門的なことはわからないけれど、1試合ごとに成長している姿は見て取れた。昨年はシーズン当初から投げて、失敗することもあったけれど、試行錯誤していることがわかった。与えられたチャンスのなかで向上心を持って、考えながら投げている。あれは僕、好きだな。まだ20歳だしね」

ADVERTISEMENT

 世界の舞台を経験した髙橋宏斗投手が今シーズン、どんなピッチングを見せてくれるのか。彼がさらに羽ばたくであろうこの1年を、鈴木さんはとても楽しみにしている。笑顔で語る様子からそれがよくわかる。今年の投手陣については、

「やはり野球はピッチャーの要素が一番大きい。その点、今年はピッチャーはいるじゃないですか。髙橋宏斗はもちろん、大野雄大や柳、そして開幕戦を投げる小笠原。トレードでやってきた涌井だってやってくれるでしょうから、これは助かると思いますよ」

 と、充実ぶりに目を見張っている。投手の話題となると、やはり根尾昂投手のことも聞いてみたくなる。

鈴木敏夫さん

「間のとり方がうまいですよね。球場全体が自分に注目して、静かになるのを待ってから投げ始める。演出しているなあと。いろんな舞台を踏んできた人だからできるんだろうけど、見ていて楽しいですね」

 根尾投手おなじみの、バックスクリーンを向いて深呼吸するポーズは演出面で効果てきめんであるという指摘は、長年アニメーション制作に携わってきたプロデューサーとしての視点ともいえて、興味深い。