『イカゲーム』で世界を席巻した韓国発の配信作が再び旋風を巻き起こしている。予測不能な展開とルッキズム（外見至上主義）への痛烈な皮肉が込められた韓国ドラマ『マスクガール』（ネットフリックスで配信中）が日本をはじめアジア圏でテレビ部門1位を獲得。世界各国でトップ10入りを果たすなど大きな注目を集めている。
主人公の女性キム・モミは幼い頃から芸能人に憧れ、歌やダンスも得意でスタイルも抜群な27歳のOL。しかし、自身の“顔”に劣等感を抱いている。そんな彼女は昼は地味な経理職だが、夜はマスクで顔を隠し、持ち前のグラマラスな体型で男性を魅了する動画配信者「マスクガール」として密かに活動していた。
「人と違う人生を送るはずが、平凡な人生を生きている……」
と嘆く彼女。しかし、ある事件をきっかけに彼女の人生はジェットコースターのように激しく蛇行を繰り返しながら思いもよらない方向へ転がり落ちてゆくことになる。
主人公モミを演じるのはオーディションで選ばれた新人女優イ・ハンビョル。彼女の“顔”はなんと言うか、絶妙に平凡な顔だ。ドラマ史上、最も印象に残らない顔の主人公かもしれない。脇役の同僚社員を演じる俳優たちの方が役者然としたこなれた顔つきをしているため、芸能人の中に1人だけ一般人が紛れ込んでいるような印象すらおぼえる。本作は外見至上主義から逃れられない現実を生々しく描き、観客に突きつける。
これだけでも十分興味をそそられる内容だが、第2話以降はさらに驚愕の展開となる。主人公モミは社内で目立たない存在だが、第2話では彼女よりもさらに地味で空気のような存在の同僚男性が主人公として描かれる。その後も1話ごとに主人公が入れ替わる形で全7話が進行するのだ。さらには、主人公モミ役も3人の女優によって演じ分けられる。文字通り、作品の“顔”が次々と入れ替わる野心作だ。
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