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東京の“本州唯一の村”「檜原村」には何がある?

東京の西の西へ#2

2023/10/30
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東京駅から約2時間…いざ、檜原村へ

 檜原村は、鉄道が通っていない。だから、公共交通を使って訪れるには、バスに乗ることになる。そのバスが出ているのは、JR五日市線の終点、武蔵五日市駅だ。立川駅で中央線から乗り換えて、ざっと40分。以前は中央線からの直通列車も走っていたが、2023年3月までになくなってしまった。

 また、正確にいうと五日市線は拝島~武蔵五日市間。立川~拝島間は青梅線になる。ちょうど拝島駅の西側あたりで、多摩川に支流の秋川が合流している。五日市線は、秋川に沿って上流方面に向かう路線だ。五日市線の南側、多摩川沿いには東京サマーランドもあり、レジャー路線としての側面も強い。

 そうした五日市線の終点で、西東京バスに乗り換える。数馬行き、もしくは藤倉行きのバスが、檜原村へのバスだ。

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 まるで五日市線の延長のように、まっすぐ西に向かって秋川沿い。秋川渓谷などを見ながら「檜原街道」と名付けられた道をひたすら走って山を登ってゆく。武蔵五日市付近は、ちょうど山から谷に下りた谷口集落であり、檜原村はそこからさらに西の山の中、というわけだ。

 

 バスに揺られること15分ちょっとであきる野市から檜原村に入り、さらに10分ほど乗ると秋川の河谷から少し車窓が開ける。檜原街道沿いの集落を見ながら少し行くと、檜原村役場の目の前のバス停に着く。

 立川駅から電車とバスで1時間ちょっと。東京駅からの中央線を加えても、2時間ほどで檜原村に行くことができる。唯一の村、などというから途方もなく遠く感じるが、実は都心から檜原村はあんがいに近い。

 檜原村のような、歴史上いちども鉄道が通ったことがなく、さらに村域のほとんどが山林という村は、その中心がどこにあるのかを探り当てるのが難しい。難しいというより、中心がないというほうが正しいのかもしれない。

村役場前から街道をさらに西に歩く

 鉄道があれば、その駅の周囲が比較的発展して、規模はともかく市街地が生まれているものだ。しかし、檜原村にはそうした市街地はない。そもそも人がたくさん集まって暮らせるような平地がほとんど見当たらない。それでも、村役場があるということはここが檜原村の中心、といって差し支えないのではないか。

 

 村役場のお隣には郵便局があって、さらにその隣にはコンビニのような商店も。檜原村にはいわゆるチェーンのコンビニは一軒も存在しない。村の人々は、村内で日用品を買い求めるか、もしくはクルマかバスで五日市・立川方面に出ているのだろうか。