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なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

なぜ75年ぶりの新規路面電車が宇都宮に? 街の通勤と観光を劇的に変えた“黒と黄色のかわいいやつ”【宇都宮ライトライン乗車レポ】

昼、夜、朝に終点まで往復してみた

2024/02/04
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 しばらく走るとまた大きなアップダウンがあって、今まで来た大通りを逸れて右へ左へとカーブする。見晴らしも良くライトラインの車庫も見える。遊覧鉄道の雰囲気でもある。降りた先の平石停留場は車庫へ分岐する線路配置だ。プラットホーム2面で線路は4本。各駅停車を快速電車が追い越せる構造になっている。

「宇都宮大学陽東キャンパス」から「平石」方面を望む。急勾配も特徴のひとつ

600mを超える大鉄橋に、秀吉が破却した城と観光地も

 平石からライトラインと同時に整備した道路になっている。次の平石中央小学校からはしばらく走ると、また勾配を登り鬼怒川を渡る。ライトラインで最高の車窓がここだ。600mを超える大鉄橋で、路面電車線用としては珍しい構造物である。もっとスピードを上げてほしいと思うけれども、法規上は道路として整備されているため路面電車の最高速度、時速40kmの制限がある。安全運行が続けば特認を受けられるかもしれない。

平石小学校にライトライン応援メッセージ(2024年1月撮影)

 一直線の線路だけど、左右にゆるい揺れを感じた。ヨコ方向のダンパーが柔らかい。路面電車は交差点で急カーブするためガクンと揺れる。LRVはそこに配慮していると聞いたことがある。

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 鬼怒川を渡った高架区間の先に飛山城跡停留場がある。飛山城まで徒歩20分ほど。飛山城の公式サイトによると、鎌倉時代の後期に芳賀氏によって造られ、1590年に豊臣秀吉が宇都宮氏に破却を命じたという。現在は公園として整備され、歴史体験館もある。ライトラインは工業団地への通勤路線として整備されたと聞いていたけれど、ちゃんと観光名所もある。

鬼怒川を渡る景色

住友電工、中外製薬、キヤノン、カルビーの工業団地

 少し空いてきたので先頭車に移った。地上区間に降りて清陵高校前。軌道は道路の中央ではなく横にある。ここから先は清原工業団地エリアに入る。左手に住友電工、右手に中外製薬だ。次の清原地区市民センター前停留場はトランジットセンター機能があって、プラットホームのとなりにバスターミナル、その先に広い駐車場がある。線路はここから左折するけれども、そのまま東に行くと清原台という住宅地があるから、そこに住む人たちがパークアンドライドするのだろう。

清原地区市民センター前停留場はトランジットセンターがある。路線バス停留所、タクシー乗り場、自家用車送迎場、無料駐車場、公衆トイレと待合室がある

 キヤノンの工場に挟まれて進むとグリーンスタジアム前停留場。グリーンスタジアムはJリーグの栃木SCのホームスタジアムだ。その手前に大きな空き地があって気になる。工場としては通勤の一等地。でも、近隣に住む人々にとっては大型スーパーがほしいかもしれない。このグリーンスタジアム前停留場も2面4線で快速運転に対応している。折返し運転も可能な線路配置で、スタジアムの試合開催時は臨時電車運転に役立ちそうだ。