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「私はそういう薄情というか、恩知らずなところがあるんだと」漫画家・渡辺ペコが30年経っても忘れられない“友達とフェードアウトした”記憶

2024/04/28

genre : エンタメ, 社会

note

――そういう小さな罪悪感って意外とずっと残りますよね。

渡辺 それがたまたまのことでなく私はそういう薄情というか、恩知らずなところがあるんだと思い出すんです。今より良い場所へ行きたいといつも思ってて、それが見つかったらすぐに元いた場所を捨ててしまうような。考えてみると、自分が嫌な目にあったことよりも自分が嫌なことをしてしまった方が意外と残るような気がして。自分が不誠実だったということを1番自分自身がわかっているからでしょうね。

――漫画の中では、主人公が勇気をもって疎遠になった友達に連絡して、謝ることから人間関係を再構築しています。

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渡辺 私自身は自分の後悔を回収したり向き合って解決した経験はないけれど、そういうことができるといいなと思いながら、非当事者側の心境で描きました。

 

「恋愛だけ、性愛だけで人生を乗り切れる人は稀だと思いますけどね」

――漫画の中では、最初は「まだ折り返してもいないとしたら、残りの人生が長すぎる」と感じていた主人公が、過去の後悔と向き合って動き出すことで別人のように生き生きしていきますよね。

渡辺 人間にとって、自分が正直にいられる相手とのコミュニケーションって大事ですよね。年を取ってきて、よりそう思うようになりました。それは恋愛に限らなくて、むしろ恋愛だけ、性愛だけで人生を乗り切れる人は稀だと思いますけどね。

――漫画の中では、主人公が勇気をもって連絡することから2人の人間関係ができて、その連帯が彼女たちを支えていきます。ただSNSを見ると、大勢で誰かを攻撃するようなマイナスの連帯も起きています。渡辺さんは数年前にXを中止されたんですよね。

渡辺 以前の私は、SNSで人と繋がることで色んなことができるんじゃないかと思っていて、フェミニズム的なことや政治的なことを発信していれば、自分と近い人とつながれて、勇気づけられる気がしたんです。それでせっせとSNSで投稿していたんですが、何度かいわゆる「炎上」に近い状態を経験して最終的には自分にはSNSは無理なんだと判断して全てやめました。