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「屋台でシャブ売ってるくらい普通やっちゅうねん」かつて覚醒剤が“普通に買えた”ことも…大阪市のディープシティ「西成」には何がある?

『にっぽんダークサイド見聞録』より #2

2024/04/27

genre : ライフ, 社会

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 噂では小学生を嚙んで怪我させたかで、駆除されたと聞いた。今でも他所の地域に比べたら野良犬は多いが、大半がヨボヨボのおとなしい犬だ。

「西成といえば暴動!!」みたいなイメージがあるが、西成で頻繁に暴動が起きたのは1960年代~1970年代の前半までだ。

 80年代は起きず、90年、92年に二度起きた。取材をした1999年はもう暴動から7年経っているのに暴動で焼け焦げたらしい自動車が放置されていた。

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 ちなみに最後に暴動が起きたのは2008年だ。暴動直後に取材に行ったが、道路のレンガが掘り起こされて穴が開いていた。レンガを掘り出して、警察署に投げ込んだ。この跡は今も残っている。対する警察は放水車を使って、暴徒を鎮圧。21世紀に起きた出来事とは思えず、ワクワクする。

白昼堂々と公園で「丁半博打」

 西成の中心地といえば、通称三角公園。文字通り三角の形の公園だ。

丁半博打が行われていた西成の三角公園(写真:筆者提供)

 初めて訪れた時は、かなり強いカルチャーショックを受けた。

 公園の角には木材で建てられたボロボロのバラックが並んでいた。数人が集まって上を見上げているので、なんだと思ってみると、街頭テレビだった。街頭テレビなんて、父親の子供時代の思い出話でしか聞いたことがない。離れた場所から、「丁か半か!!」という威勢のよい声が聞こえてくる。

 ドラム缶を置き、その上でサイコロを振っていた。ドラム缶の周りを取り囲んだ男たちは現金を賭けていた。

 先程の西成警察署から歩いて数分のところで、あからさまなギャンブルをやってるんだからビックリしてしまった。世界観としては『仁義なき戦い』っぽい。

 丁半博打をしている公園を出て、近くの路地に入ると、椅子に座った人相の悪い人たちがジロジロとこちらを睨んできた。

 その時は、なんだか分からなかったが、ノミ行為(違法ギャンブル)をしているお店らしい。警察がこないか、文句をつけに来るやつがいないか、見張っているのだ。ハリ屋と呼ばれていた。

 三角公園の横にはシェルターと呼ばれる、ホームレスが無料で泊まれる宿泊施設があった。宿泊施設と言ってもベッドが並んでいるだけの、とても素っ気ない施設だ。

「蚤や南京虫が出てたまらんが、外よりはマシや」とホームレスは体をボリボリ搔きながら話していた。多くのホームレスは、ホームレスになる前はドヤに住んでいた。

 ドヤというのは、宿(ヤド)の隠語だ。ドヤ街というのは、つまりホテル街という意味だ。ただ、ホテルというより簡易宿泊施設という、最低限の設備しかない狭い宿だ。

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