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未解決事件を追う

<BOACスチュワーデス殺人事件>警察は自殺と判断したが…「2日間で少なくとも2人の男性と性的接触が」遺体を調べてわかった“大きな誤り”

<BOACスチュワーデス殺人事件>警察は自殺と判断したが…「2日間で少なくとも2人の男性と性的接触が」遺体を調べてわかった“大きな誤り”

『消えた神父、その後:再び、BOACスチュワーデス殺人事件の謎を解く』より#1

2024/04/30

genre : ライフ, 読書, 社会

note

 松本清張『黒い福音』のモデルとなり、三億円事件と並んで「昭和の2大未解決事件」とされた、BOACスチュワーデス殺人事件。

 作家・大橋義輝氏は2023年に上梓した著書『消えた神父、その後:再び、BOACスチュワーデス殺人事件の謎を解く』(共栄書房)の中で、当時、事件の重要参考人として名前が挙がっていたにも関わらず、取調べの最中に突然帰国してしまったベルギー人神父の行方を追っている。

 ここでは本書より、一部を抜粋して紹介。この事件が世間から好奇の目を集めることになってしまった理由とは――。(全3回の1回目/続きを読む

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◆◆◆

 1959年3月10日午前7時40分ごろ、東京・杉並区大宮町の善福寺川宮下橋下流50メートルで女性の水死体が発見された。高井戸警察署の調べによると、女性は世田谷区松原町3丁目の武川知子さん、当時27歳。BOAC(英国海外航空)のスチュワーデスであった。知子さんは3月8日から、叔父(高橋五郎)の誕生日会に出席のため下宿を出たまま、行方不明になっていたのである。

 捜査の結果、重要参考人としてサレジオ教会の神父が浮上した。けれども教会側の防御により、なかなか捜査は進まない。これをマスコミが書き立てたことにより大きな話題となった。

©AFLO

 警視庁は極秘で神父の事情聴取を数度に渡って敢行した。しかし神父はほとんど黙して語らず、警視庁は引き続き聴取を行う予定にしていたところ、突然、神父は病気療養を理由に母国ベルギーに帰国してしまった。

 以来、治外法権の壁に阻まれてこれ以上捜査ができず、事件は事実上、迷宮入りとなった。連日センセーショナルに発信を続けていた日本のマスコミはピタリと報道をやめ、神父のその後を追ったものは皆無に近かった。

 ミステリー界の巨匠、松本清張はこの事件を題材にした『黒い福音』を世に発表。事件と同様に神父の帰国でこの小説は終わっている。

 その頃、まだ高校生の私も、何かすっきりとしない気持であったことをよく覚えている。

 ここでBOAC事件の発生した1959(昭和34)年当時の世相にも触れておこう。

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