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ユダヤ人の少年がカトリック教会に連れ去られ…佐藤優が「家族愛と信仰の間」を“皮膚感覚”で理解した理由<19世紀の実話を映画化>

映画『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』

2024/04/26

source : 週刊文春CINEMA 2024春号

genre : エンタメ, 映画

note

肉親の愛はあっても宗教的には妥協できない感覚 

 肉親の愛情は維持されつつも、宗教的には互いに妥協できないという感覚が、評者には皮膚感覚でわかる。

 最後まで禅宗(臨済宗妙心寺派)の信心にこだわった評者の父は、死の直前に評者と母が勧めた洗礼を「キリスト教は他力信仰なのでしっくりしない」と言って拒絶した。

 

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『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』
INTRODUCTION
19世紀イタリアのユダヤ人街で暮らしていた、6歳のエドガルド・モルターラが教皇の命により連れ去られた事件は史実である。両親と返還に応じようとしない教会側の争いは、当時全世界を巻き込み紛糾した。

 スティーヴン・スピルバーグがこの事件に魅了され、書籍の原作権を押さえたことでも知られているが、『甘き人生』(16年)や『シチリアーノ 裏切りの美学』(19年)で知られるイタリアの85歳の巨匠・マルコ・ベロッキオが映像化を実現した。

STORY
1858年、ボローニャのユダヤ人街で、教皇から派遣された兵士たちがモルターラ家に押し入る。「何者かに洗礼を受けた」という情報により教皇の承認のもと、息子エドガルドを連れ去りに来たのだ。

 取り乱したエドガルドの両親は、息子を取り戻すためにあらゆる手を尽くす。世論と国際的なユダヤ人社会に支えられ、モルターラ夫妻の闘いは急速に政治的な局面を迎える。しかし、教会とローマ教皇は、ますます揺らぎつつある権力を強化するために、エドガルドの返還に応じようとしなかった。

STAFF & CAST
監督:マルコ・ベロッキオ/出演:パオロ・ピエロボン、ファウスト・ルッソ・アレジ、バルバラ・ロンキ、エネア・サラ、レオナルド・マルテーゼ/2023年/イタリア・フランス・ドイツ/134分/配給:ファインフィルムズ/4月26日公開

ユダヤ人の少年がカトリック教会に連れ去られ…佐藤優が「家族愛と信仰の間」を“皮膚感覚”で理解した理由<19世紀の実話を映画化>

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