現在放送中の『虎に翼』(NHK総合)でシリーズ110作目となる「連続テレビ小説」。「朝ドラ」そのもののファン、いわゆる「箱推し」と呼ばれるファン層は、現行最新作もさることながら、再放送枠への関心も高い。

 その傾向は、2019年にNHK BS朝7時15分~の「アンコール放送枠」で再放送された『おしん』(1983年)、2022年に再放送された『芋たこなんきん』(2006年後期)あたりから段階的に顕著になってきている。そんななか、今年4月から同枠で再放送されている『オードリー』(2000年後期)への視聴熱がここ最近、高まっている。本作は、現在放送中の大河ドラマ『光る君へ』と同じ大石静氏が脚本をつとめた朝ドラの2作目である(1作目は1996年後期の『ふたりっ子』)。

『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 オードリー』(NHK出版)

「業」を否定せず、生身の人間の姿を描く「大石節」

 常識や道徳を超えた「業」を、あるものとして否定せず、人間のありのままの「生」を映像に刻みつける大石氏の才筆は、『光る君へ』でも遺憾なく発揮されているが、それは24年前の朝ドラ『オードリー』にも存分に見て取れる。もっと言えば、28年前の朝ドラ『ふたりっ子』の時点からその筆致は振るわれていた。大石静氏は、朝ドラでためらいなく「業」を描いた先駆者であると、筆者は記憶している。

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『オードリー』が朝ドラファンを惹きつけてやまない理由はたくさんある。まず、登場人物のなかに聖人君子がひとりもいない。しかしこれが主人公・美月(岡本綾/少女時代:岸由紀子・大橋梓)の人格形成と、「ままならない境遇で、どこに軸足を置いて、いかにして自己を確立するか」という本作の土台となっている。

脚本家の大石静香 ©文藝春秋

 美月の父・春夫(段田安則)、母・愛子(賀来千香子)、“義母”・滝乃(大竹しのぶ)は「美月の幸せのために」という大義名分をかざしながら勝手なことばかり言っている。特に“義母”の滝乃は、美月たち家族が住む家の大家という立場と、昔春夫が自分に思いを寄せていたという弱みを利用して美月を偏愛し、拉致同然で美月を引き取り、美月に自らを「お母ちゃま」と呼ばせ、自分の思い通りの“娘”になるよう願い、“育て”た。美月は、多感な成長期を3人の“親”の価値観に揺さぶられながら過ごすことになる。

『光る君へ』にも通ずる「物語へのあこがれ」

 序盤は滝乃の「狂気」と、昼ドラ的「ドロドロ展開」から目が離せないでいたが、滝乃が経営する老舗旅館「椿屋」で従業員として働く君江(藤山直美)と美月の交流を通じて「物語へのあこがれ」が色濃く描かれた4〜6週あたりから、このドラマの本流が姿を現す。