桐貴 ありました。テレビで見る俳優さんやアイドルもよくお座敷に来ていましたが、私はあまり芸能人のお座敷にはつきたくなかったですね。全員ではないですが、セクハラが多いので……。自分がどんな作品に出て、いかに有名かを語って、「こんな有名な俺に触ってもらえるって嬉しいだろう」「オレと1晩過ごせるって嬉しいだろう」とでも言いたげに、身体を触ってくるんです。舞妓を遊女と勘違いして、「部屋に布団と枕が2つ隣合わせで用意されてるんでしょ」とあからさまに性行為を期待している方もいました。

 

――花街の中なら、外にバレる心配もない。

「殺してやる」告発後に殺害予告が

桐貴 もちろんです。外に漏らせば総叩きにあって、仕事ができなくなることが目に見えていますから。芸能界の性加害問題でも、女性はその世界で生きていけなくなる覚悟で告白しているのに、SNSなどでは「売名だ」とか、「ハニートラップ」と誹謗中傷を受けるケースが少なくないですよね。私も最初の投稿に「この世から抹消されるかも」と書きましたが、実際に告発からしばらくして、「殺してやる」と殺害予告が届きました。ちょうど、第二子を妊娠中のことだったので、怖かったですね。本当に殺されるんじゃないかって……。

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――その時、活動を辞めようとは思わなかったのですか?

桐貴 思いました。でも、子どもたちのことを考えたら、ここでくじけちゃダメだって思って。芸能界の「性接待」と同じように、舞妓の世界の「性接待」も、未来の子どもたちのためになくしていかなくてはならない。それで昨年9月、国連に舞妓の人権侵害を訴える報告書を提出しました。今は来年の国連・子どもの権利委員会に向けて、この問題を知ってもらうよう活動しているところです。

 

――告発をしたことで、桐貴さん自身の内面に変化はありましたか。

自分らしく生きられるように

桐貴 自分らしく生きるきっかけになりました。舞妓時代のことを隠して生きている時は、本当に孤独でした。元舞妓であることを「すごいね、素敵だね」と褒められても、アルコール漬けだったことや、セクハラをされてきたことは言えないからじっと黙っている……。その沈黙が一番、つらいんです。

「自分らしく」とか「等身大で」という言葉がありますが、隠しごとがある状態では、自分らしく、等身大で生きることなんてできないんですよね。告発して皆さんに話を聞いてもらい、「あなたは間違っていない」と言ってもらえたら、心が軽くなって。ようやく自分の意見や感情に自信を持てるようになりました。誹謗中傷は今も届きますが、私の事を知らない人から何を言われても、気持ちは揺らぎません。