しかしシュウくんによれば、ルールの多くは実際には存在しないものだという。

「寮生手帳に消灯時間は書かれていますが、入浴時間は書かれていません。上級生が言っているだけ。風呂のルールもそうです。入浴時間については、先輩方は勝手に9時までとか言っています。お風呂に入ってシャワーをあびるときは、上級生全員の許可を取らないといけない。しかもちゃんとやっている人も含めて全員呼ばれるんです」

 驚くべきは、この指導が教師の目の前で行われていたということだ。教師はなぜ止めに入らなかったのだろうか。

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「教師が気づいていないわけがないですし、上級生が指導している場面に立ち会っている教員もいました。ある教員に相談したこともありますが、『それはいじめでもなんでもありません』と言い切られてしまいました。これは先輩たちからのいじめを、先生が容認していたってことだと思います」

写真はイメージです ©AFLO

「人が死なないとわからないのかな」「もう死んでもいいかな」

 そもそも納得できないルールであるうえに、自分は守っていても何度も集められ怒鳴られているうちに、シュウくんの内にはストレスが蓄積されていった。

「自分はちゃんとやっているのになんで呼ばれているんだろう、呼ばなきゃいいのにと思っていました。それに上級生が怒鳴っているのを教員が黙認してるのも『やばいな』と。自分がこれで精神を病んだとしてもちゃんと証明できるように、録音は続けていました。でも『人が死なないとわからないのかな』という気になって、『もう死んでもいいかな』と思うようになっていったんです。こんなに辛いならもういいやって」

 入寮から2カ月も経っていない10月14日、シュウくんは自室のベッドで首にベルトを巻き、自殺を試みた。問題提起のためと考え、その模様をXで中継もしていた。そのため、中継を見ていたと思われる外部の人物から学校に通報があり、職員が駆けつけ大事にはいたらなかった。